やさしさというほったらかしが
蔓延している
ダメなことを
ダメ!と言えない親が増えている
ダメなことを
ダメ!と言えない教師が
増えている
心と心のぶつかり合いがない
魂と魂のぶつかり ....
私が生まれて初めて目を開けたのは、雷のひどく鳴り響く日だったらしい。
針で綴じたような細い目が、まるで遠雷の音に驚くようにぱっちりと開いたのだと、母は言った。
私の知らない私の姿を、見て、記憶して ....
君がくれた花は
まさに幸せそのものだった
二人で見た景色は
どれも永遠の幸福の一部だった
その永遠は 短いものだった
それでも何物にも変えがたい
素晴らしい ....
観念の{ルビ和毛=にこげ}に
赤茶けた歯がからまり
ベンジーの六弦が息をすう
焼け落ちた橋 夏の昼時
あなたの胸の中の海で
丸い椅子が倒れた
少しナルシストに
きっとナルシストに
口づけをかわそう
闇に酔いながら
十三夜の月明かりに揺れながら
今宵 聞こえて来る
懐かしいメロディー
少しナルシストに
かなりナルシストに
....
お父さんは
甕にめだかを飼っています
夏 陽射しをまともに受け
お水ゆだってあえいでるめだかの夫婦
あんまり可哀そうで私
みどりのホテイさま浮かべたよ
めだかたちほっとして
こづくり ....
眼は無意識の影に嘘をついた
葉は秋風の寒さにユラユラと舞った
アスファルトには人の歩んだ体温が反射して
道が生まれた
正直を語る時
世界は凍り付く
瞳が見る世界は残酷だ
暗闇は休息へ ....
腰のまがった老人はめったに見なくなった
まがった腰で
ヨッコラショと
風呂敷をしょった爺ちゃん婆ちゃんは
わたしが子供のころの爺ちゃん婆ちゃんだ
農村や漁村では今だって
腰のまがった老人 ....
「白蓮」
この街に良いところなんて数える程しかなく
履き潰したサンダルを引きずりながら
夜の帳に身を預けてみたって
そう言えば最後に靴を買ったのはいつだったかなと
どうでもいいことばかり頭を ....
どんなことを言おうと
そりゃまあ 自由ですけどね
だからといって 妄想したことを
有ったようにしゃべりちらしちゃいけませんわな
妄想だよってしゃべりゃいいだろうな
想像だよってしゃ ....
震える身体を温めたいと 寄り添った枝が
乾いた空気を纏ったまま パチリと音を鳴らす
窓を叩く 霰との 二重奏
本当は 枝切り鋏も 加わったから
三重奏なのだけれども
認めた ....
一生なおらない病気であるならば
それは病気ではなくわたしの一部なのだろう
そう気づく秋の景色のなか
定期的に通う道の
木は色をかえて
それでも同じ木に安心して歩く
Hey, 一体どうしたっていうんだ?
スマホ片手にそんなにも酷く落ち込むなんて
オマエの爆発した頭の上には、
真昼の太陽がまだギラギラ輝いてるというのに
いつも素晴らしいことばかりじゃな ....
秋の夕暮れは氷塊のようで
たった一つの亀裂も
存在することが許されない
完璧に冷たく充足し
いかなる反撃も許さない
そんな氷塊が大地を覆っている
私はゆったりとページをめくる
秋の物 ....
「ことばなんていらないよ」
彼女は楽しい言葉を使う。
彼は言葉を探すが、楽しい言葉が見つからない。
彼のなかには、他者の悲しい言葉しかなかった。
「ことばなんていらないね」彼は、彼女の言葉 ....
みどりの鳥居をくぐるには
あなたの笑みが必要でした
まもなく消える身であれど
この世は占いじゃないから
意味しかないところだから
焼け石に水であろうと
二階から ....
瞼の裏に映る沢山の図形
それがわたしたちの暮らす町
暗がりに潜む毛むくじゃらの歪み
へし折れ・砕けながら結びあう雑踏
港の船が夕暮れの光に燃えあがるとき
....
いつも
未来を見つめているのですが
計画を練り
ガムをかみながら
現在を過去に葬っていく
未来を見ていると
疲れるのでしょうか
そうともかぎらないようです
不意に
横か ....
約束の泉には夜明けに着いた
けれど女神の姿どころか風一つなく
さざなみも ない
すでにくちゃくちゃの手紙をポケットから引っ張り出し 確かめる
と ふいにどこかで少女の声が云った
「金の毒と銀 ....
空白が呼んでる
快晴が取り消されてる
鳥と風がそれぞれの異国語を話す
夜が眠り朝が目覚める
樹が垂直に光をもとめる
こころはときどきだれかをもとめている
まるで私がほかのだれか ....
あなたの激しい煌めきは
蓋をしても隠しきれない
マグカップで足りる程の
光しか持たないわたしは
指をくわえ憧れるよりも
一体どうすれば
今以上輝きを放てるの ....
{引用=わたしの正気は陰鬱だが
わたしの狂気は陽気な歌
木魚バンドネオン炭酸水
(証城寺住職 囃子ダダイ)}
証城寺の性悪少女
ひどくあくどいのだ
そのだんま ....
朝日がそそぎだした。
僕の薄暗い廊下に等身大の
人形が置かれている。
僕の意識下の欲求の道具として
彼女の原始的な体臭が発散し
僕の着用物と同化している。
胴体と腕
組み立てながら
....
高原の落日に鮮やかな色彩を見る。
深呼吸すると濃密な緑の香りがする。
生を生きているという感覚。
乾いた日常で感覚を捕らえようとすると逃げてゆくが、
ここではそこかしこに咲く花々 ....
君の温度がまだ残る部屋、その隅に、残された一つの残片
治癒途中のかさぶたの切れ端が、静かに残されている
物体がおおかた四角なのは、きりりと押し固めることができるようにと、誰かが考えたのか
それと ....
少年が空を見上げた方角には
青い空中が蒼くなっている
客観が主観を覆し
世界はありのままの美しさを失っている
空が言葉を語るのは
内包された心の中
失語症と宇宙は交信している
存在の ....
むらむらとするよあなたのたんこぶに
脱皮して甘いスープを飲んでいる
予知力に翳りが見えて冬支度
うかがった先生宅で池にポチ
お人形に羽が生えたの ....
「雨だれ」
幾多も宇宙が膨張しては落ちていく
手のひらに掬えば
昨日の私の涙みたいで
もしかしてこの中にあの時の自分が
小さくなって住んでいるのかも
瞼を閉じて
何度も聴こえてくる
....
言葉を持たずにふわっとなってふわっとした場所にふわっと帰る。
あるいて帰る。さんぽしたりひきこもったりして帰る。
帰り道、言葉にひらひらと手を振って、「さよなら」と言った。
ふわっとした ....
捨てないかぎり夢の続きはついてくる
あきらめない限りことばの谺は響きつづける
僕の頭の中の世界図書館は閉鎖されたまま
精神の廃虚には孤独な回路が短絡を待っている
魂の階梯はかぎりなく地 ....
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