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この夏に北アメリカから来たバックパッカーの女と友人が意気投合して数日を共に過ごした。
駅前の英会話教室に通う友人にとっては願ったりの相手だ。
三人でしこたま酒を呑み、そのまま友人宅で寝た日の朝 ....
メガネ外して
泣きそうなのです
まばたきの
かずだけ心に蝶がいて
夜空がこわくてじぶんを抱きます
蛾がおびただしく舞う
古い白熱電球のもとに
私はうずくまり
鉛の玉を抱えていたのだった
来たる冬はすでに失踪し
魚眼のように現実を見つめている
そして体内に大発生した虫
幼虫の尖 ....
その産声も周囲の空気を震わせて
その場に居合わせた何人かの鼓膜に音を伝えたに違いなかった
その時の周囲の人間の喜びと安堵がどれ程のものであったかと想像しても、すべては遥か昔話だ
本日、選 ....
悪魔の囁きをきく事がある
て
言うよりか
私の正体そのものが実は悪魔で
普段は人間の囁きに耳を傾けながら
生活していると言うべきなのかも
しれない
当然
私の中では
たえず悪魔と ....
綺麗にしてたつもりなのに
悲しみの中に蜘蛛が湧いた
わたしは掃除機をかけた
ただ、黙って、掃除機をかけた
蝸牛
ひとつふたつと
数えつつ
昨日の
夢へ降り来る光
九品寺より材木座に向かい
ほどなく波が見えて
もう秋のにおい
天道虫
ふたつみっつと
数えつつ
明日の
夢へと還 ....
うれしくてうれしくて
とてもさみしげな青空を背景に
ひとりバカみたいに
笑ってる
とおい記憶をたよりに
あの海へ行けるのか
子どものころなんども行った
あの夢の中
のろいなど
....
おにヤンマを捕まえて
その片方の足に糸をくくりつけて
飛ばした
それは
ほんの遊び心だった
子供の頃の
無邪気だったから
その残酷さに
何も気づかなかった
そうこうしてい ....
カチカチ 歯と鳩 カウントマシーンが音をたてる
台風がそれた朝の
まだ肌寒い堤防によせかえす波をカウントして ガラスの水滴を震わせて回る数字
鳥と虫とドローン 飛行機をみつけては指で隠す ....
{引用=独居美人}
託児所の裏の古びたアパート
窓下から張られた紐をつたい
朝顔が咲いている
滲むような色味して
洗面器には冷たい細波
二十五メートル泳ぐと
郵便物の音がした
....
ミンミンゼミの蝉時雨
窓ガラス越し物凄く
気が遠くなるよな濁音の渦
彼らはひたすらに生きている
僕らが時をやり過ごすとき
彼らは命を燃焼する
僕らが虚空を覗き込むとき
ミンミンゼ ....
幽霊は容易く夏を越える。
水色のゼリー、たったの一つで。
チャリのストッパーを跳ね上げた音が
八月の折り目に
鋭めに響いて
バイバイした
終わりが始まりに触れようとして、外側を内側に折り込み
内側を外側に折り返して発達する八月に沿って
....
あたしが
まだ赤ちゃんだった頃
産んでくれたかあさんの乳房は
あたたかい海のようだった
あたしが
まだ赤ちゃんだった頃
とうさんは
ただの一人の男の人だった
あたしがまだ赤ちゃ ....
憎しみも
羨望も落胆も
今は山道の腐葉土やゴミムシの糞となって
ころがしておこう
葉がはかすかにさざめき
木の樹皮はなめらかにひかり
木漏れ日はさらさらと山道に塗されて
山道を歩く人 ....
買っておいた胡瓜と茄子に割り箸をさして
精霊馬をつくり
朝の玄関に置いた
、
いつからなのか
サンダルの隙間に
しろい腹をみせてころがる
蝉の死骸を拾い
リウマチの指を思い出す
....
熟れた大気をすっぽり両の{ルビ腕=かいな}に収め
瑞々しい空白に奏でる命の揺らめき
絃を断つ蝉ぽつり
また ぽつり
生の祭りの一夜飛行を終え
塵と積もる羽蟻 さらさらと風
山葡萄の花の匂い ....
闇の重みがぐんにゃりと
魂に激しく切迫し
私の意識は朦朧として
呻きながら覚醒する
真夜中の病棟にただ独り
呻きながら覚醒する
ハッと息を呑むこの瞬間、
孤独が生きて立ち上がり
....
君の幸せは、もう、静かな心臓へ帰るといい。
夜間飛行のともしびが、
寒い砂漠の夜空に灯るといい。
君の笑顔は、もう、私の部屋から出て行けばいい。
そこで砂漠の闇のような心と ....
ひかりのつくり方は だれも教えてくれない
水の配合を間違えたことで 白く霞む朝に
きみの浅い微睡みは
錆びたダイヤモンドのように 美しく堕ちていく
レースをまとった瞳の透過は
い ....
わたしはわたしを
いちばんに思う人だから
いちばんにしか
思えない人だから
わたしはわたしが大切にするものを
失いたくないものを
全力でまもりたい
わたしは
時に正義を口にする ....
今日も空は青かった
にこりともせずただ青く
無限の沈黙のうちに
それは在った
今日も私は無力だった
宇宙の虚無に耐えかねて
あなたにあることないこと
喋っていた
今日も黄昏は優 ....
街灯の下で
佇んで
気づけば乾いた眩しさ
スマホを
みても
ボンヤリと
息をしてる
あっちへ行けって
開放感
が髪の毛の頑なな過去を
ほどいている
髪、乱している修羅場 ....
なつのいちばん平なところへ
わかい鳶がよりそって
切り裂くようにとびたったなら
さんざんひかりに照らされて
得体をなくしたさびしい熱が
誰か誰かと呼んでいる
正直なものが高くと ....
夢から醒めた 夢を見てた あなたの夢だよ
悲しくて
弾けるように 窓を開けて
都会の朝 吸い込んだ
夢を見たくて 夢から醒めて あなたはいないよ
寂しくて
....
風に乗り
真夏の匂いが立ち込める黄昏時
草葉に注ぐ夕日と影
蜩の声は{ルビ空=くう}を舞い琴線に伝う
目に映るもの
聞こえる声
とり巻く全てのものに心惑う夕暮れは
束の間 平和だった幼い ....
光が渦巻いていた
熱風が絶えず吹いていた
人々は絶えず歩き過ぎ
俺は串カツ屋の前で
アイスコーヒーを飲んでいた
とても苦い味がした
身体が熱く飢えていた
生きることに飢えていた
す ....
灯りに群れる虫もいれば
闇に灯る虫もいる
子供と大人ははっきり区別され
子供の目的は大人になること
そのためにひたすら食う
大人の目的は子孫を残すこと
ひたすら交尾の相手を求める
あ ....
空があり風があり
時は世界樹をかけのぼって
あしたへとながれてゆく
だれかが小ちゃなブルースを
奏でているような気がしてでもそれは
ぼくの知らない紫の小花の群れだった
月への梯 ....
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