砂漠のともしび
秋葉竹


君の幸せは、もう、静かな心臓へ帰るといい。

夜間飛行のともしびが、
寒い砂漠の夜空に灯るといい。

君の笑顔は、もう、私の部屋から出て行けばいい。

そこで砂漠の闇のような心と言葉は、
ゆっくり休息を取り、解体されるといい。

そして
そうね
歌うわ
あいも変わらず愛にこだわる人の透き通った嘘、
生きる意味すら見失ったあとの諦めた瞳たちも、
人生最悪のキスシーンのように、歌うの。

なにも
期待せずに
艶めかしい女の人の
白く、細く、長い、指の姿を
おもい描いてしまうことが、
すべてのよこしまな肉体の
悲しみであると告げられたから。

こころ奥ふかくに埋もれる
淫らな清純を語るといい。

そして望みは
あの花のようにするどく香ったのに、

心が望むより先に、肉体は諦め
大慌てで私を抑え込むのだ、ただし、
ストイックにキスしなかったやせ我慢を
この胸深くに後悔しながら
きっと死ぬまで思い返しながら。


君の幸せは、もう、静かな心臓へ帰るといい。

君の笑顔は、もう、私の部屋から出て行けばいい。

そして
そうね
歌うわ




自由詩 砂漠のともしび Copyright 秋葉竹 2019-08-12 15:04:10
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