一生なおらない病気であるならば
それは病気ではなくわたしの一部なのだろう

そう気づく秋の景色のなか
定期的に通う道の
木は色をかえて
それでも同じ木に安心して歩く
そんな月夜のある晩に、私はいたたまれなくなって外に出たのだった
月はぼんやりと白く輝き、雲がかかっているのがはっきり分かる
「月に叢雲かぁー」 あたりはしんしんとして
電信柱さえ太い生きた樹々の ....
沈黙して眠るほかない
鬱積を投げ合う蒼い人語の地穴で
帆軸を極北に向けたまま
難破船のようにふかく朽ちていく


沈黙して眠るほかない
世界の清しい涯てをむなしくも夢みて
 ....
   {引用=わたしの正気は陰鬱だが
わたしの狂気は陽気な歌
木魚バンドネオン炭酸水
      (証城寺住職 囃子ダダイ)}


証城寺の性悪少女

ひどくあくどいのだ
そのだんま ....
心臓に張巡らされた無数の血管のように
言いたいことがあるのに
それが言葉にならないって
きのう電話できみに話したね

勿論、お互いの苦悩や孤独のこととか
きみへの愛や関係性とかい ....
防衛庁の巨大なアンテナのさきが霧にかくれていた

富久町の高層マンションのさきも霧にかくれている

そんなことを眺めながら路地を歩いていたら

あ、

きょうの日付をあたまのなかで確認 ....
寂しいから寂しくないふりを
しているなんてお見通しなの
寂しくないならどうして
そんな限界集落の無人駅に
会いに来ないかなんて言うのよ
あなたの孤独を映し出す
鏡のように澄んだ湖はもう ....
庭に穴が開いた
直径五メートルほどの大きな穴だ
思いのほか深く底が見えない
家人は怖がって埋めたがるけれど
まあ待て、何かに使えるかもしれない
主人はそれを制止する
試しにいらないものを
 ....
母と久しぶりに会い生まれて初めて外食をした

町の三階建てのビルの二階にあるちいさなレストランだった

ぼくも母も日替わり定食をたのんだ

メインはチーズロールカツだった

豚カツは食 ....
俺の寝床は
秋になると大勢の奴らが踏み散らし
大きな足で踏んでいく
みんなそそくさと寝床を踏み散らし
大きな足で行っちまう
何で秋になると俺の寝床は踏み散らされるのか
ちっとも解らないし
 ....
実の生る木なら育ててくれましたか

色の良い絵なら褒めてくれましたか

温かい冬なら一緒に居てくれましたか

高いワインなら飲んでくれましたか

ね、

魂のある肉なら愛してくれま ....
同じ道を歩いた
くり返し歩き
くり返し問い
くり返し答え
水の写経のようになにも
こころの所作だけが
ただ――


くり返し祈った
石の中のロザリオ
沈黙の塵は満ちて
尚も空白 ....
おもいでのまちをとおりすぎて
おもいでのまちにかえる

おもいではとうにうせてあきのそらがひろがる
なんだかかなしくてくちぶえをふいてみる

おもいでのいちばではなにをうっているのだろう
 ....
手にしていたのは
小さなひしゃく

星が消えた途方もない夜は
蛍を連れて

そしてたどりつく水源の
ほとりは

どこへつながっているのか
どこへもつながっていないのか

汲み上 ....
父は生きる 沈黙の中に
母は語る 夢のような言葉
私は横たわる 足りない絶望を枕にして

川の字になった 冷え切った水槽の中
打ち上げられた魚を三匹
飼って眺めて笑っていたのは  ....
甘い歌に惹かれた虫を
ぺろりと舐めとって、満足げにわらっている
あなたは可愛らしくて
わたしはどぎまぎした。

金の硬い羽よりも、ふわふわの白い羽よりも
朽ちかけたこの羽を愛してくれたから ....
【紙屋町界隈】

ここには来れないあなたを
さがしています
わかりやすい たいどで
わかりやすいことばで
さがしてみます

街のあちこちにカメラを設置し
あなたの陰を
さがしてみま ....
番号


まとわりつく、鉛色の
番号たちを集めて燃す儀式
ながい鎖が一筋、見あげて残る
個の人に成れ

番号に生まれたわけではない
番号になりたいわけでもないだろう?
番号は美しく ....
   太陽の匂いが漂うんです
   懐かしいあの土手沿いの道の一画に


   両手から
   はみだしてしまう大きさの
   おおきな亀裂のあるトマト
   とうさんが  ....
あめつちを貪り ふとっていくからだを
絞ってください。
きゅう、と絞ってください。

わたしこのまま みにくいからだをさらせません。

わたしから滴り落ちるしるは
林檎の厚い皮と 寂しい ....
情けない

評価ばかり気にしていた事が

そんな生き方が情けない

嫌われても

けなされても

自分の道を歩めばいい

自分を失うな

飾りすぎるな

私は私の道を行 ....
花のブロウチを舐めてみた
ああこんな味か。とふに落ちて
疑問の芽がひとつ摘まれたので
多少こころよく布団へ帰る



体が眠ってしまわれたので
わたしは心と遊んでいる
鼻ですら ....
ある朝
ヒナのために批評している
ツバメの雛が巣から落ちたのだ
百均の店員の
みなでしつらえた
段ボール製ヒナ落下防止板の設置位置について
ヒヒョウしている
作業が遅れ
巣からな ....
君のそろえた手のひらのくぼみに湖が
あるなら
ちょうど夜が明けて霧も晴れてきて
青い山々がすっかり見えるだろう

僕は湖畔に寝そべって
君に捧げる歌を作る
君がふっと息を吹きかけるだけで ....
死にそうな色したアイスだけ食べる人も虹みたいに揺れている


食べ物で模型を作る生きている理由の無さを罪に問えない


強さとは不安、切なさ、優しさの全ての傷を負うことだから


果 ....
「愛情不足だったから 
棘だらけになった」


――サボテンが?


自分の間合いで生きればいいさ
手前勝手になれなれしくするやつは
痛い目に合わせてやればいい
傷ついたなんて言う ....
ハーネスを付けた老犬が
散歩している
ヨタヨタと…

仔犬の頃から
遊びあった犬
散歩中に私を見つけると
尻尾を回し飛びついてきたのだが

「マリリン」呼んでみる
近寄ってこない
 ....
その川は病院の屋上にあった
男はゆっくりと川に入った

  早暁の屋上には看護師はいなかった
  監視カメラも男をとがめなかった

男の中で長年… 
そう 半世紀ものあいだ
渡りきれな ....
あじさいが虚ろに白く弾けている
八重咲きの皐月の朽ちた先に
猛々しく百合の立ち誇る
結ばない実を体じゅうに埋めた女と女が
安らかな泥濘を探して
月夜 月夜 と鳴いている
空を、ください

だれにも消せない
どこにも消えない
あの空を、

わたしだけの物には成り得なくても
わたしだけの物と覚えておけそうな
あの空を、


許さないでください ....
田中修子さんのおすすめリスト(900)
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