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金木犀が、香ってかなしい
手折って、帰ってきて、グラスに飾って、香ってかなしい
ゴミ箱の中から、香ってかなしい
ゴミ出しをしていたら、金木犀が、香ってかなしい
手折って、帰ってきて、グラスに飾 ....
これから病院です
おかしいところを治す病院です
暗いスマホの画面に映ったわたしの顔その後ろの車窓その向こうの電線と青空が、とても綺麗で
6.4インチ、好きな分だけ好きな景色を切り分けたような ....
6/1
古いカメラのように瞬きをすると
紫陽花から滴る雨粒が
カリッ、と網膜に光の線を引く
6/2
すれ違う人の柔軟剤の香りにときめいて
振り返ると、彼女の背中に
斑点だらけの黒ずん ....
本名も知らない男に胸を揉まれてる間
スタバの新作フラペチーノのことを考えていた
チョコレート味の氷に
粉々のクッキーがまぶしてあって
ホイップクリームがたっぷり絞ってある
とても美味しそ ....
注がれて、熱くなって、割れちゃった
苦い液体をよくわからないまま漏らしている
シャリシャリ割れながら天井を見回したわたし
あなたはふわりと電気を消した
綺麗にしてたつもりなのに
悲しみの中に蜘蛛が湧いた
わたしは掃除機をかけた
ただ、黙って、掃除機をかけた
利用者がうんちを漏らした
トイレに誘導して、ズボンをおろすと
お尻にもデイパンツにもみっちりうんちが付着している
デイパンツを千切って丸めてゴミ袋へ
ズボンを脱がせて新しい着替えを履かせる ....
置き去りにされた筆は
黴びて、いいにおいを放ち
窓の隙間から吹き込んでくる青空は
甘く舌に転がりこんでくる
永遠を誓うように
誓われた永遠はキャンパスの上で
苦しみにのたうち回り
....
あ、
歌が聴こえる
ほら、よく聴いてごらん
なんだかとても寂しげな歌だねえ
あなたには歌ってほしくないなあ
もしもあなたがこの歌を歌うときは
僕は何をしているんだろ ....
【虹色の白鳥】
遠い海に、虹色の白鳥がいるという
羽はとろけるようにやわらかく
飛ぶようにはつくられていない
青い夜を泳ぎつづけて
ああ、まるでひとりぽっち
そういう思いに羽が沈み ....
じきに夏ですね
わたしの表現は
誰にも奪えませんが
暑さにかまけて
じきに夏ですねなんて言ってみる
新陳代謝で生まれ変わるわたし
青空のもとで血肉を燃やす
風の隣で鼻を利かせ ....
母は美しい
だから母の死体はきっと美しい
閉ざされた瞼にわたしは
小さなダイアモンドを飾りたい
「石なのに、この世で一番綺麗」
耳にツンとくる冷たい声が蘇る……
母の死因はきっと病 ....
ええ 夢です
わたしなど夢です
あなたの目にも耳にも鼻にも残らない
夢です
いちばん隅の机の上で
ちぎり絵をふたりでしました
桃のようなほっぺを寄せあっていました
ぼ ....
詩は勝てない
自分の意見を言葉にできる人に
詩は決して勝てない
気づいたことをちゃんと調理せず(素材そのものの味とか言って)
なんとなく寂しいだとか嬉しいだとか
そういう気持ちのソー ....
死にゆく蛍がかじった、かもがやの隙間の細い風
すっかり軽くなった腹を抱え
夜霧の中をしっとり歩いている
大きな風に
人の声が洗われて、草木の本当の
美しさを見る日を待ちわびていた
....
冷たい茂みのなかで ほほえむように息絶えた
光をともす雨つぶのなかに 今朝はうまれた
冷たい茂みのなかで ほほえむように息絶えた
わたしは傘を差し 家を出る
はじまりがおわりに ....
暗く清い女の子だった
こんなに、水のように柔らかい裸足では
どこへも逃げだせないだろうと思っていた
彼女は星の連なりを蹴飛ばし
夜の幕を裂いて、去った
綺麗な笑顔の残像は流れ星のよう ....
殻を食べた
血
葵の茎
たおって
ヨーロッパまで
旅する
先生の
鉛筆
去年の手帳に
素敵なものを閉じこんだんだ
六角形が
はじまり
先生
先生の ....
そう
あの子のなきがらに
付箋が張ってあった
「解釈してみて」
わかるようでわからない
心を追いかけ
血潮のなかで溺れている
皆を
ちょうど首のところで止めたんだね
....
鉛を擦った袖が
すっと高い
青空にひらめいて
手を振りかえすと
穂波へ消えていった
あなたを
好いていたんです
あなたの骨の中には
あの青い光が詰まっていて
きらきら き ....
ぬっとり湿った夜の膜を
そっとふたつの指で広げれば
胸を裂くような光のしたを
あたたかさ、なさけなさの影が歩いていた
カーブミラーの歪みのなかの
少しだけ正しい領域を
裸足で歩くわたし ....
桃をおろし金に擦りつけ
埃をかぶって臭うストローを水で洗った
プラコップの水面は穏やか
遠い南国の、夏の海の、奥の奥
レンジから元気のない食パンを取り出して
固いバターをスプーンで擦り落 ....
空が3つあればね
1つくらい駄目でも構わないけど
音楽室は雨のコーラス
トライアングルを鳴らすと
乳頭があまく痺れた
先生はしょうのうの臭いがした
深くおじぎをするとポケット越しの ....
私達はきょうも鳥の首を絞めて
お釈迦様を雑巾でぬぐっている
星は一面凍りついてしまって
月の香りがしないと鼻をすする
ころっと犬の彫刻が転がって
心臓をノミで打たれた感じ
....
折れ傷つき 挫け痛み
苦い草を食いちぎり また歩み
道ならざる道に 壁は壁ですらなく
人のほほ笑みは 時に後ろ髪をひき
憎しみを擦りあわせて ほのかに熱をだし
また歩み また断崖に臨み
....
望まないものを食べて
ふっくらと肥えた鳥達
心はやぶれ、夢を違えて
雪はこんこんと降りしきる
温かい巣にいられないから
誰もかれも震えて
つめたい石の灯りを頼りに眠り
ど ....
洗いたての芝生がちろちろと
脈を交わらせている
川までの道すがら
ちいさな生き物は溺れ死に
汚れた内臓は、光る命へと洗われる
車椅子に花を差し入れる
目を細めてファインダーを覗 ....
ボットン便所を囲んで皆で歌った
曲はなんでも良かった
太古よりこびりついたほにゃららの香りと
最新のほにゃららの香りを胸一杯に吸いこんで
厳かに歌いだす
「Aufersteh'n, ....
小指の先から優しくなっていくのかも
浩然とした冬に
無邪気に傷つけられても
まあいいか。と笑っている
髪の毛のすみずみまで
風にさらわれる少々にまで愛おしげに
流れていく
....
わたしの舌に、消えない火傷
あなたの魂を舐めたとき
廃屋のような体に、光る痛み
もし、あの青い林檎をもいだなら
神はわたしの性を奪い
燃えさかる海に放るだろう
わたしは赤く ....
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