朝方、目が覚めて
日常という乾いた渇望に水をやる
夜の暗闇は意図せずに
悲観的だった
動いている騎士達よ
雑踏にはヒモジイ苦痛が横たわり
果実の前に平伏していく
時折、差し込む光
....
秋になったから
蝉はいないんだよ
でもお父さん
じゃあ蝉はどこにいっちゃったの
突然青く染まった向日葵
わたしは季節をまたいでまで生きるのかしら
狂うくらい
狂うくらい
....
海は水平線を
鋭利なナイフのように突きつけてくる
想い出は残照の別称であり
水のように浸る憂愁である
夏が去り
海岸には打ち上げ花火の残骸が
寄せ来る波間に漂っている
{ルビ流離=さ ....
夏の空、玄関口
立ち尽くす己
庭木の揺れ、うねる大気
ああ世界が広がっていた!
己とは無関係に
何処までも眩しい異郷よ
五歳の時のその体験を私は決して忘れない
じぶんとは全く無関 ....
さびしいというのは
状態としてはべつに悪いことではない
それに起因して
やがて悪い状態になるかもしれないというだけのことだ
だからさびしいということを
悲観的にとらえるこ ....
{ルビ昨夜=ゆうべ}みたのはなんだっけ
昨夜みたのは金の星
応えたあなたは誰ですか
通りすがりの銀の風
明日もあなたに会いたいな
とっても優しい声だから
明日はわたしは隣国へ
十日後 ....
きのう
セミはことしいつ鳴き止んだかを
思い出していた
わからなかった
鳴き出した日もわからない
とっくに無頓着に生きていたんだ
窓のすきから台風一過の昭和の空 ....
なんということだ
大きな寄り道をしたもんだ
もう寄り道なんかするもんか
10年前からなにも成長していない
10年前の9月17日からなにも変わっていない
そんなこと想像 ....
木が騒いでいる
風と葉擦れが波のよう
潮の香のない海のよう
虫が鳴いている
幾重に重なる星のよう
その音色が宇宙のよう
ぼくらはどこから来て
どこへ還るの ....
今日の午前三時
痛む肉を携えて
部屋の暗闇に沈んだまま
私はひたすら夜明けを待っていた
その時また
意識のふわりと広がり始め
頭上から垂直に響く
無数の秘やかな息遣いに
じぶんの息 ....
八月に入って
夏の子が孵化した
春の子はカラスにやられて
しばらく空き家になっていたキジバトの巣
避暑に出かけたカラスがいない間に
夏の子はすくすくと育った
キジバトの巣は我が家のケヤキの ....
ざわつく心は
秋の訪れとともに目覚め
不安な心は
闇夜とともに広がる
落ち着きを知ることのないこの動悸は
はけ口を求めて高鳴り
救いの手を求めてもがきはするけれど
空ばかりをつかんで ....
ある日
詩人の詩を読んで
自分は詩人であると知る
ある日
詩人の詩を読んで
自分は詩人ではないと知る
ある日
同じひとりの人が
そんなふり幅で
弦も響いて
からっぽだから余計に ....
なにも見えない
いいとこなんて見てない
そんなとこ見なかった
葉月。の海月から、棘言葉を聞いた。
雨水が海面を打ちつける、
飛び込み方、を間違えれば、打身。
そんな海原をみてい ....
虹の根元を今日の夕暮れ初めてみた
輝く太い白柱、虹の弧を支え
余りにリアルなその立体の佇まいに
遠い遠い常世から
繋がり報知する
そのサイン
確かに見事に聳え立ち ....
詩を書く
死を嗅ぐ
初秋の空
ぽっかり
青仰ぐ蒼
鬱屈狂気
吐き出し
開く天蓋
陶酔境地
記憶喪失
漆黒の宇
未知の途
迫る獅子
詩の死の
洗礼浄化
入水浮上
起死回生 ....
腕に生ぬるい風が
夏の叢に虫の音が
頭に響く星のこえ
秋の煙を幻視する
過ぎていく
一年が
三年にも十年にも
万年にも光年にも
思える
還って ....
お婆さんが倒れて
救急隊員がやって来る
喫茶店で
我々はがらくたを注文した
ても子伯母さんが居た
てく一伯父さんも居た
てくいち伯父さんは歯が再び生えて来たようだ
三階の部屋の明かりは付 ....
好意の正体を
私は知りたい
最近は
持ったことすらない
一緒にいたいと思う気持ち
寄り添いたいと思う気持ち
かなわないなあと思う気持ち
まあ
それもいいかなって
何も教えてく ....
北のミサイルとホリエモンのロケット
どちらが安全なんだろう
爆弾がはいっていないなら
ホリエモンのロケットのほうがやばそうだ
幹線どうろの青信号
過ぎようとする刹那
....
晴れた朝は
自分に似つかわしくない
そんな自己嫌悪から始まる
今日一日をどうやって過ごすか
考えるだけで憂鬱になる
強過ぎる陽射しが疎ましく
外出予定さえ取り消したくなる
い ....
打ちひしがれる
悲しみに
打ちのめされる
悲しみに
ただ悲しくて
ひたすらに悲しくて
寂しくて
泣き出したいほどに
切なくて
こんな悲しい夜に
月は輝く
その仄かな明かりが
余 ....
あなたの膨大な時間と作品に
あんまり僕の人生が仕舞い込まれているもんだから
僕はじぶんの人生の先頭にたって呆然とするしかありません
あなたの作品だけでこんな感じになるのですから
....
人はみな明日がくると
思っている
たがその未来は
不確定だ
何が起きても
おかしくない未来がある
死神の
姿はみえなくても
その足 ....
断捨離中に父の写真を見つけた
捨てようと思ったが
写真の笑顔が余りにも清々しいので
躊躇してしまった
生きていた時は色々あったが
こんな風に笑う人だったのかと
今頃気がついて 少し胸が ....
月までは案外近い
いつか行き来できる日もくるかも、と
あなたはいうけれど
それが明日ではないことくらい
知っている
人は間に合わない時間が在ることを知っていて
間に合う時間だけを生きてゆく ....
自分が思うとおりに
まわりも見てくれると
安心なんだけれど
思っている自分と
見られている自分との間に
大きなズレがある場合は
混乱するのではないだろうか
例えば
まわりの人たちからは ....
どこからもとおくの
きみの手足をゆらす風の音
あめの、
裂いたひかりをまねる
キュービック
点をつないで
線をえがいて、それからの
ことは
どうだってよかった
ひだりの
....
木々が襟を立てて拒む間
風は歌わない
先を案じてざわざわと
意味のないお喋りを始めるのは木
いつしか言葉も枯れ果てて
幻のように消えてしまう
すっかり裸になると
しなやかに 風は切られて ....
あれは化石の街だった
すべてが固まって
ぼくは言葉を失ってしまった
ある漁師は寡黙に作業をしている
ラーメンを啜りながら
海辺の波をみたら
視界は空を広げ
腕の血管のボルトを力いっぱい絞 ....
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