窓辺に座って目の高さの夜桜を眺める
春霞の空は街のひかりを吸って灰色に濁っている
額にあたる風が花びらを舞わせている
涙のようだ
あのときわたしが流した涙のようだ
涙はし ....
その場しのぎでかけたほうきのあとが
際だたせているホコリの存在
誰もいない教室で
立ち尽くしているあの子が
完璧な掃除をめざすことは
もうない
ちょうどいい汚れを残した部屋で
綺 ....
{引用=
朝がほどけると、水面に横たわり あなたは
かつて長く伸ばしていた
灰色の髪の、その先端から
魚を、逃がす
皮膚は、透きとおって ただ
受容する 水の、なまぬるい温度だけを
....
星ひとつ 星ふたつ 静かに尽きる夜
キリンは街をさまよい歩く
まっすぐな線がまだいくつも
引かれていない 幼子の 夢の灯を
螢の群れる木のように 揺らしてそっと
キリンは ....
このメールを打ちながら
ほんの少しあなたは微笑んだのだろう
ありふれたジョークのような
たった二行から
一滴零れた微笑みが
ザクザクの雪解け道をよろけながら歩いていた私の
胸の底にぽたりと ....
黄金の虫が
炎に包まれ
檻の中から
飛び立った
見学していた
子供達の間から
歓声が上がった
黄金の虫は
ドーム状の
天井近くまで
舞い上がり
ふらふら堪え揺れ
すっと力尽 ....
あの陽だまりに置き忘れられた深い裂け目
おれの胃袋はもう紫色の朝へ停泊していた
窓から女が見えた裸のまま
微笑んでいた カメラの前みたいに
ブラインドが降りるまでの一瞬だった
おれはその一瞬 ....
目覚ましが鳴る
私の眠りが破られる
また目覚ましが鳴る
私の眠りが破られる
いったい何度目覚ましは鳴るのか
私をどんな眠りから
どんな目覚めへと連れ出そうとして
目覚ましは鳴るのか
そ ....
呼ばれ
現われ
戻れなくなったものたちが
一心不乱に花を愛でている
なびくはずのないものがなびき
冬はひとたび その身を隠す
鏡のなかを
動くきざはし
....
野良猫に話しかける人を
路地裏の防犯カメラが覗いている
春の陽気はくすぐったいから、似合わない
見下ろせば宴、地獄の淵はビルの屋上にある
天国の近くは高い金網が必要
恋はいつまでも恋 ....
紅葉の森を過ぎていくと
ささやかな秋の風の音さえも
白い雲の果てに枯れ落ちていった気がした
また訪れるあの人へ
遠くなってしまったあの人の温もり
忘却の彼方から
舞い降りる晴れ渡る声
....
先生もうそをつくのだ
親もうそをつくのだ
警察官もうそをつくのだ
裁判官もうそをつくのだ
政治家もうそをつくのだ
医者もうそをつくのだ
子どもたちよ
大人たちはみんな
少しずつうそをつ ....
遠くにある町を眺めている
海の向こう
タバコはもう吸っていない
クジラが見えた気がした
工場からでる黒煙
憧れの場所は蜃気楼
町は僕を忘れた
スーツで泳げたら ....
パンク、てか
パン食う
詩人
じゃなくて CG
心は丸刈り
風邪ひいた
かきーん
枯木のまえに坐り
わたしは次第にあなたになる
滲む
たくさんの色たちのように
あなたも次第にわたしになるのか
河のかげにうつろう赤茶色の葉
昼の ....
遠くの情景に
ひとまず別れを告げて
内なる心象に目を向ければ
喜怒哀楽と
それらに紐ずけられたものどもが
溢れてくる
それらは、別々に現れるのではなく
万華鏡で回し見するみたいに
....
今日は。
昨日の。
明日ではない。
明日は。
永遠に。
やってこない。
時の果て。
まあるい。
星の。
いのちは。
今日を生きる。
だけ。
あの日を。
越えて。
....
夢のなか昏い洞窟のしたたり落ちる水滴と
森の朝の露が合成されてぼくらは生まれた
やがて酒場のにぎやかで気怠いピアノの鍵盤を踏んで
自分が誰だか気づきはじめるか忘れ去ってしまうかの
どちらか ....
悲しみを夜空に放って明日が風の向こうに佇んでいる。
発散できない苦しみを胸に秘め、明るい明日をじっと見つめる。
希望は憶測の彼方に掠れ、現実の重みに耐えている。
ペン先は暗がりを好む ....
夜陰に
静けさの
微かに揺れ動く
ベッドを囲むカーテンから
白の色 剥がれ漂い出し
微かに振動する
静まり返った
四方空間に
彷徨い落ちゆく白の色の
帰着すべき基体の不在 ....
わたしから切り落とされた白い手が
向こうで手をふっていたのです
交差点にはひっきりなしに
びゅんびゅんと雲が行きかうものですから
どうしても渡るきっかけが
一歩を踏み出す勇気が
つかめ ....
あやとりを繰り返す
かたちを変えながら
手首を噛むと涙があふれた
哀しみ
届かない星々の煌めきの際
かたちを作りながら
あやとりを繰り返す
並木道
....
飛行機がなめらかにすべって往く
そう青くもない春の空
だだっ広くてなにもない
つかみどころのない空気の層を
真っすぐ切っているだけなのに
こんな遠くまで聞こえて来る
――あれは空気 ....
イライラしながらつくるご飯
容赦なく切り裂いてゆく食材
答えが知りたい
だけど知ってしまってなにになるんだろう
歩かなきゃいけないのは同じだ
夜には見える星の
正体なんて知りたくな ....
息絶えること
束の間の
蝶ちょ捕りでは
ないのだから
手にしたとたん
枯れはじめる
お花摘みでは
ないのだから
世界をきれいに
切り取るだけの
標本づくりは
もうたく ....
1条うまいものばかり食っていると
ろくなことない
2条飲み過ぎると
ろくなことない
3条イライラしていると
ろくなことない
4条自分のことばかり考えていると
ろくなことな ....
目鼻立ちの麗しさではなく
口もとからふと匂い立つ色香でもない
清水の底から沸き上る泉のように円やかな微笑み
それは微笑んで見せようとする思いの仕草が
表情を作り出すよりもどこか深いところの水脈 ....
ラベンダー色の海に身をひたし
悲しみを咀嚼した
ガラスの隙間から
誰かのページをめくる音がきこえる
屈折して
青い血が飛び散る
卵の殻のなかではぐくまれた
そうしていつか 荒涼たる浜 ....
何気ないひとときがとても大切に思える朝。
光はまだ淡くカーテン越しに差し込んでくる。
今を生きている事に幸せを感じ、与え、受け取る。
闇夜の呪いがゆったり溶けてゆくようだ。
....
営業マンは営業成績が人格だ
老人は預貯金が人格だろうか
アルバイトは手際の良さが人格だ
そうだ
お金持ちだけだ
清潔さや円満さ、温かさが人格なのは
招待状からラ ....
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