街の光が消えゆく中
ワイングラスに赤ワイン
夏には冷たく、と
冷蔵庫に入っていた。
憧れ続けた東京摩天楼
きみを此処から眺めてみる
ポツポツと消える都会 ....
わざわざうみにまで行かなくたって、近所をぶらぶら散歩しているだけで案外救われたりする。
道をさえぎるほどに伸びきった雑草、ハエのたかる犬の糞、
でかい音を立てて走り去るトラック、落書きのされた ....
帰省した
ほんの気まぐれに
親に顔を見せた
ひどく暑い夏の折
来月に盆を控え
年のはじめに世を去った
祖母を思った
居場所なく
結局仏間でくつろぐと
線香の匂いが
また ....
道端で色褪せていく
この盛夏に色褪せていく紫陽花よ
アゲハ蝶がその繊細な触角を動かし
咲き誇った花から花へと優雅に飛び廻る時
あの青々と濡れ光っていたおまえは
早くも凋落の一途を辿っている
....
美しかったわたしを今はもう誰も知らない
それはとても良いことだ
だってわたしは彼らの中でもっと美しくなれるから
いかに話を盛りつけるかは自分次第なのだから
美しかったわたしを今はもう誰も知 ....
ああ まただ!
ものというもの浮き上がる
異なる位置占め、それぞれに
明確な輪郭保ち、しっかりと
在る在る、いつしか重なり合い
在る在る、各々の色は保たれ
(己 も また、
在る ....
健康に生きるには
それなりに努力が必要だ
年を取ればなおさらだ
医者がダメと言うものは
やめる
医者がいいと言うものは
どんどんやる
女房のアドバイスには
素直に耳を傾ける
ビールや ....
サイダーのボトルを開けて
気泡の弾ける音に耳を傾ける
真夏の太陽が気泡に反射して
まるで宝石を散りばめているようなサイダーのボトル
涼しげな音の宝石たち
見入っていたらトンビ ....
東京の空を知っているか
ネオンのその上にあるんだ
スカイツリーのその上にあるんだ
匂菫のそのうえに
あおい銀杏のそのうえに
かの黄葉のそのうえに
稀なる雪のそのうえに
ぺてんに慣れてうた ....
初夏を潤す水の眠り
そのやさしい浸食が
一人一人の誕生までさかのぼる
ふと手を止めたその先には
地球全体がまばゆく広がっている
鉱物たちの永遠の眠りが
一人一人の死まで急いていく
....
どれだけの道をあるいて
高く飛んで
転がって
どろだらけになっても
高く飛びたくて
もっと崇高な未来を
もっと美しい自分を
わかっている
わかっている
わかっている
わかっ ....
猫の喉奥から
小さな雷鳴が聴こえる
やがて
雨が降ることだろう
さみしさを埋めようとして
猫を飼うということを
怒っているのかい、
猫
六月の保護色みたいな灰色の毛は
なでられる ....
おばあちゃんたちが暑い陽射しの中を
ふらふらしながら広い駐車場を
歩いている
店内にたどり着くまでに
熱中症になりそうだ
入店すると急に冷えてきて
心臓に悪い
ワゴンを押しながらというよ ....
夢みるようなうすももいろ
澄んだ湖水のようなみずいろ
二冊のファイルの背表紙に
二色のテープを貼りつけてみた
表紙と裏表紙はスタンプや使用済みの異国の切手
舶来のステッカーなどで飾りつけたい ....
君が泣き始めてしばらくすると、雨が降ってきた。
空が君にもらい泣きしているみたいだ。
空も、君を見守ってくれている。
だから君と離れているとき、空が晴れていると安心する。
きっと君もど ....
○男は
言った言葉にこだわり
女は
言われた言葉にこだわる
○男は
行動を重視しているが
女は
言うことを重視している
○よく喋る女は
幸せそうに見えるが
よく喋る男は
....
ウチは夫婦とも
携帯はガラケイだ
僕は今年スマホからガラケイにかえた
掃除機もガラケイだ
先日サイクロン式から
紙パック式にかえた
女房もガラケイだ
やっぱり使い慣れたほうがいい!
書き連ねたその名が
細波となって 寄せては返す
好きだ 好きだと 漏らした声
海に降る雪 静かに跡もなく
わたしは溶岩
死火山の 抜き盗られた{ルビ腸=はらわた}
灰の伝道者だった ....
光に
射抜かれた
夢と現の間で
光が
私を射抜いた
夜が明け始めて
キ
ヅ
ク
ト
私は光そのものとなり
白く発光する薄いプレートとなり
浮 ....
無になりたくて参禅したんですが
無になれますでしょうか
無理です
生きているかぎりは
しかし
とらわれないことはできます
一部を全部と思い込むから
とらわれるのです
....
あしたの天気予報をテレビで眺め
ちゃぶ台のうえのビニール袋から
隠元をとってはへたをとり
ざるに放り投げてゆく
あしたは夕方雨が降るらしい
隠元は ....
記憶の彼方に浮かぶ一艘の客船は時を巡る。
大海原は凪いでいる。
トランス状態に入る前の静けさに音楽は語る。
安らぎはいまだ訪れはしない。
多少の情緒不安定は正常だ。
海は ....
1
東日本大震災・死者・行方不明者数
二〇十二年三月十日(石巻日々新聞)
死者 15854名
宮城県 9512名 岩手県 4671名 福島 ....
もうこれで、と思ったときも
ページをめくると鳥がいた
青色の羽をしていた
羽毛が抜け落ちるのを
少し気にしながら
西日の当たる部屋
ソファの上で笑ったり
片方は詩人で
片方は旅 ....
日焼け止めを塗っても肌は焼けるし
信頼していても裏切られる
空腹に注ぐコーヒー
一杯のどす黒い目覚め
止まった時間が動き出してほしいと願い
欲しい物リストに時計を追加した
君と ....
うまれたての水のつめたさで
細胞のいくつかはよみがえる
けれど
それは錯覚で
時は決してさかのぼらない
この朝は昨日に似ていても
まっさらな朝である
それでも
あなたの水は
六月 ....
死の天使は軽妙がいい
悲壮は生にこそ相応しい
諦めもある一線を越えれば解放だ
概念だけの救いなんて幽霊にも劣る
仔犬のように震えている
不安の口に手を突っ込んで
ズルリっと裏返し ....
灰色の街に
今日もじゃぶじゃぶ降りしきる
情報洪水の雨達
駅のホームに立つ人々は
小さな液晶画面
の上に
人さし指を滑らせる
ひとり…ふたり…と
人がロボット化してゆく様を
....
平たい皿の上に
幻の鶏が一羽
細い足で、立っている
こけえ
くぅおっこ
こけえ
青い空へ吸いこまれてゆく
あの日の、さけび
先ほどまで
醤油のたれに{ルビ塗=まみ} ....
生きていれば二十七歳
二十五歳まで生きるものよと
微笑って言ってくれる小母さんも居たけれど
十二月の空はあおくあおくあおかった
十年の月日が流れ 忘れられない
あなた以外と暮らそうなんて ....
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