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ある日
歩いて近くの図書館に行った
詩集を一冊取り出して
椅子に腰掛けて
読みだした
十五分もたたずに
なんだか瞼が重くなってきて
あれれ
ふんわり
文字が
二重三重に揺ら ....
海を見ていた。
あなたと私の隔たりをどうしたら埋められるのか考えていた。
夢にあなたが現れてその時は号泣していたのに
朝目が覚めてみると枕はほんの少し滲みているばかり。
海は ....
ただ泳ぎたいだけ
ぷかぷか浮いてたいだけ
どこの海かは問題じゃなくて
夏の海こそが
帰りたい場所なんだ
泳げば忘れる
いいことも悪いことも
自分が生きてることすら
赤々と燃える送り火を眺めながら
今年も夏の終わりが近いことを知り
一抹の寂しさが、胸を過る
盆が過ぎれば間もなく
朝の空気が変わる
早朝、太陽が昇る前
ほんの少しだけ
軽くひんやりと ....
噂話で伝わる
いい人ね
食事御馳走になった
荷物持ってもらった
話を聞いてくれた
過去形で
未来への言葉がない
やさしい人
いつま ....
空に
宇宙が染み出している
秋だ
白い夏の空に
虫や風よりもはやく
秋の光が走る
人間の美しさは髪形だけになる
匂いや陰毛が鼻や歯にはさまる
晴れて ....
私の瞼に咲く花は
いつも明るく黒い色をしている
明るい黒い色は
ナイフで切り刻まれた
唇の笑顔になって
翼のようにひろがっている
空を見上げては
飛びたがっている
私の明るく黒い花は
....
花びらを握りしめた
手のひらをそっとほどく
花びらは蝶になり
夜明け前の赤い空へむかって
円を描きながら飛んでいく
*
指先から聴こえる
川の鼓動をたよりに
目を覚ました足で
鼓 ....
生きるのがキツイ
意志が萎えて
今日を乗り切る
ので精一杯
タイトロープに身を預け
垂直に落ちていく時間を想う
足場を失くし耳切る大気の音は
いつか見聴きしていたリアリティ
遥 ....
抱きしめたもの
全部ひっくるめて
冷蔵便で送るよ
たとえば
大田・桜公園
{引用=擦り傷だらけの 谷やんの
分厚い両手が 切るネジは
ミクロの世界で 刻まれて
....
今日も雨だね、
そうだね、と返す
季節外れの雨好きよ、
君も物好きだね、
無名のコーヒー飲みながら
僕らの会話は続いていた
湿気と雨が纏わり付いて
苦手だった ....
乱雑に積まれた古本の階段をうっかりと
踏み外して雪崩る時間
目眩き
感光した
若き夏の日の窓辺
白く濁る波の音
瞑り流されて
大好きだった ....
にぎりしめるのは、鉄の冷たさ
弧を描き
風にのり月へ飛ぶ
加速度で剥離した心音
音速の壁で散り散りになる資本社会
札束と金塊を撒き散らし、風になる
摩擦で燃える消費社会
豊かさで枯れる大 ....
雨色の絵具
乾かない涙と癒されない傷のために
散り果てた夏の野の花を
鎮魂に疲れ果てた大地へ捧げる
生者の燃え盛る煉獄へ
死者を捉えて離さない
空砲の宣言と
紙で織られた翼のために
憤 ....
行きたい場所があると思う
過去の感情を大切にしたい
空洞になったとしても
続いてゆく所作に美しさがある
真夏でもひやりと冷たい樹皮のような
さめた しなりとした摘み心地は
暖かくな ....
深い眠りに就く前にお前の笑顔をもう一度見たい。
お前の笑顔は私と子供とを優しくさせる。
たった一度の夜に訪れる魔法の力。
さあ、私らに笑顔を見せておくれ。
お前は病床で安らか ....
分かり合えることが
まずおかしいと
おれは思う
わかった
よし、わかった
まず飯食おう
それからけんかしよう
作らん?
わかった
よし、わかった
おれが作る
お湯わかす
....
しんしんとして降り積もる雪が
身に染み寒さは体に渡り
涼しさと凍えの境目も
分からないほど火照った体で
観客はいない二人だけのワルツを踊る
取り合った手と手
そのまま凍ってしまって
....
命のことなど問われれば
とってもエライ国会議員
「七十歳になってもまだ生きて」って 怒鳴ります
「七十歳になったら死ななあかんね」
六十九歳のお母ちゃん
淋しく笑って固まった 父の ....
指先に流れ込んでくることばたちが綴る詩は
川の流れにたゆたう髪のように絡みついては
また流れていく。ことばたちは生まれては海
月になって遥か彼方の階段をめざしていく。
ことばたちが昇っていく階 ....
風になびく風鈴
風に逆らうライダー
向かい風はもちろん
横風も追い風とも闘う
風鈴のような人生を
オートバイで味付けする夏
空が空を掻き毟り
空はちぎれ ちぎれちぎれる
爪 柱 軌跡 鐘
傷の音 鳴り止まぬ 傷の音
舌の渦
声の洞
青の青の檻
空の囚人
遠い遠い 雨の色から
....
昨夜は寝ながら考えた
僕達は
円の中心を求めるように
いつも中心を求めている
キーボードの上で
テントウムシが{ルビ触覚=おぐし}を直している
ENTERの右の
7HOMEと8←との間
溝にハマった姿勢だが
寛いでいるようにしか見えない
{引用=どこから とか
....
君は知らないだろうよ
夜の向こう側には
大きなぜんまい仕掛けの
塔があるのさ
何の塔かってそりゃ
時をつかさどる塔さ
てっぺんには風車がついていて
時間の風を受けて
ぐるぐるぐるぐ ....
静かに暮らしたい
朝にはパンを焼き
夜には水を飲み
平日は黙って出かけ
休日は車を洗い
あまり欲しがらず
あまりいやがらず
その日あったことはすべて忘れ
一生の終 ....
思い出の公園でブランコが揺れていた。
横浜に降る霧雨は仄かに青色で。
なぜだか僕は独りぼっちで寂しくて。
今在る幸せに気付く事も無かった。
誰もいない公園で僕はブランコに揺ら ....
風に乗り
真夏の匂いが立ち込める黄昏時
草葉に注ぐ夕日と影
蜩の声は空を舞い琴線に伝う
目に映るもの
聞こえる声
とり巻く全てのものに心惑う夕暮れは
束の間 平和だった幼い頃を思い出す
....
夕方
遮断機カンカンカン
電車がはいってくる
また
カンカンカンが鳴る
ひっきりなしだから
夕方
西瓜の温度がとまる
西空が黄ばんでいる
また
....
どしゃ降りの中学校
俺のことが好きなあいつ
傷ついたものたちが着替えはじめる
野ざらしのソファに
自棄になって座っている
クズたちが責められる
擁護されるクズも ....
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