びわの葉に隠れてしたのを覚えてる? 分厚い梅雨の灰色の下で
風の日にしろつめくさを摘んで来て 雨の降るまで歌をきかせる
からだが重たい。
しばらく贅肉をぶら下げて生活していたらすっかり肩が凝ってしまった。
家から駅前公園までの道には「ばらの家」がある。庭いっぱいに薔薇棚を作ってあって、さらにいくつもの鉢それ ....
まちは水槽のようになって
ひとびとの思惑を閉じこめた
そこで僕たちはちいさなあわをあつめて
気持を通わせることにした
ひとつ あわを もらっては
ひとつ あわを さしだした
ふたつ ....
ああ 蟻の体で
君の思考をあるいたら
どんなに気持が良いだろう
意味や理由から赦されて
わずかでもたしかな重みをもってあるいたら
でもこれは
ぼくの罪で
いつまでも脳を出ない
....
自由です迷子ですから自由です あなたに触れて明日も明後日も
迷子です自由ですから迷子です ひとつ触れたらひとつ忘れる
わたしたちどうしてこんなに悲しいのか 倒れながら飛ぶ鳥よりも
雨ごいはこうやるのよ見て ドーナツの穴が落ちてるはやく拾って
意味や色は流行りが過ぎて色あせて いまではみんな灰色の◇
....
いまでもわたしはあの9月の川べりに座って、可愛いあのこと好きなものを言い合ってる。いいかんじに色あせたTシャツのプリント、外国のバンドのロゴが書いてある、ぼうぼうに伸びた雑草、東北のさばさばした風。で ....
いいにおい
夜のおわりのみどりのにおい
なま白い手足で泳いでいく女のこたち
文字の群れとあかるいカステラ
いいにおい
頭の右うしろのほうの記憶
こうばしいおとこの子たち
めくばせとジ ....
わたしは初夏
水の跳ねるところへ座り
地べたを行く蟻に尋ねる
( )
空を行く鳩にも尋ねる
( )
枯れ行く薔薇たちに尋ねる
道を急ぐ人びとには
....
薔薇がそらを向いて開き、まちの花盛りは終わろうとしている。連休の留守から戻ったら、好きだったなにわいばらの花はひとつもなくなり、花弁さえどこかへ行ってしまった。なつかしいあの清廉な白。
来て半年 ....
鉢植えはすぐ枯れてしまった
だから爪を切った
爪はすぐに伸びてしまう
だから穴をあけた
穴はすぐに乾いてしまう
だから夜を買った
日はあっという間に登った
だから日傘を買った
....
うつむいて羽ばたく鳥はいないので
あなたの目をみて嘘を言います
夜がどんなふうに崩れていくか
あなたをどんなふうにうしなうのか
わたしが
知りたくて
今
ひみつをして
泡をのんだら
夜がひとつきえた
三角 四角 五角 六角
とじない円をゆめみながら
とにかくさびしかった
このあおい夜を切り取って縫い付けた右腿は
ぐずぐずと黒く膿んでしまったから
風通しの良い洋服を探している
ふやけて黄ばんだ気に入りの本にはさんだ言葉をまだおぼえているか
いいえわすれて ....
どうしてまた
と 問う度に空瓶はふえ
瓶の立つ数とおなじだけ
言葉を見失う
不運と幸運を釣り合うように計ってのせた菓子盆
運ぶうちに混ざり合ったこれをいったい何と言う
うすうす知ってはいたけれど
そとはやっぱりおそろしい
それでもくまは森をでた
街はかわいてうすぼけて
みわたせばべたついたくまたちが伏せている
ここにもくま あそこにもくま
森 ....
よこたうと よこたわないのあいだには なんだかくらいすき間があるね
何度めの桜が散ればめくれるか丸い体にはさんだ四角
それが大きいのかちいさいのかわたしには分からない
数だということだけ わかる
くらやみを射抜くような空ろないたみがビルを覆っているので
ひとびとはたえまなく降ってくる
切りそろえられた三角 ....
雨のあいまに草がのびていく
つみとってもつみとってものびていく
春は毒だ
帰る場所もないのに咲いてしまう
おなじ夢をみる。
地下、暖かいイメージ、職員室の裏側にある保健室、せまいなかにぎっしりつめられたベッド、シーツ、まくらとまくらカバー、小人みたいな先生。彼女は走っていく、校庭や道や草はらなんかを ....
言葉がおちてる ぷつぷつにきられて
台所 タイルの水色
削りかけの鉛筆がむなしい
言葉はたびたび
うらぎるようなふるまいをする
季節や 温度もそうだし
寝起きの兎だってそうだ
手 ....
しらないと言ったそばからうそになる 知りたくないのだ 正しく言うなら
こわいのは戸棚の奥の砂糖壺 ざらめのついた世界はきれい
ここからはからだを脱いできてくださいね 心も脱いじゃう人も ....
手は 夜をすみずみまでたたいて きえた
大事なものと そんなに大事じゃないもの、
をくらべて
でも そんなに変わらなかった
あなたの抱擁のまえで
人生など
あってないようなものだった
....
さいしょは辞書を食べるのがいいとおもったの
すべてがなにかということと
言葉の味と、紙のにおい
うそだよ、とか、そんなものないよ
とか
それか、
ほんとうにすべては正しいのだ とい ....
ミサイルが飛んで落ちてまた昇るまでのあいだ、
くだらない冗談をひとつずつ言いあって
河原の小石をうめるようにしていた
川釣りのおじさんが面倒くさそうに餌を投げてくれる
もしかしたら彼もみか ....
いろんな花をつみながらあるいてきたね
あかるい花もくらい花も、つぼみも種も
ふりかえることもできないくらいいつもすべては近くにあって
コップはいつも割れそうに満ちていた
みちていた
そう ....
青のしたの鉄のむきだしすべりだい ななめにういた赤錆の音
(なるほど)と(それもそうだね)と(なるほど)
(出していいよ)と(でもまだ待って)
いつまでも凍えてるわけにはいかないでし ....
ダンスはここから遠い場所でつくられた
彩色された記憶 プラスチックの
開かれない窓、錠のない鍵
閉ざされながら きみょうにあかるい
箱のなかの部屋
物語を
つくる というよりも 願 ....
お誕生日はよく晴れた。いつものように洗濯機をまわして床をみがいたあと、夫がベビー・カーを押してくれたので公園まで娘と手をつないでいることができた。
午後は眼鏡を新調したあとでお鮨をたべにいった。安い ....
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