月はくだけて 花火のようだ
瓶詰の感動を 2ダース買う
予定のない日 自動車を運転して 精神科へ
背の低い医者に ばかでかい椅子のうえから
大丈夫ですよ と言ってもらうために

大丈夫 ....
あなたの黒い長い髪がうたうたび
わたしの胸はいちいちこまかく傷つきました

海岸のガラスみたいになめらかにちいさくなっていくわたしを
拾いあげて陽に透かして
その美しい呼吸を一瞬でも止め ....
角度、模様、ゆれかた
1日ごとに忘れること
空をさす指にのる爪が
いちいちあたらしく光っている
赤や白や茶に落ちついた傷あとや
庭のれんがが古びていくこと
角がまるくなったノートを
 ....
真実ばかりの積み木は ゆっくりと嘘になる
やさしいばかりの囁きは やがて毒になる
嘘ばかりの言葉が 思い出のすべてになる


時間をかけて選んできたわたしの体が
あなたの嘘のおかげで
 ....
花ちゃんの
あたまはしめって
血みたいな味がした
手のひらはかわいて
すこし皮が むけてた

それからふるえるように息をしたら
世界は
ささやかなその体のぶん
のびを した
 ....
そういえば春は
いつのまにか過ぎていた
楠のみどりの深さに溶けて

さえざえと曇る朝にまだなんとか
へばりついた春
雨戸をあける音に縮んで
すずらんの根元へ消えていく

ばらの蕾 ....
一滴のくらやみが 明るみに落ちたとき
わたしは黙っていてもわたしでした
愛などのことばも必要なしに

光を一粒あなたがとってみせたとき
はずかしく右往左往にばらけるわたしを
つぎはぎの ....
ふるい扉は頑丈で
坂みちをふさいでいる
その手前で三角にすわって
少し音をきいていた

あかぐろい、(でもやさしい)
まるい(でもつよい)、
おおきな、あかるい、時折白い、
響いて ....
なにか忘れそうなきがしている
なにか
雪が降っている
空が濃く青い
皮膚が張っている
忘れそうな
あなたは昨日から
水色のズボン
なんだっけ
夜は冬の気持
水玉の靴下
泣きご ....
あおじろい保安灯に
むくんだ肌がうつっている
こちらはかさかさに渇いているが
蛇口からは水

春はゆっくりやってきた
さいごは けれど
引き鉄をひくように
桜をたべたら甘かった
 ....
退院の日は花冷えがした。うちにかえってきたら隣家の夫婦がやってきて、それから、いとしい宝籤は(宝籤は母と父が飼っている黒い犬だ)、尻尾を―先端だけがほんのわずかに白い尻尾―ちぎれそうに振って鳴いて .... 目がさめて じとしてると
夜のひと粒に 少しずつ
朝が混じってくる

ひと粒ごとに かわった色と音をして
きんきん しいしい
降ってくるのを
わかりたくて じ としてたら
こんな ....
しびれるように今日は
明日を失い
昨日を失い
昼夜を失った

羊の目をもつ鳥が落ち
布を裂く音が縦に響き
誰かは誰かを失った

ぎりぎりの分別に
長くのばした爪を引っ掛けて
 ....
二月末には毎年わたしの誕生日がある。ことしは、実家にいるので、そして妹も帰ってくるというので(姉は仕事のため帰ってこられないのだという)、安心してホールケーキが買えるわねと母が笑った。
妊娠のためと ....
0が1を
たべつくして
朝になっても
明るくない

うすく凍りついた水たまりを割ると
世界の底で
あなたがスープみたいに眠っている
みてあのこまだ
舟なんかつくってる
とさされたゆびを
はじから折って編み込んでいく

わたしはかなしかった
夜でも朝でも
ま昼にはいっそおそろしかった
からだじゅうに溜まった水が
 ....
あなたはいちども
わたしを愛さなかったけど
あの
朝とも夜ともつかない暗がりに
わたしともあなたともつかなくなったどろどろに
手を抜いたこともなかった

かわいそうに
いつまでも
 ....
こわくない
冬なので
こわくない
ビタミン剤あるから
ぜんぜんこわくない

花柄の靴したを
いつもばかにされても
構わないで履きつづけていた
ななちゃんは9歳だったのに
勇敢だ ....
夫の恋人はわたしよりすこし背がたかくて聡明な肌をしている
恋人の妻はアイロンがけがうまい それしか知らない
鳩も恋をするんだろうか
箪笥や窓枠も恋をするのかな
わたしの目はどうして
いつ ....
音は雪に食べられてしまい
部屋は
かえって生きものの息づかいでみちている

台所の戸棚のなかで
じゃがいもの芽が伸びてゆく
張りつめた胸の皮膚のしたを
薄くなった血がめぐっている

 ....
あなたがむかし
わたしにつけた縄を
こんどはわたしが
あのひとに結びます

雪は屋根のうえでだらしなくなって
白がすこし疲れたようす

毎朝 沸騰する
わたしの身体を知らないでし ....
夜中
息をひそめて
折りたたんだ気持をひろげていく
広げきったら折りたたみ
わたしが
きのうのまま
朝を迎える
1000日まえに
あなたがはじいた額のうぶ毛が
わたしの下腹であわい振動となって
いまではすっかり花のよう

つぼみとも種ともつかぬ時間が
おいしい毒になって
いつかあなたにも届くと ....
夜に
徐々に黒は
春に犯されている
そうと知りながら
花を賛美した
泣いているひとを知りながら

眠たい酒樽たちに
よごれた指を一本ずつ沈めていく
抱きしめてなおやさしいために
 ....
しかくい青さに煮出されるみたいにして泳いでいたあの子がいまはほんとうに
ま緑色になってしまった、泳ぎはかわらないが
ちらちらと遠くみえるのはかなしみだけであった
あんなに、なんども
きれい ....
ほしかった
ものをまえに
気持をうしないそうで
驚いている

驚いている
わたしがわたしを
うしないそうで

ねむりなよ
あなたが
言うものだから
泣くよりさきに
ほほえ ....
雨の日に彼女はピクニックへでかける
ぐしょ濡れのボンネットのうえでキスするために
アナウンスが不在を告げる
(あなたが誰かわかりません)
ため息で重たくなったバケツ
動物園で産まれた猿が山で ....
ひとを好きになって
はずかしかった
目も口も鼻も手足も
はずかしかった
話すことも黙ることも
さわってもさわられても
泣きたかった
赤くて青くて
欲しかった
あふれるまぎわの気持 ....
はす向かいの煙草屋から2メートル借りて
となりに住む大学生から4メートル借りて
街頭募金を装って6メートル借りて
それでもたりなかったから交番へいって3メートル借りた
夜爆発して
住人が ....
それでも二人は
かわいていた
恋はいくつも死んで
錠は錆びきって
まだ出会ってさえいない心持をして
はるな(1722)
タイトル カテゴリ Point 日付
21世紀自由詩314/5/16 20:36
海岸自由詩914/5/16 4:00
すてき自由詩714/5/14 18:17
ゆっくりと嘘になる自由詩514/5/8 6:57
花のこと自由詩514/5/5 20:35
そういえば春は自由詩314/5/5 20:33
くらやみ自由詩914/5/1 23:09
助走、逆流自由詩714/4/26 18:07
冷蔵庫のケーキ自由詩914/4/24 16:50
蛇口2自由詩514/4/24 16:46
満足散文(批評 ...514/4/23 14:31
きんきん自由詩314/3/5 4:28
分別自由詩614/2/28 22:54
ホールケーキ、2/22のこと[group]散文(批評 ...314/2/26 16:24
スープ自由詩1114/2/26 5:47
破裂自由詩414/2/24 4:46
まほう自由詩414/2/20 22:44
障子紙自由詩1014/2/18 14:05
箪笥や窓枠自由詩514/2/16 21:54
じゃがいも自由詩12+14/2/15 23:34
自由詩814/2/14 0:44
自由詩814/2/13 0:16
振動自由詩514/2/11 23:17
酒樽たち自由詩414/2/11 3:20
水槽自由詩714/2/7 20:48
ねむりなよ自由詩714/1/29 2:32
構成自由詩414/1/26 22:14
まぎわ自由詩814/1/22 10:58
自由詩1114/1/18 3:19
それでも二人自由詩014/1/18 1:23

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