髪と髪が触れ
影になる
風のなかの粉
砕けて光る
ざわめきを登りつめたところに
廃線の花 水に浮く葉
ひとつひとつの滴に残る
まばたきの水紋
打 ....
何度泣かせるのだ と
微笑むほど泣いた
泣いた 泣いた
そして 泣いた
治らない傷こそ生きている証だと
血のついた指で食べつづける菓子
何もかもがほどほどの
すぐ ....
意味を為さない言葉の灯が
夜の行方を照らしている
歯並びの悪いひとりの捕食者
誰もいない街を割る白い瀧
涙の側を飛ぶものが
光を手のひらに受けている
もう発つものも ....
目をつむってもつむっても
夜は夜に聞こえない
水でできた城が空から
ゆうるりと崩れ落ちてくる
多くの夜が
多くの身体の上に重なり
奥なる声を外に連れ出す
夜を ....
窓の隙間に浮かぶ手が
静かに夜を舐めている
灯りの無い窓の連なり
指だけが光を反射している
ひとつの入口に
花はあふれ
入りきれずに
花はこぼれ
束ねる ....
夜風の冷たさ
貼り付いた白
夜の鳥
夜の赤子
焼け焦げた径
はためく光
見えないものの
においに触れる手
騒がしい白と黒
尾を啄み合う鳥と鳥
地を ....
川に降る星は再び昇り
沈む舟を水紋に覆う
午前三時のまばらな夜灯
出来もしない約束の群れ
腕の羽 腕の花
骨の花 たちたちと降り
違えたもの
失くしたふりで 隠し ....
浪を映した鏡の穴が
さらに空から遠去かるとき
六百三十五秒の結婚
草のはざまに満ちる声
月と痛みと錯視の夜に
左目だけが吼えつづけている
緑と黄緑の静かな境いめ
....
三つの水滴が
顎にいつまでも残り
笑っている
泥の泉をすぎる月
夢の踊り場
夢の重い蓋
彫像 銅像
沈没船を照らす自画像
かがやくものが運ばれてくる ....
うなじから首から目から羽を吹き血を吹きながら辿る足跡
蜘蛛は蜘蛛何も残さず何も見ず虫を喰みただ夏に凍える
ふところの火を手に結び手をひらき何も無い日をかき分 ....
水の悲鳴と
鐘の音が重なり
どこまでも
眠りを遠去けてゆく
骨と木と岩
蒼い火を吹き
砂と浪を照らしながら
海のかたちを描いている
白く広い風景に立ち
....
霧と緑と
夜に立つ巨樹
空と地を埋め
ひとり高く
低い曇の下
平原を
草より低い影がくぐり
最初の雨を引き寄せている
夕暮れのかけら
まとわりつく糸
....
縄にX
白は固形だ滑稽だ
背いたもののための中庭に
誰も赦さぬ喝采だ
短く切った
ばらまいた
どこへ落ちても
ひとりやわらか
死から遠いものほど
....
訪れるもののない中庭に
光が射しては揺れる草
縄で書かれた文字の上
固く転がる鳥たちの声
香りの白さに照らされて
夜が隅々まで見えるのに
それでも窓を閉じてしまう
見えな ....
植えても植えても
分かれるもの
内に 内に
入り込むもの
誰かのためにと始まったのに
そこに自分は居なかったのに
小さく小さく
ひらいたもの
光を見 ....
波打ち際で
傾いたままの計測器
どこからか
聞こえくるうた
鉄で覆われた窓を
灯の音が滑る
陽の前の静けさ
終わり はじまる静けさ
棘の上の
小さ ....
姫 姫 脂
水面の虹
蜘蛛の背の地図
こがねの手足
水紋の下から
空を視る目に
光は廻る
光は跳ねる
夜に満ちる緑の泡が
ひとつひとつ星になる ....
何かが揺れて
降りはじまる雨
透り径 解け径
無数の目を持つ鬼の径
儚い糸
儚い角
光の跡が描くのは
すぐに消え去るものばかり
闇に常に降る破片
水を ....
針ひとつ氷の辺に立ちつくす
夕暮れに黒の交わる底翳かな
ひたひたと夢の終わりに生える藤
凍る夜と凍らぬ月の影ふたつ
断崖は枯 ....
滴を見る
むこうを見る
滴と共に
降る空を見る
景が集まり
ひとつになり
景のなかに立ち
震え 振り向く
狂光 人工
白を引く白
水の背の金
ふち ....
わたしの虹が欲しければ
わたしの虹に触れなさい
羽を持つ虫どうしが重なり
空を知らない命が生まれる
わたしはまだ眠りたくない
赤く錆びた真昼の庭が
消えかけるほ ....
街の廃墟に
ネオンだけが点いていた
残された無数の足跡に
波があふれ 消えていった
人々は荒れ地を進んでいた
空を覆う霧には
ここで終わる
と書かれていた
....
水が水辺を踏みしめる音が
葉と葉のはざまに響いている
終わらぬことを表わす文字が
冷たい場所に冷たく残る
闇が指にひらかれ
光が枝に割れるとき
水は分かれ ....
あちこちから
出てくる猫
ガードレールの羊
見もしない猫
あちこちで何かが倒れ
あちこちで何かが外れ
崩れ こぼれ 流れ
道を路を径を横切る
電 ....
花の樹に重なり径はつづき
風と暗がりを手招いている
花の色とは異なる光が
わずかにわずかにこぼれつづける
径を飛び 径をくぐり
霧のかたちのむこうを浴び
涙の花 声 ....
暗闇にさえ晒したことの無かった泣き顔を
いつのまにか磔られた光に照らされていた
片腕を
炎に溶かしながら
人を喰らう鳥が飛び
死にたい者しか外を歩かない
死にたい者だけ ....
むらさきを
白に刺す
影絵 影絵
すべてが
生まれ来る暗がり
明るく 渇き
荒れ とめどなく
波間に漂う
水はじく生きもの
艦が着く
小さく ざ ....
銀河の高さの
白い霧
夜に架かり
動かない
左の肉の寒さが目覚め
右より細く震える時
月は余計に そして速く
見るものの方へと割れはじめる
光に光をこぼ ....
光の筆で 見えない絵を
見えないまま描きつづけている
明るい雨
明るい雨
行き止まりの家の灯り
斜めの風から聞こえる光
蒼の上の蒼の数
蒼に蒼に染み込む蒼
....
雪の下から現れた枯れ葉が
鉱に
戻れぬ場所への標にかがやき
夢の行方をささやいている
雪が止み
誰もいなくなり
灯は黙り 径は白く
径は 明るく
川 ....
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