曇が降るほうへ
鳥は振り返る
けだものの背が
鏡にたなびく


借物の手が
借物の命を受け取る
こがね色の子が手の甲を聴く
曇のなかの月へ手をかざす


谷底へ ....
あたたかい水が
空の左右を動いている
小さなうさぎの横顔で
あなたが花を見つめるとき


待ちくたびれた蟷螂が
透きとおりながら死んでゆくとき
涸れ川に架かる二重の橋が ....
空の底の渦を見ていた
塩の海に降る
塩の陽を見ていた
岩から生まれる木を見ていた


息を吹き
声を吹き返される
上も下も
冷たい光の径


捕食の森の
 ....
爪は冬にのびやすい
良く水を飲み
多く分かれる
手のひらを埋める群集
白旗と痛みを今日も観に来る
耳もとに流れついたさまざまな木を
彫っても彫っても同じかたちにしかならないので
枕もとに置いたり
うなじにぶら下げたりしていたのだが
いつのまにかまた流れ去ってしまっていた
 ....
金属の筒が
激しく回転している
曇の下に震えはひろがり
鳥は去り 雨が来る


一枚の羽 一枚の影
止まった時の重なりのなか
ひとつの声だけが声に到き
ひとつの滴の姿 ....
つまさき立ちの分だけ
人形は高く 人形は遠く
川の行方 径の行方
銀に銀に 昇るものたち


窓が入った袋のなかから
血まみれの手でひとつを選んだ
曇の多い午後
未だ ....
花のなかの蜘蛛が
雨を見ている
花を踏んでも 花は花のまま
垂直や そうでない水を受け入れている


自制の効かぬ音
道の途中の日時計
色褪せた鍵
水たまりの頬

 ....
ひとつはまだひとつです
ひとつを聴くから ひとつです
ひとつをひとつに捨てるもの
ひとつをひとつにまとうもの
ひとつの上には何も無く
ひとつの径がひとつです
ひとつがひ ....
鼻の上に居座ったまま
下りようとしない救世主
手も足も縛られたあなたが身体を揺さぶり
奴を落として死なせたとしても
誰も非難などするはずもない
あえてむらさきの血を口にす ....
見えない羽の
影だけがゆく
屋根の声 水の壁
土の壁が吐く
赤い花


午後から暮れに降る光
影から影へ流れる川を
何かの波がさかのぼる
がさがさとした
爪のはざま
 ....
夜がひとつ 木の下に立ち
枝のなかの 空と息を見る
川の向こうの海を
音がすぎてゆく


明るい雲が
枝を照らす
火口湖を巡る鉄塔から
光が こぼれ落ちてゆく

 ....
{ルビ凶兆鳥=まがいどり}のように葉は離れ
次々に口もとにやってきて
何も得られず
土に落ちる


爪と貝が溶け
聴いている
海の失い場所から
海の向こうの海を
聴いて ....
死神の愛馬はたいて冬囃子


傘を咬む波の輪かかげ雨を招ぶ   


まぼろしはまぼろしのまま糸車


泣く子から泣く子へ雨を遠去ける


髪の毛の花と同じ空く ....
空気のにおいが変わり
熱と衣は円に舞う
夢を盗む夢を見たあと
共犯者を思い出せない


葉と花の足跡
街を分け つづく
はじまりを知らず ただ
はじまりから来たことだけを ....
望まれてあなたの髪に入る冬



待つことも降ることもなし神帰月



呼べば降る呼ばずとも降る鬼火かな



骨の冬気付かず歩み骨となる



 ....
砂漠が止まり
荒地に変わり
境はうねり
灯に裏がえる


蒼とむらさき
はざまの冬に
窓は影を塗る
ただ繰りかえす


両側を壁に囲まれた
長い坂を下 ....
咲きつづく花となった左手を
冬へ冬へかざしながら
森の上から去らぬ影を見る
同じ翳り 同じ霧
こだまのように立ち並ぶ


漂いは追い
追いは漂う
空が空をくぐるのを
 ....
ひとしずく
ただどこまでも得るだろう
書かれなくなった言葉
階段
奇妙につづく
昼の夢


ある日さらさらと行方は途切れ
行方のままに置いていかれる
花を踏めという ....
背の羽の刺青
岸壁の火
光と冬 足もとに
砕けゆく音


蝋の曇が
水面を覆う
地の足跡は空へつづき
雨と雪に満ちてゆく


暗がり 水たまり 分かれ道
 ....
石像が
石像の霧をまとう
段差 緑
歩き去る傘


右上からすべてを消す光
時計まわりの羽と波
池の水を飲む光
景は影を置いてゆく


流木の窓 墨の窓
何も ....
空の閉幕
地の罵声
ひと足ごとに遠のくひかり
在る風景と無い風景を
それとは知らず 行き来する水


岩が樹を喰い
樹が岩を喰い
涸れ川に落ちる
ぶらんこの街

 ....
ひとつの泡
ひとつの滴
止むことのない曲線に降る
すべての冬


宙を羽織り
気を被り
星の履きもの
季節の嘘

森を作る鳥
岩へ至る岩の径
鉱の曇 鉱の ....
中身の分からぬ箱を
幾度も運ぶように夜は来て
色を静かに塗りかえる


重ねられた隙間が鳴く
地球の裏の蝶
緑へ落ちて
陽を弾じく影


あたたかな不安
永い永 ....
手をのばし聞こえる前に降りる羽



小さな戸あふれ出ぬよう閉じてゆく



見えぬまま目の奥の闇ほしがる手



夜の外また夜があり胎があり

 ....
午後に流れる
偽り無きもの
門の上の鳥
泉は鳴いて


見えない冠のうたううた
影が切り取る街の陰
空から 地から
泡の振動


水にひらく
誰かの手
 ....
金のにおいに緑が混じり
さかなに近く光りにじむ
夜は行き場の無いものを視る
つまみ上げては
呑みこんでゆく















 ....
詩人のふりをしていた似非随筆家がくたばり
みんな瞳をのぞきこんだ
そこにはただ
遺族に裂かれて捨てられた
人生訓もどきの山が詰め込まれているだけだった






 ....
真昼の緑の幽霊が
背を向けたまま近づいてきて
径との境に立ちつくし
街を見つめ 消えてゆく


別のはじまりに みなもとに
柱の列は照らされている
水かこむ枝葉
 ....
秒針に隠れ 見えなかったものが
少しずつ少しずつ見えてきて
たくさんのすがたかたちが
ひとつになろうとしている


窓の外を
泳ぐ熱
誰かの静かな
内臓の熱


 ....
木立 悟(2329)
タイトル カテゴリ Point 日付
降り来る言葉 LXII[group]自由詩413/1/5 16:16
夜と白 Ⅷ自由詩213/1/2 23:58
夜と白 Ⅶ自由詩312/12/27 23:45
ノート(49Y.12・27 Ⅱ)[group]自由詩312/12/27 23:43
ノート(49Y.12・27 Ⅰ)[group]自由詩512/12/27 23:42
午後と双雨自由詩412/12/20 23:52
夜と白 Ⅵ自由詩312/12/16 3:18
夜と白 Ⅴ自由詩512/12/12 0:44
ノート(ひとつ まだひとつ)[group]自由詩112/12/9 22:25
ノート(鼻の上)[group]自由詩212/12/9 22:22
夜と白 Ⅳ自由詩212/12/7 23:58
夜と白 Ⅲ自由詩312/12/2 10:13
昼と白 Ⅱ自由詩412/11/25 21:39
冬と呪俳句312/11/22 23:09
昼と白自由詩712/11/18 21:05
冬とまばたき俳句512/11/16 2:03
夜と白 Ⅱ自由詩212/11/13 22:16
夜めぐる夜 Ⅱ自由詩312/11/9 16:56
冬の雨自由詩312/11/4 22:24
夜めぐる夜自由詩512/11/4 22:22
夜とまばたき自由詩312/10/29 22:13
ひびき めぐり自由詩212/10/24 22:08
ひとつ 千年自由詩512/10/19 10:59
夜と白自由詩612/10/16 10:18
冬と手俳句112/10/11 22:51
ひかり めぐり Ⅴ自由詩712/10/7 22:39
ノート(49Y.10・7)[group]自由詩312/10/7 22:38
ノート(49Y.9・13)[group]自由詩712/10/7 22:37
ひかり めぐり Ⅳ自由詩112/10/3 21:29
ひかり めぐり Ⅲ自由詩212/9/29 8:32

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