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青い青い夕暮れ、イチョウの葉が金の鳥となり羽ばたいてゆき
「おつきさま こんばんは」と絵本の言葉で
三日月指さす この子の目はきらきらしている
月のおそばにいる あかるい星は
燭とり童というん ....
一つの生をたずさえて
一つの詩をたずさえて
赤ん坊から老人マデ
寄り道しながら
僕は行く
)今は何もせずぼうとして
)うねる夏の光を夢見ながら
)美しく深まっていく世界を信じ
....
張り巡らされた枝の投網を
小鳥はすり抜ける
月の形に貼られた和紙が
空の水色を透かし
細い絵筆を並べたような
ポプラの ....
机の上に延びる
湯呑みの影が
お地蔵さんの姿に視える、夜
――もしや
目に映る風景の
あちらこちらに宿る
心というものか
二〇一五年三月一日 「へしこ」
日知庵で、大谷良太くんと飲みながらくっちゃべりしてた。くっちゃべりながら飲んでたのかな。ケルアック、サルトル、カミュの話とかしてた。へしこ、初体験だった。大 ....
間違いなく
誰一人
物心ついた正確な日時を記憶してるなんて
不可能だ
それ以前に時間の認識と言う
重要な鍵を握らなくてはならないのだから
物心を手にした頃なんて
遥か遠くでかすか ....
{引用=鳶}
暮れかけの空
トンビたちは思い思いの弧を描く
風に乗り
風を切り
風を起こし
また受けて
狩りの照準を
時折水平に起こし
淡くたなびく雲の帯を
くぐるつもりか遠く巡っ ....
どうせなら酒色に溺れて、あげくの果てに人生を棒に振ってみたかったな
そんなすくわれようのない生き方が痺れるくらいにかっこよく思えたからさ
その方が文学を志す者の一人としていい肥やしになるんじゃない ....
きるからころから
きるからころころ
キラキラした音が耳の夜に
温かい雨のように
降りしきってくるのを幾らでも 溢れるまで
宝石箱にしまおう
こぎん糸を 祖母とほどいて巻きなおした ....
耳朶の下に隠れていた子鬼がふいに現れPCをシャットダウンさせてしまう。ふり向くと堆く積まれた原稿用紙がある。どこからか蝿が飛んできて、用紙のマスの中に不器用に死んでいく。促されるようにCDの記録層に ....
何一つ思い通りになりません
たすけて下さい
私だってシアワセになりたい
でも変わりに
差し上げられる物は何もありません
そんな都合のいい願い事を
叶えてくれるやさしい神様は
どこ ....
二〇一五年二月一日 「樵」
30年ほどむかし、毎週土曜の深夜に、京大関係の勉強会かな、京大の寮をカフェにしていて、関西のゲイやレズビアンの文学者や芸術家が集まって、楽しく時間を過ごしていたこと ....
{引用=愛憎喜劇}
遮二無二愛そうと
血の一滴まで搾り出し
甲斐もなく 疲れ果て
熱愛と憎悪
振子は大きく揺れ始める
愛も親切も笊で受け
悪びれることのない者
理解できずに困惑する ....
腹底から
ヒンヤリと突き上げて来るモノを
ナイフの刃先に乗せる
熱く紅い血の滾り
)際の際に時を遡行すれば
緑と湧水の大地に到達する
沢登りの記憶の壁突き抜け
唐突にプスップスッ ....
「墓石」
それはいつからかはじまり気が付くと終わる
そのようなものをさがしたら
じつにそのようなものしか無く
それはすべての核部へ到り
かつぬけてゆく風やうたであった
なので却って太陽 ....
暗い部屋の中に閉じこもる事で安らぎを覚える事も少なからずあった
眩しい光の方が痛く感じてしまう自分がいたりした
人はどう生きるべきか
人はどうあるべきか
なんて教科書いっぱいに学生鞄に詰め ....
二〇一五年一月一日 「初夢はどっち?」
ようやく解放された。わかい、ふつう体型の霊が、ぼくの横にいたのだ。おもしろいから、ぼくのチンポコさわって、というと、ほんとにさわってきたので、びっく ....
とおく、とほうもなく、微笑して、口をわらない何かがあって。カーテン留めを はずす事にさえ、充分満足できる何かがあって。そういうものをずっとさがしてきた気がする。そしてずっと見つからなかった気がする。
....
「炎の惑星」
炎暑で痙攣する夏空の真ん中
涼風吹き込む洞窟に
途方もなくでっかい入道雲が
安置されている
SはNのプラグマティックな個室で
SF小説を嘗めたりして
可愛い旧式のロケッ ....
{引用=「はじまりの小詩」
洗面所の
鏡の前に立って
歯みがきをしていると
朝の光が
横顔を洗った
ふり向くと
トイレのドアが笑った
このとき
ぼくの何かは
まだ眠っ ....
{引用=prologue「サティの波紋」
橘の香りする
枕もと
地球が訪ねきて
細いゆびを
こちらに突きだす
ティーテーブルで
フランネルの布がわらっている
(ちがう
( ....
二〇一四年十三月一日 「宝塚」
18、9のとき
ひとりで見に行ってた
目のグリーンの子供と母親
外国人だった
子供は12、3歳かな
きれいな髪の男の子だった
母親は栗色の髪の毛 ....
{引用=予想図}
わたしの人生の尺に
息子の人生の尺はまだ収まっている
わたしの息子への関心は非常に大きく
息子のわたしへの関心はそれほどでもない
{ルビ直=じき}に息子の人生はわたしの尺か ....
凍てつく明けの宵
痛い位強い風の中
揺らぎ燃える炎を見ていた
暗い空気の間で
所在なくぼんやり手をかざしていると
子供の頃に商店街で毎日見かけた
もうこの世にはいない煙草屋のじいちゃんが
....
二〇一四年十二月一日 「イエス・キリストの磔刑」
イエス・キリストが磔にされるために、四条河原町の交番所のところを、自分が磔にされる十字架を背負いながら歩かせられていた。それほど多くの民衆が見 ....
美しくて感度的な景色を見て脳に伝達し認識させるのは眼
どす黒くて汚いものを見てしまうのも眼だ
呼吸を繰り返しながら喉は言葉を声に変換し
個が他へと意志や感情を伝える
口は休みなく活動し ....
やっとたどりついた水死体が
黄緑の棘のある 白薔薇のいばらのしたに
寝っ転がっていて 飛び出た澄んだ眼玉で
悪咳が流行ってから澄みゆく空を
わらうように泣くように眺めている
しずかに
夜明 ....
赤い夕暮れがくると
鴉がぶつかってくるから
フェンスで囲われているマンションの
窓にさらに
夕暮れシャッターをおろして
すき間から覗いていると
数万の鴉が空を覆う
どこからやってくる ....
針葉樹は
規則正しく並んでた。
土に触れると
乾いた音たてた。
スコップは
あっけなくささった。
根が通っていない
がらんどうの土の暗闇へ
かつて
繁茂していたものは
下か ....
祭りのない秋
冬の訪れ
静かな景色と
空模様
途切れる意識の
はざまに浮かぶ
現実のあらわれ
夢の幕
夢でこその現実模様は
頭の奥に遠ざかる
天井の
咲かない花の ....
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