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もしも真夜中がこれ以上長かったら
私は姿を変えて
あの街の塀の陰へ急ぐだろう
深海の鯨の死骸のような、
黒塗りの木のそばで、
優しい月を見つめ、
静かな排気のバイクで、
蛍光する速度制限 ....
私たちは望んだ
林檎の木のやせた小さな実を
うなだれて実をこぼす廃れた窓辺を
細い水のはねる汚れた低い蛇口を
あの庭から私たちは始まった
私たちは紫の実をつける香りのよい果物を欲しがった ....
まっくらにしたよ
虫の声
とぅとぅとぅとぅとぅとぅとぅ
るーるーりーりー
とぅーとぅーららららら
ふぃーーーーーーーーーー
近所のちいさい子のわらいごえ
水溜まりの上を車が走 ....
なにもいいことが浮かばない空に雲ひとつ
今日の初めの一歩は
泥濘んだ土の上
靴が滑るのを必死に留まった
右足が自分の意志に逆らって
少し前に進む感覚は
ほんの少しでありながら
驚異であると同時に
快感さえも感じられる
....
雨のおとが体に刺さって下に抜けて行く
その先のまちで
男が酒を飲んで煙草を吸い
女が風呂に入り石鹸の香りを嗅ぐ
花は季節に散る
どうということもない
あたたかな食卓が
どれだけに ....
花火に
なりたかった
アタシは
果物が大好きで
ゆえにアタシは
果物で出来てると信じてたので
花火になって
夜空で開花すれば
イチゴや
サクランボや
リンゴや
マンゴーを ....
たぶんそこには 無 すらなかった
透明 すらなかった
そのまなざしは父親には赦された
だけど母親は女の子だったから赦せなかった
のだろう(たぶん)自らを
#
無、を得て ほし ....
かん高い声の騒ぐ言葉が部屋中を這いまわっている。声の主は女と女なのだが、女と女は椅子に座っていて向かい合ったちょうど真ん中にテーブルに載った紅茶とポッド、そしてナイフで取り分けたそれぞれのビクトリアサ ....
キルトケットを被って丸くなっているといつも聴こえてくる
おやすみ小鳥
ほっとして意識が遠のいてゆく
ひかりを感じて目を開けるといつも聴こえてくる
おはよう小鳥
生きている私を肯定 ....
父は生きる 沈黙の中に
母は語る 夢のような言葉
私は横たわる 足りない絶望を枕にして
川の字になった 冷え切った水槽の中
打ち上げられた魚を三匹
飼って眺めて笑っていたのは ....
甘い歌に惹かれた虫を
ぺろりと舐めとって、満足げにわらっている
あなたは可愛らしくて
わたしはどぎまぎした。
金の硬い羽よりも、ふわふわの白い羽よりも
朽ちかけたこの羽を愛してくれたから ....
たとえば読んだ本がつまらなくて
費やした時間を
ただ無駄なものに感じたり
描きはじめた絵が完成しても
なんだこんなもんかと
感動も無かったり
いつも通う喫茶店のコーヒーが
....
針の翼
夜の屋根
緑の雨が
楽譜を照らす
街の起伏
夢のつづきの夢ばかりつづき
目覚めも指も
夜になれない夜をこぼす
葉の陰の硝子
雨の奥の太陽
扉 ....
身勝手と言う言葉が嫌い
身勝手=自分だから
でも自分のことは嫌いじゃない
芋
あんまり得意やないんやけど
て とむ がゆうて
しゃあないなぁ
て じむ が
箸をのばしてきよる
なにが 違たんやろ
せやなく
なんで変わらへんのかったんやろ
誰かの思い ....
満月 あなたはひどく怒って
穴だらけの夜を叩いた
道路や橋は
眠ったふりをした
夜は
しゃがらんしゃがらん
叩かれるたびに
穴を埋めていく
みんな起きていた
あなたがかなしそうに怒っ ....
まずインストールしない
そして絶対にログインしない
一度ログインしてしまえば それは、死を意味する
きみはあたまが悪くて パスワードをいっぱいおぼえられないから
体中にパスワードの刺青を彫 ....
あなたはそこに立っていた
無くなる事のない
花束を抱えて
何も言わずに微笑み
太陽を背にしながら
あなたは
その花束を抱えていた
擦れ違う見知らぬ人にも
一輪 一輪 花を差し出 ....
ある書物は私を受け入れ、私の居場所を示している。
そんな時私の心は大きく開き、静寂の中の喧騒にただ驚く。
私の頭上に雲はなく、大地の裂け目では清冽な泉がこんこんと湧いている。
私の精 ....
部屋のなかの風速はマイナス
まるでフラスコの底で
蹲るだけの異邦人
となって私は偶像を失い
祈り方を忘れる
(遠ざかってゆく)思い出という名の
私を掌ってきた漣は
枯渇したみずうみで途方 ....
油まく模様のみなもには色々がくる
熟れた椅子の脚や膨らんだ仔ねこらが
うつした空を破りながら流れてき
こまをなくしたバイオリンなど
海にとどくより岩くぼに憩う
そろそろ沈むことなど気にも ....
山青なり枝芽つき
川縁に掃除機が壊れてあり
もう駄目やった三月とくたびれた俺
要塞に割り箸持って引き籠り
どないにでもなる
西陽を庭で吸いながら
終わった夢について考えると ....
蟻の角はまだ あるのだろうか
遠吠えや 躓きや 読みかけの頁は
まだあるのだろうか
目をあけて見やる身辺に
ころころと付属する色色を
憎んだり愛したりもせず
ただそれと知って引きず ....
約束の未明に私は夢のなかだったかもしれない 目覚めると
テーブルの上のマグの位置がすこし違う気もする
さびしさを雪ぐために顔を洗い
鏡をみて 謝るように確かめてから
さびしさと一緒に部屋に戻り ....
弱き心を西陽と吸って
道すがら酒に酔っていた
雨上がりの川は強く荒く
木々を幹ごと攫っていった
アスファルトを抉る竹の根と
路傍に窄むアサガオと
君らがいつか開くとき ....
私は中古品
でも 走れたらいい
ライトもLEDじゃなく 豆電球の橙色
それでも 三メートル先 見えたらいい
けれど五メートル先の人に
私の足は切り刻まれ もう走れなくなりました ....
ノイズが大好きです
古びたアルミ鍋の底とかを
フォークでひっ掻くと
眼球に
剃刀で筋を入れられたような
感触がキッチン中に響き渡るの
きいぃぃぃぃぃぃぃぃ
っての
好きなんです ....
「追憶/墓荒らしの憂い」
過去は下に沈んで
サラサラと真新しい記憶が
その上に積もる
一人ベランダでタバコをふかしながら
墓荒らしのように
記憶の地層にスコップを入れる
あんなに ....
気が付けば四人で過ごす秋が来た。
まだ早すぎる落ち葉が山荘までの道に降り積もり
我らの道を優しくふさいでいる。
後ろには我らの足跡が刻まれている。
山荘に入ると、未だ夏の残 ....
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