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壊れた羅針盤で
/これがこの詩の一行目ではない
壊れた羅針盤で一針一針丁寧に縫い付け
詩人の口を塞ぐ
孤独を売りさばき建てられた黒い城
その地下室で真昼に暗殺された
一羽の青い鳥に対し何を ....
誰かによってすでに忘れ去られ
行き場を失ったおもいでが
枯葉のように不規則な落下をして
ぼくの背中に貼りついた
軒の低い屋根
が向こうまで続いた商店の群れ
の隅のうす暗がりからやはり
....
時空のゆらぎを感じて漂う心情。
ある時は旅情となり、またある時は慕情となる。
孤独に縁どられた私の過去の墓標の前には、
今はもう懐かしさを感じさせるものばかりが並んでいる。
私が嫉妬を ....
生き恥を晒し合って空が青い
半身にびっしり墨を入れたあなたが
猫みたいな目で優しく笑いながら
そっとわたしに触れる
あの日のわたしは
たったそれだけのことに
びくっと肩を揺らして、
思わ ....
帽子はあたまのマスクです
マスクはおくちの帽子です
そのはずなのにどうしてか
帽子ほど
マスクは選んでもらえません
マスクほど
帽子は聞かせてもらえません
....
濡れたアスファルトに夜が映る
泣いているような夜の顔
ネオンの化粧が滲んで行く
綴った言葉は今朝もまだ濡れていた
光と音/朝のピンで留められたまま
すべての顔が微笑んでいるわけではない
....
むしり取られ山積みされた路傍の名も無き草
人は一括りに雑草と呼ぶ けれど
一本一本取りだし丹念に調べればたいそうな名が有って
いや 持たされて 力芝 車前草 藪枯らし 葛
ああくず 葛餅 葛 ....
{引用=
少しためらい
端座する
永いあいだひらくことのなかった
古い三面鏡
鏡のなかに{ルビ生=お}う
まよいの雪雲は、ひろがり
僕は、人らしくあろうとし、
ど ....
きみの血で作った目薬を
ぼくの目に垂らすと
世界は色を失って
ただ均一な赤色になる
きみの血で作ったお薬を
ぼくの腕に注射すると
世界がは色を失って
ただ平静な水色になる
....
枕が変わった 天井の地図も変わった
独り暮らしの寝室から
鼾の合奏する五人相部屋の寝室に変わった
その間に世間の便りは
うねりの激しい潮騒となっていた
看護師の足音に神経を消耗され
ま ....
むかし、
最初の言葉が毀れたとき
つまりひとりの身におとずれるさまざまな死の
最初の一日に触れたときに
その裂け目から吹く風を迎えすぎたのだろうか
あるいはまだ
ふさがっていなかったの ....
くすりが増えてカバンが重たい
ボケという素敵な表現力
ケという素敵な表現力
という素敵な表現力
いう素敵な表現力
う素敵な表現力
素敵な表現力
敵な表現力
な表現力
表現力 わたしをバカにし ....
いつも言葉の足りない弟は
最後の別れの時も
死に顔を見ては泣き
姉の最後の痛みを知っては泣き
もう何の組み立てもなく
嗚咽しているだけの
図体ばかりが大きな
巨大な涙袋と
なってし ....
おんなが笑っている
高笑いでもなく微笑みでもなく
氷雨に打たれ空を見上げ
おんなが笑っている
おんなの頬を伝うのは
雨粒だろうか涙だろうか
痩せたおんなだった
背の高いおんなだっ ....
しなしなと
深夜のラジオが
ひなびて曲を鳴き奏でる
くるくる風括る
晩秋は
始めとも終わりともなく
じりじり
砂を嚙む
ときの流れのとどこおり
いつ ....
山と山のそのむこうの谷をも なだらかに結んでいるのは、
空の高さと広さに あかるい ふしまわし
カッコー ( の声がするたびに わたしのこころに 閉じカッコをつけてみる
カッコー ....
{引用=
糸を吐く
吐きつづける
安住する繭を紡ぐためでなく、
時は、裸形の
いつわることのない
思秋期
無月の夜に さまよい
眠りにたゆむ街に
星の つつし ....
わたしには すきなひとがいるんだけど
とってもとおくにいるから
なかなかあえない
真夜中に
そっと 進み出れば
もしくは
わたしには すきなひとがいるんだけど
....
スキップが出来た日
ひとりの道を楽しむ会の
仲間になった
逆上がりが出来た日
さかさまを楽しむ会の
仲間になった
しびびーが出来た日
くさむらを楽しむ会の
仲間になった
....
手遅れのベルが鳴っている
何でもなかった一日が、
特別な日になってから四年が経った。
君の笑顔は夏の向日葵よりも眩しくて、
卑屈だった僕の心を照らしてくれた。
僕の悲しみは悲しみでなくなり、
母なる大地 ....
僕は「時」が欲しい
細切れにされた時間
スマートフォンによって刻印され、タイムカードによって切り取られた時間
そんな時間はもういらない
誰もがFXの一分一秒の落差で
天国 ....
段違い平行棒と
サーカスの空中ブランコが
一瞬にして 重なる
ふわり 浮き上がる様は
真夏の 人魚
いつもは 飛沫が お友達
たまに 渋木を 恋人にして
日々 励むの
い ....
べランダで
煙草を燻らせながら
空を見上げれば
今夜は
冬の星座が良く見える
風も無く
空気が澄んでいるようだ
道に迷ったら
ポラリスを探せばいいと
昔のドラマで言っていたことを ....
デスノートにせめて腹上死と書いてやる
通り縋りの街に
何処か懐かしさを覚えて
忘れていた記憶を思い出そうとする
ふと浮かんだ笑顔に
少し胸が痛くなるけれど
明日のお天気のことを考えてみよう
幸せは無味無臭だから
気づ ....
思い描いた未来なんて
無意味なまぼろし
窓のガラスに描いた夢
流れ去って行く雲を数えて
惰眠を貪っている内に
ひとり丘に取り残されて
春かと思っていたのに
秋風が立っている
私を育 ....
おやすみなさい
今日の日は過ぎた
明日は親知らずを抜きに行く
二週間前に予約して
あっというまに
今日が来た
虫歯になっていますから
治療したとしてもどうせ
使いみちのない歯だ ....
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