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耳から咲いたうつくしい花の声たち
眠っているときだけ、咲く花がある
あなたはそれを観る事はないだろう
生きた証し、誰かの
言葉に耳を傾けた証し
母さんの声は咲いているか
愛しいあの娘の ....
古代はひがないちにち風を吹かせて
日捲りはやがて春を忘れてしまうだろう
肩甲骨のあたりの憂いは上等な娯楽あるいは
ながれついた憎しみをも拭い去ってしまうのかもしれない
あの娘はときどき ....
二〇一五年九月一日 「明日」
ドボンッて音がして、つづけて、ドボンッドボンッって音がしたので振り返ったら、さっきまでたくさんいた明日たちが、プールの水のなかにつぎつぎと滑り落ちていくのが見 ....
真夜中の台所で 小さく座っている
仄暗い灯りの下で湯を沸かし続けている人
今日は私で 昔は母、だったもの、
秒針の動きが響くその中央で
テーブルに集う家族たちが夢見たものは
何であったの ....
思い出すことは出来ても
その過去に戻れない
セピア色した思い出の数々
その場所の匂いや雰囲気が
私に強く伝わってくる
撮った写真は時間が経てば
どうしても色褪せてしまう
嫌な ....
まるで上のが落ちて来そう、
星も一緒にです。
それを{ルビ享=う}けるのは、
{ルビ蟋蟀=こおろぎ}のしょっかくに触れる惑星大のくさ。
いちめんの{ルビ叢=くさむら}は、
イカ釣り漁船の ....
おとこが夜中にやってくる
そのおとこは生まれたことがないのである
いっしょにゆこう
どこへ
とおくへ
くちびるでかすかに笑っている
いそいそと身を起こして
服を着て出ていこうとすると
....
私は風
じゃなくて
空から落ちてくる
水滴の類い
じゃなくて
真っ青な空で
吠える太陽
である筈がない
かと言って
私は幕末の若いサムライ
或いは
サムライが恋慕する商家の美 ....
降り止まない雨が
心の奥底に言葉を溢れさせ
魂の隙間から
零れ落ちるような光滴たち
無数に煌めき散逸する
終わらない旅路の果てに
訪れるもの一つ
想い描けないなら
何億もの地上の眼を掃 ....
{引用=位相}
90°進むと生まれいずる者の虹
90°遅れると死に去る者のハリケーン
{引用=ガイア理論}
アンコールワットのほとりで佇む老爺
{引用=土間の麒麟}
....
手のひらの丘を
橇に乗ったヒグマが滑って行く
なんとなく
ユング派にかかりたいと思う
未来の博物館では
ヒトの剥製が祀られるだろう
良い詩をたくさん知っている
ぼくは不眠症だ ....
{引用=破産}
意識の定点とその円周上を
時の天幕が覆っている
誕生のS極から
来るべき死のN極へ
時間の一方通行は意識の一方通行だ
後悔のE
憧れのW
キョロキョロくるくる回転し
....
題名を思いついてもその先何も思いつかない
これはよくある事だが非常に困る
汚い例えだが
便意をもよおしてトイレを目指しても
いざ個室の中に入り囚われの身になっても
便器に裸の尻を乗せて力 ....
そうだね、
戦争があったんだ。たしかに。
私の血の中に流れる色のない祖母の声は、
終戦の真っ青な夏空をしている。
春はどうだったろう。そういえば戦争の春のことを
聞いたことがない。春 ....
二〇一五年八月一日 「恋」
恋については、それが間抜けな誤解から生じたものでも、「うつくしい誤解からはじまったのだ。」と言うべきである。
二〇一五年八月二日 「ディーズ・アイズ。 ....
トルソの夕焼けに
切断された四肢の休息を
みるものはない
石理から拭きとられた水も
砂漠をこえ ひとをこえ
高低をのみほしてきた
砂時計はアシンメトリーである
あらゆる風と雲 ....
海よりもとおい海の
浜辺には声の真空があり
水と石だけがきざまれて在る
列島の等高線をきりおとして
おんなたちは口々に
あれが星の曲率なのだとささやく
だがひとえに言ってしまえ ....
また怒られてしまった
しかし、忘れてしまおう
いや、忘れられるものか
悟りを開かないと出世できんのだ
出世できんと生活出来ねぇんだわ
ぼくはさんざん血を吐いておりまする
でも、解脱 ....
子犬だったら、可愛いだろう。
言うことも聞くだろうし、連れて歩けば皆、振り返る。
家人だってまんざら嫌な顔なんかしない。
それにつけても血統書付き。
自慢のタネだし御犬様だってそれを誇りに ....
ガソリンスタンドの先の路地を入ると
そこは一方通行路
いつもクルマで走る
路地の両側には所狭しと民家が軒先並べてるけど
途中右側に小さな産院の駐車場と建物がある
そこは助手席に座っている嫁さ ....
土日で三万損するところだった
こんなときのルメール頼みで
カフェファラオの単勝に
一万ぶっこんだ結果
やっとトントンに戻すことができた
あー、これで女房に怒り狂われることは
回避できた、良 ....
人が笑っている
人も笑っている
空は何もしない
近所の人が歩いている
犬を連れている
性別は男とオス
海は遠い
(午前6:53 · 2021年2月3日·)
椅子が眠っている ....
十八九の小娘に惚れた
俺三十五歳
馬鹿の見本か
失うもの
何も持ってないと怖いものが何もなくなるって
まさに俺の事か
土台最初から相手にされる訳ないのによ
人に自慢できる ....
開けた窓から雨の匂いが流れ込み
濡れていく遠い森のざわめき始めて
貴女の声は透明な水底に沈んでいく
ああ、
こんなに澄んで囁き交わす時ばかりなら
詩を書くことすら要らないだろうに
僕は ....
胡桃の肉体が仄めかす
暗闇の膨らみの
血の残響に誘われて
月を覆うほどの錯視の群れが
歌う子宮を追い求め
少女の髪に咲くような
まろぶ光におぼれ死ぬ
裂かれた翼の間の道を
神の ....
二〇一五年七月一日 「I made it。」
あ
かるい
ステップで
歩こう
あ
かるい
ステップで
歩くんだ
もう参考書なんか
いらない
問題集も
捨てて ....
脳みそだって量より質なんだよな
毎日毎日毎日
頭使いまくり
脳みそだって品質落ちるよな
履いてた靴の底がすっかりすり減ってた
その事につい最近気付いたよ
靴裏の滑り止めがなくなって
....
橋本聖子の父善吉が
マルゼンスキーという名馬の
馬主であることを知る人は少ない
もちろん、マルゼンのゼンは
善吉のゼンだ
では橋本聖子だから
スキーではなくて
マルゼンスケートの方が正し ....
雲の切れ間に青空が見えても
青空が切れてその先に別の世界が見える事はない
いつも何かを期待してるけど
日々は過ぎていくばかりで何も変わらないんだ
いいかげん飽きたな
って思い続けても ....
腐乱した犬の
うつくしい歯が
その人の口から語られた時、
男根たちは騒然となり
子宮たちは安らいで
世界の終わりを迎えていた
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