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あまい痛みを伴う夕暮れ、
カーテンを閉め 鍵をかけた部屋にふたり
あなたはあたしに一言言った。
真っ赤に染まった耳、伏せたまつげ、
握りしめた拳、
離した くちびる を、ひらいて ....
やっぱり残業してから見舞いに行くと
二十歳の彼が仕事を続ける
おじいさんの入院で家族も忙しいのだろうが
今 自分が抜けたら仕事も大変だと見極めた
この二年近くで働き 大人になったなと思う
....
都会に迷い込んだタンポポの綿毛が
アスファルトの上で花を咲かせた
道行く人は忙しなく
誰もその存在に気付かない
それでもタンポポは咲いていた
人に踏まれても風に吹かれても ....
幸運の女神は前髪しかないって
どんな髪型だ
女性として
いかがなものか
というのも今
詩のしっぽつかみ損ねた
また
行っちゃった
詩って
あの、その、あれなあれ、だから
タ ....
胸いっぱいの誉れのためにも
きこえないふりを
しなくてはならないが
よけいきこえてくるので
いたたまれなくなる
逃げ出しなんかしない
涙もださない
汗すらださない
靴底を地に押 ....
硝子の風が
きりりと秋の粒子で
二の腕あたりをすり抜け
寂しい、に似た冷たさを残して行く
野原は
囀りをやめて
そうっと十月の衣で包まれている
わたしは
それを秋とは呼べず
....
先週皮がめくれてた
お爺さんのお尻の傷を
トイレの時に確認したら
するりときれいになっていた
看護婦さんもやってきて
「先週塗ったわぜりんが効いたのね
わぜりんは、いい奴 ....
窓際の椅子に座り
私は外の静けさに身を任せた
夜風はそっと心を撫でて
私を深い場所へといざなった
心の破片はすべて異なり
それはまるでジグソーパズルをはめていくような
また毛糸を編んで ....
今日は僕の家に泊まる?
「うーん・・・」立ち止まって考える
気を利かせた車が 僕たちの前で停まる
でも 考え込んだまま 止まったまま
車の運転手の不思議そうな顔
....
いだいてくれていた
ちからがぬけていく
だれのまえにもでない
ねいろで
いとしさで
ふさいでいてくれていた
もういいよ
めをかくしてくれていた
いじのわるいてが
なきむしのように ....
夏の名残を雨が洗うと
淡い鱗を光らせたさかなが
空を流れ
ひと雨ごとに秋を呟く
九月は
今日も透明を守って
焦燥のようだった熱や
乾いた葉脈を
ゆっくりと
冷ましながら潤ませ ....
水は
どんな器でも
形のままに入る
わたしはいつも
誰かの器に合わせず
濁った水を
入れすぎたり
足りなかったり
もしもわたしが透明ならば
誰かの器にぴった ....
薄紙は
とても破れやすいから
私はいつでも
言いなりになる
ことばの数だけ
肌を重ねて
ほんとうの恋は
最初だけだと
いつのまに
私は気付く
あとは
薄くなぞるだけ
....
目の前にいる誰かを
幸せにできぬ自分など
無くなってしまえばいい
わたしの消えたところに
もっと優れた人が現れて
そこは{ルビ日向=ひなた}になるだろう
もちろん分かっていたの
もう、さようならなんだっていうことは
あんなに熱くはしゃいでいたのに
最近はすごくよそよそしいし
ねっとりしていた風も
そよそよ
蝉も鳴かなくなって
ほんとう ....
ぼくには声はないよ
さけんで さけんで
声はきこえなくなってしまったよ
ぼくは、うたえないよ
ただ、卑屈な笑みしかつくれないよ
正直、今日も死にたいと思っているよ
病気と言って ....
後退する夏の左腕をつかまえて
さみしがる頚動脈にあてがい
しずかな熱をからめる
満たされては退いてゆく
寝息の揺りかご
いちばん弱い部分は
あずけたままで
届かないエアメールの
....
ニコニコと笑う君も 好きだけど
口とがらせて怒る君も 好きなんだよ
怒った顔も可愛いから
ついつい怒らせちゃう
僕を信じてる君も 好きだけど
僕を疑ってる君も 好きなんだよ
安 ....
真っ直ぐな棒は
水面に
真っ直ぐに写らない
水は集められた檻の中でも
ゆらいでいて
少しの風にも
ついて行く
熱さがよれば熱くなり
冷たさが触れれば冷たくなり
真っ直ぐだ ....
青や緑の絵の具を
うすくのばして
あの透明をあらわそうとして
さっきから
なんども失敗している
{引用=
手をひいて
石を渡る
ぬらりとした光沢に滑らせた足を
からだごと、ぐいと引き ....
雨音が
逝く夏を囁くと
水に包まれた九月
通り過ぎた喧騒は
もう暫くやって来ないだろう
踏みしめた熱い砂や
翡翠いろに泡立つ波も
日ごと冷まされて
さみ ....
居酒屋で
ビール片手に酔っ払い
まっ赤な顔して
柿ピーの一つひとつを
座敷畳の隅に並べ
目尻の下がった
頼りない
顔をつくる
「 なんだか俺みたいだなぁ・・・ 」
....
明け闇に稲妻
白い栞のように
風は慌ててページをめくる
朝を探している
朝
井戸につるべは落とされて
鏡が割れるように
宝石が生まれるように
しぶきは上がる
あたたかい頬 ....
なにかが欠けていたのだろう
あなたに伝えること
いま
全裸を隠そうとしている
この月のように
僕があなたを
少しずつ愛していった
はずなのに
あなたは
不信で覆われていく ....
かつて潔く閉じた手紙は風を巡り
伏せられていた暦が息吹きはじめている
朽ちた扉を貫く光は
草の海を素足で歩く確かさで
白紙のページに文字を刻みはじめ
陽炎が去った午後に、わたし ....
気まぐれな
夏の恋に傷ついた
氷の心
{ルビ尖=とが}った氷が
音も無く溶けゆく
晩夏の宵
やがて
秋の虫の音は
一人きりの夜に
無数の鈴を
鳴らすだろう
....
手をのばせば はしごはゆれて
いたいけな木の棒が
うながすようにみつめる
登りはじめた私の背には
羽と
足は 鳥のようにまがり
くちばしが言葉をなくして
指が忘れていく世界の風
....
旅だとか
なんだとか
の前で
ぼくは無性にくすぐったくなる
ここは星がきれいだ
ただ、それだけでよかった
くちにする言葉なんて
くだらないことばかりで
ハンドルを切り損ねた ....
コッペパンを3分の1
残して 思案する
枝豆とチーズを少し
小さい親指で ぎゅぎゅっ
と 押し込んで
可愛い子 口角が少し上がっているね
『よくできました』◎
「ちゃんと食べ ....
やめたいと言うと
やめちゃいなと君は言う
そんなに簡単じゃ無いよって言うと
いつも簡単だよと返される
いつか君は僕をやめるのか
いつも簡単みたいだから
とても恐ろしい
一先ず君の胸に耳を ....
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