やわらかな文字が降りてくる
葉の裏側の粗い緑に
次々と染まり 降りてくる
朝の方位へはばたく鳥の
青い青い羽の炉心へ
影はたなびくように落ちてゆく
午後の淵 ....
05:50 目覚ましが鳴る
ピッピッピッ
頭を押すと目覚ましが止まる
ピッ ピッ ピッ ピイ ピイ ピイ
小鳥の囀りにかわる
ぼんやりした靄をつきぬけて
06:00 妻が起きる
06 ....
絵描きの描く肖像画は
どれも本物と見間違うほどの
素晴らしい出来映えだったが
どの絵からも
顔の構成品がひとつだけ欠けていた
片目の瞳だったり
上唇だったり
耳たぶだったり
必ずどこか ....
*
少女からはみでている
魂のゆらぎは
舗道のプラタナスの
青い影の上を
過ぎる一匹の黒猫
そのしなやかな足音は
遠く離れた街の路地で
こだまする
*
透明な空 ....
去年の子猫は
もうおとなになった
おととい
二匹の子猫を
産んだ
小高い丘の
天文台の脇をすぎる
風のように
夢はいつでも
ゆっくり醒めてゆく
この惑星のこのあたりはそろそろ晩秋で
赤く色づきはじめたハゼの葉が
窓の外に揺れ
この惑星のこのあたりはそろそろ夕刻で
暗くなってきた室内に
パソコンの画面がまたたき
またたき
....
庭が熱くて 幾重もの春がはりつくものだから
わたし 困ってしまっていたわ
被子植物のウロが溜まった真昼で硬くなってゆくのを
我慢して見ていたのよ
それでもわたしははらえないから 業者に頼んでお ....
☆清岡卓行「子守唄のための太鼓」の場合
ご要望にお応えして清岡さんでいきます(笑)
と決めたものの、待てよ、そういえば、この詩人の作品、まとめて読んだことがないのでは ....
曇り日の
凪いだ海に漂う
うつぶせなサーファー等の上に舞う
アホウ鳥の{ルビ呑気=のんき}な飛翔を眺めつつ
{ルビ理由=わけ}もなく
「にたぁ」とほほえんでみる
僕は
もう
疲 ....
ひらひらと
一年の思い出を
ひっさげて
木の葉は空へと
舞ってゆく
どこかの星へ
報告をしに
ス、べる
ファスト、ぶ
レク、ファスト
モゥロウ
ティーン、ン
ウ、える、コ
ンドル、ド
ルフ、エンド
ルフィン、グデビ
....
おとこおんなおとこおとこ と
四人の子らが次々生まれ
奥様大変ですねえ と
まわりのひとはみんな言う
五歳 四歳 二歳 三男坊は七カ月 よくもまあこんなに連れて
はるばると来たものですね ....
形。
私はこけしに似ている。
木の机に こけしを置くと
転がり落ちそうだ
箱根で君が
「欲しいの?」と問うた
木の 指輪
欲しくないが。
きっと こけしのまま
おばあさんにな ....
おやすみなさいとゆめをみない
おはようとめがさめない
こんにちはとてをふれない
さよならとふりむけない
しらないうちにわたしは
がらがらごえのばばになり
ひとりきりでさくらのしたに
ねむ ....
人はなぜ恋文を書いたか
体内の炎を紙につけて燃やすため
でもあるが案外
紙と鉛筆がそこにあったから
近頃では
恋人たちはテレホンカードを消費する
電話器は二十四時間鳴りっぱなしで
体 ....
夕焼けに
あなたをひたしておいたのは間違いだった
体の重みが邪魔でならないというように
身をよじって窓辺のベッドに横たわる
へそのくぼみから腰骨
肩甲骨
うで
まるく光る乳房
あごの下 ....
どうしても白熱灯でなければいけないのです
冬はあたたかいし
心なしか 黄色く胸がおどり
照らすと天気の記号のように半分になるので
そう こわれものはやわらかな
空気の入ったビニールでつつ ....
金が無い
働いてないのだから
当然なんだが
何しろ働くと言う事を
やめてしまって
何にもしたくないので
寝てばかりいるので
このゴミだらけの部屋で
自分までも腐ってしまいそうで
....
料金が足りませんからと
窓口の向こうの若い局員は不機嫌そうな顔で
茶筒みたいにふくれた封筒をつき返した
そりゃあ、足りないのは僕の落ち度ではあるし
深夜勤務の彼にはちょうど今頃が
一番眠たい ....
くやしい
と言って
涙を浮かべる
君を見ていたら
「くやしい」の
「く」も
「や」も
「し」も
「い」も
全部消してあげたくなった
おまえが
愛しくて愛しくて
愛しくて愛しくて
何度も何度も
何度も何度も
抱きしめたこの手を
振る
いまはただ
雨が降り
石にしみるまま
あけないおくで翳のかたちを追っている
ひがしの空だけが
ゆるやかに
くちびるをひらき
すきまから虹彩をのぞむ
わたしは
まるい眠りを
かきわけ ....
「エロビデオのセックスってさ、こう、なんでいつもオトコはみんなマンガの書割みた
いにのっぺりと影がうすいんだろー? ・・・オンナはオンナで自分の快楽ばっかに集
中してなんか機械みたくアヘアヘ鳴 ....
青巻紙の黄巻紙っぷりのほんの少々右寄りになったあたりの
まるっきりとびっきりのあの頃もなんもない
夢見がちだった昨日のことさ
4階から飛び降りたあいつのすねだったところから
爪楊枝みた ....
滑車の前で 光を背に
腕をひろげて 動けずに
崩れ重なる門の残骸
霧を貫く鉄の橋から
したたる滴を聴きつづけていた
霊はいて
雪の地に立ち
応えを受ける
....
ハンバーグ屋さんで出てくる、
付けあわせのサラダの中のミニトマト
へたをとって横によけると、
小さな亀みたいに見えた
こういう亀がもし本当にいたら、
どこかの国の人達は、
から揚げか何 ....
赤い辞書
に
君の持っている赤い辞書に
夕焼けは
挟まれている
もう長いこと挟まれていたので
辞書の文字が夕焼けに溶けて
世界がぼやけて
君の世界がぼやけてゆく
のを見ている ....
昨晩瞬いていた満天の星屑が
ねむってた間に降ってきて
昼の七里ヶ浜の海にきらきら光る
昔々
女がりんごの実をもいで
男に蜜をあげました
人祖の罪で失われし楽園も
秋晴れに江 ....
1 クロッキー
齧りかけの林檎を
はじめて描いたのは
一三歳のクロッキーで
もう
二〇年も前のこと
その後
デッサン
水彩画
詩の入ったポスターカラー仕上げ
油絵
完成した絵 ....
雑然とした東京の
とある駅前の話
そこにはリサイクルショップと
ラーメン屋しか無い
他の店もあるにはあるが
とにかく目立つのはそればかりだ
そして
そこに行き交う人々は
誰もが幸せそう ....
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