不器用であることは
 罪ではありません



林檎の皮をどれだけ長くむけるだろうかと
無邪気にはしゃいでいた頃に

途切れてしまった命はいくつ
あの赤い肌をすべっていったこ ....
葉っぱの落ちた木のように

風が吹くたび
小さな声をあげている

ゆっくりと息を吐きながら
それでも溜め込んだ本音を飲み込んで

掲げた両手の先
どこまでも遠い空を眺めれば

「 ....
雨には匂いがあると思った

昼下がり
蒸しあがった空気と入れかわるようにして
突然降りだした雨の
湿った冷気が部屋を満たしてゆく

「雨だ」と
呟いたかどうかはさだかではないが
そん ....
春にまいた種が
いつのまにかもう
つぼみをつけていたことに

気づいていなかった

「先生と会えるのは今日が最後なんだよ」と
ひとりの生徒が言ってきた

本当は
知っていた

 ....
知っている

野生の生き物たちが
自らの意思で立ち上がれなければ
どうなってしまうのかを

ふるえる膝を押さえながら
重たい身体を支えようとするとき
昔見た象の瞳を思い出した

陸 ....
六畳一間のアパートに
むりやりつめこんだそのベッドは
ほかの家具の置き場をうばって
ずいぶん偉そうに横たわっている

そんな君が風邪をひいたというので
お見舞いにいったのだけど
座る場所 ....
「先生のじゅぎょう、好きだよ」

その言葉が眩しい
たとえそれがしわくちゃの
紙切れに書かれた言葉でも

ノートの端をちぎって書いた
ひらがなばかりのその文字が
いまの僕に ....
何か大切なものを
過去に忘れてきてしまった
そんな気がする

握りしめた手の中には
小さな鍵がひとつ

それが何の鍵なのか
それも思い出せない

わからないまま街を歩いた
見覚え ....
空と海とが
おなじ青だと思えるほどの
白い砂浜だった

波打ち際には
貝殻がおどっていて
それにあわせてはしゃいでいる
君がいた

スカートのすそを気にしながら
そ ....
ノートに書いた文字が
はしから消えてゆくのと
あなたは不思議そうに
ペンを見つめていました

言葉がかわいそうだから
もうこれ以上は言わないのと
あなたはすっかり黙って
消えた文字を追 ....
そんなにきれいに泣けるのは
君がまだ子供だからなのか

黙した瞳から
その瞳と同じくらいにまるい
ぽろりと転がるように頬をかける
涙が

辛かったんだ
辛いって伝えるた ....
噛み合うことのない歯車のように
孤独は在り続ける

カラカラと輪っかの中を駆けている
小さな身体を懸命に動かしても
輪っかは空回りするだけで

前に進むこともなく
ただ同じところを回り ....
世界があまりにひろいので
大陸のかたちをしたビスケットにして
電子レンジでチンしてやった

ひとつひとつの大陸を
口の中でかみくだいて食べた
僕はまだ日本という国しか知らない


 ....
伝えたいことを一気に打ち込んだら
何て書いてあるのか解らなくなった

変換キーを押すたびに
簡単なセリフが難しくなってゆく

それでも送信する

不思議と
何かを伝えた気になり
不 ....
喜びのかたわらに悲しみはあって

そしてときどき
僕は盲目になる

あなたの細いゆびさき
ピアノをはじく繊細なおと
それはきっと記憶のなかでのこと
あなたの器用なゆびさき
ヴァイオリ ....
あなたの揺れる水面が
まるで涙のように見えたので
やさしくなだめたくなりました

あなたは水際にたたずむ
一羽の渡り鳥のようでしたから
どこかへ行ってしまいそうで不安でした

あなたが ....
重たい言葉を呟きながら
折った鶴はくずれた格好でした
尾なのか頭なのかわからない
二本のツノは怒っていました

指がふるえて
上手に折れないのですから仕方ありません
せめて淋しくないよう ....
(サンタマリア)

あなたが女神だと
何かの本で読みました
あなたが女神でなくとも
その名前はきれいだと思いました

(サンタマリア)

いつか人は人の汚れにまみれて
いくつかの罪 ....
仕事から帰って
明日のことを考えようとしたら

なんでだろう
涙が出てきた

明日が嫌なわけじゃない
明日があるって素晴らしいと思う

なのになんでだろう
涙が止まらない

そ ....
梅雨の晴れ間にでかけた海で
潮の香りを楽しんでいる君

白いワンピースがひらめいて
そのいたずらな風さえも
まるで子犬をからかうように
君はすらりと笑い飛ばす

そんなんじゃ日焼けしちゃうよって

い ....
あたしが一枚ずつ脱ぎ捨てるたび
視線があつまるのはわかってる
そうやってあたしはお金をかせぐし
そうやってお客は悦びを得るのだから
ギブアンドテイクってやつでしょ

あたしがステージの上で ....
雨上がり
屈折した気持ちで見上げた空に
描かれた虹

一つ悲しみを乗り越えるとき
失くしてしまうものがあるとしたら
それはある種の光なのかもしれません

水分を透過して
感情の成分を ....
ほら
加速してごらん
景色が
混ぜた絵の具のようだよ

加速するのと同じ速さで
後退してゆくいろいろを

君はのがさずにいられるだろうか
なんて
それは難しいことかもしれないけれど ....
ぼくは泣く

涙がかわりに泣いている
泣いた涙がぼくならば
ぼくはさらさら流れてゆく
涙のように流れたぼくは
何も無かったかのように
ひどくかわいてしまうから

それが悲しくて
ま ....
季節の変わり目は
こころのどこかが騒がしい

きちっと折り目のついた夏服を
着ている君はいつもと違って見えて
気持ち良さそうに風が吹いてる

話しかけたら
振り向いてくれそうな距離 ....
郵便屋さんの原付バイクが
通り過ぎるか過ぎないかで
外に出るかどうか決めるような私です

一丁目の角を曲がると犬がいて
それがギャンギャン吠えるものだから
いまどのへんにいるのかわかります ....
ピンクのクレヨンで太陽を描いた
みさちゃんが先生に怒られてるのをみて泣いた

だってみさちゃんはピンクで太陽を描きたくて
それを怒るのは可愛そうだと思ったし
ぼくが赤のクレヨンで描いた太陽よ ....
淡々と過ぎてゆく日々を
うつろに感じてしまわないように
小さな声に耳をすます

いままさに
目の前にいる小さな子
僕にとっては生徒と呼ぶべき

その小さな子が
「みつつき」とつぶやい ....
その少年は、真昼の公園の真ん中で、手にした星座盤をくるくる回しながら、
「あれは確か、かに座の一部だから近寄ったら大きなはさみではさまれてしまうな」とか、「あれは確か、さそり座のしっぽのあたりだから ....
ときどき僕は
「やさしさってどこにあると思う?」って
生徒に聞いてみたりする

僕はにぎりしめた手を胸にあてて
コンコンとノックするようにたたく

生徒は了解したように
「胸のおくにあ ....
ベンジャミン(729)
タイトル カテゴリ Point 日付
「林檎」自由詩7*08/7/21 21:53
「背伸びする」 (心象スケッチ)自由詩4*08/7/19 0:38
「退屈が僕を殺す」自由詩3*08/7/18 15:59
「ゆれる (教室に咲いた花)」自由詩8*08/7/15 2:05
「流線型」自由詩4*08/7/12 8:37
「セミダブルベッド」自由詩3*08/7/10 4:37
「何かが眩しくみえるとき」自由詩5*08/7/8 14:25
「コインロッカー」自由詩7*08/7/5 23:16
「海に行きたいと思うとき」自由詩6*08/7/3 15:33
「満たされたいと思うとき」自由詩6*08/6/30 20:31
「pain rain」自由詩5*08/6/28 15:39
「ハムスターと僕と」自由詩7*08/6/27 2:18
「ビスケットボール」自由詩6*08/6/25 1:44
「メールする」自由詩8*08/6/23 8:05
「喜びのかたわらに悲しみはあって」自由詩708/6/21 16:02
「あなたの水面が揺れている」自由詩10*08/6/20 0:07
「折り紙」自由詩7*08/6/18 0:08
「サンタマリア」自由詩3*08/6/15 23:13
「明日のこと」自由詩3*08/6/14 0:59
「ジューン・ブラインド」自由詩3*08/6/12 0:10
「ストリッパー (3)」自由詩3*08/6/11 2:54
「虹の色が足りない」自由詩8*08/6/10 13:45
「加速してゆく」 (それが君の明日になる)自由詩6*08/6/9 14:09
「ぼくは泣く」 (心象スケッチ)自由詩5*08/6/9 0:40
「半そで (初夏の風から)」自由詩7*08/6/7 23:56
「三丁目の奥手さん」自由詩5*08/6/7 0:25
「模索する太陽 (みさちゃんとぼくの色)」自由詩16+*08/5/31 20:47
「満月(みつつき)」自由詩8*08/5/30 0:55
「少年と星座盤」 (物語・・・短編)[group]散文(批評 ...7*08/5/26 12:59
「やさしさのあるところ」自由詩8*08/5/24 15:09

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