{引用=(美しく生まれたかったと 思ったこともありました)


ある日
アゲハチョウが庭に迷い込んできて
羽を持って生まれてきた生き物は
そんなふうに飛ぶのが
当然なの ....
言葉にならないものたちを
白いスケッチブックに描いていた

ふくらんではじけそうな花のつぼみ
ゆるやかな風にふれる木の枝

言葉にならないものたちを
白いスケッチブックに描きたかった
 ....
透明に含まれる
ほんのわずかをくみとって
花色をかえる

まだ色づく前の紫陽花は
どれも同じような顔をしていて
まるで顔色をうかがうように
あなたを見上げている

やがて色づく
そ ....
つめを噛む
黙っていてものびてくる
そのつめを噛む

噛み切ったぎざぎざの切り口を頬にあて
自らを削ぐように滑らせるとき
痛みとともに描かれる白い線には
まるで罪などないのだ ....
北極星が動かないのは
何故だろうかと考えている頃
地球は静かに回転している

北極星が動かないのは
地軸の延長上にあるからだと気づいた頃
地球はやはり静かに回転している

動いて見える ....
ぼくのこころはちいさいから
ささいなことですぐにいっぱいになる

いっぱいになったこころでは
ほかのささいなことをかんじられない

だからぼくは深呼吸をする

いっぱいにすい ....
とけた飴の中に
蟻が一匹閉じ込められていた

綺麗にそろった六本の脚は
もう動くことはない

蟻は甘い甘い飴の中
最後を迎えるにはこれ以上ない場所で
きっと苦しみ抜いたに違 ....
夏のはじまりは
いつも雨

何処からともなくきこえてくる
海のうた

(セイレーン)

還る場所をさがすように旅をする
あの波の繰り返しのように響いてくる
記憶のような満ちひきに名 ....
誰に教わったわけでもないけれど
新しい始まりの予感は
そうやってくる

五月の風は
そんな淡い期待を感じさせる
芽吹きの音が聞こえてきそうな緑色で
あなたは窓から入り込んでくる風を
そ ....
ゆびさきで
おそるおそるふれた
ぎんいろのフルートにうつる
じぶんがはずかしくて

おと
おとをかなでるなんて
ぼくにはできないだろうとおもった
くちびるをあてても
 ....
気がついたら、詩を書くようになっていた

記憶にある一番最初に書いた詩は「アドバルーン」
小学校四年生のときに先生に見せて褒められた

  {引用=  一本のロープにつながれて
  ビルの ....
 
 
風のはじまりは
海の青を透明にしてのぼってゆく
高く 高く 舞い上がった小さなものたちの
無邪気にかけおりてくる足音と
弄ばれる髪の乱れ

平らな大地に住む僕も
できることな ....
蟻と会話をする少女といっても
それほど不思議な出来事ではない

むしろ日常の一部に自然と吸い込まれて
その自然ということにしっくりとくるのだった

その少女はサッカー部のマネージャーで
 ....
もうずいぶんとむかし

あなたはたしか
「砂漠のなかで金の粒をさがすようね」と言った
僕はそれはちょっと違うんじゃないかと言いそこねた

きれいな空をそのままうつしたような海の
ちょうど ....
悲しいときにうたうときがある
嬉しいときにうたうときがある

少しむかしに流行ったような歌
けしてうまくはないけれど

とどめるようになだめるように
うまくはうたえないけれど

悲し ....
 
新鮮な一日が、しっかりと刻まれて
そうやって日々は降り積もる記憶の集積とともに
思い出という曖昧な残像を胸に刻む

けれどそれは曖昧がゆえに
それ以上あせることのない色を保つこ ....
もしもあなたが
まだかわいていないなら

もしもあなたが
あなたのなかにながれる
みゃくみゃくとしたものをかんじて
そのかんじるままのものにみずからをゆだね
とてもすなおにしたがえるほど ....
明日の壁は、空のむこうにある

明日は生物の授業
動物半球と植物半球があれば
小さいながらも完全な個体が成長する
それを発見した人は誰だったろうかと思いながら
本当は生きることについて語り ....
ちっちゃなころに大切だったものが
いまになってちっぽけに思えてしまったら
きっとそれ以上に大切なものなんて見つけられない

  おもちゃ箱をひっくりかえして
  いろんな色のガラスのかけらを ....
僕のクレパスは
どうしてみんな長さがちがうのだろう
買ったときにはどれも同じ
だけどそれはあたりまえのこと
黒が一番先に短くなる
デッサンでもつかうし
影をあらわすのにもつかうし
僕は簡 ....
日常にあふれる音の数だけ
日常は動き続けていることに気づく

それが小さな虫の音や
少女が練習するフルートの音色だったり
どこかの家族の会話だったりして
そんなかすかに聞こえてくる音に安心 ....
彼はもう夢の描き方を忘れてしまった
自分で生きることを忘れてしまった

流されることの気楽さに慣れてしまった
痛みをまぎらわす悪戯に慣れてしまった

彼はもう夢など描かないと思っていた
 ....
小さな塵が蒸気を集めて
やがて雨になっておちてくるように

僕の小さな悲しみを
あなたが優しくくるんでくれるから

ほら

こんな簡単に泣けるのを
僕は雨のせいにしている
「少しだけ泣いてもいいですか?」

あなたは細い声でささやく
そしてやっぱり止めようと
小さく肩をふるわせている

「きょうはずいぶんと湿った空です」

たしかに昼間吸い込んだ蒸気を
 ....
「せんせい、青がせまってくるよ」と
生徒が窓を指さした

びっくりして窓を見たけれど
せまってくるように見えたのは
くっきりと浮き立った白い雲で

その背景にひろがる青は
たしかに夏空 ....
あなたはまるで
矢を放つ前の弓のように

身体をしならせ
水平線を見つめている

遥か遠くの波間では
違う色の青を背負った海鳥が
白くひるがえりながらたわむれている

大きく息を吸 ....
壊れてゆく世界の音に耳をかたむけながら
だいぶふくらんだお腹を撫ぜて
ロボ子さんは懐かしむように目を閉じる

かつて自分が生身の身体だった頃の
あのむせるような夏の匂いや
頬をすりぬけてゆ ....
どうしょうもなく渇いてしまえば
身軽になるものだというように
からから笑いながら波打ち際の
空き缶の口元を叩く
浜辺の砂

  ※

昨日までわたくしは海の中におりました
かつては地 ....
昨日ひろったきれいな小石

たとえば人は
磨かれる前の宝石の原石のようだということ
未完成なままの美しさを知っているから
だからそっとしておいてください
そんな淋しさ


 ....
透明水晶の信号柱から
七つ先の林道をかけあがると

ずいぶんと見晴らしの良い高台に
ブナの木が一本立っている
木の実を転がしながら

その細い林道をしばらく行くと
もう帰ってはこれない ....
ベンジャミン(729)
タイトル カテゴリ Point 日付
「アゲハチョウ」自由詩4*09/6/10 22:40
「六月のスケッチ」自由詩7*09/6/8 13:26
「紫陽花」自由詩5*09/6/6 2:43
「つめを噛むのをやめなさい」自由詩5*09/6/3 23:30
「北極星は動かないというおはなし」自由詩6*09/6/2 13:50
「深呼吸する」自由詩6*09/5/29 21:00
「蟻」自由詩6*09/5/27 17:12
「夏のはじまり」自由詩12*09/5/24 13:14
「五月の風にさそわれて」自由詩6*09/5/20 18:46
「旋律」自由詩8*09/5/8 2:39
「大後悔時代」自由詩2*09/5/3 22:59
「はるか」自由詩5*09/4/30 23:17
「蟻と会話をする少女のお話」自由詩6*09/4/28 2:16
「やさしい唄をきかせてください」自由詩12*09/4/21 0:43
「きれいに歌をうたうとき」自由詩8*08/11/24 2:00
「そうやって日々は・・・」自由詩6*08/10/20 1:33
「水位」自由詩5+*08/10/14 2:20
「明日の壁は、空のむこうにある」自由詩4*08/9/22 2:22
「宝石」自由詩7*08/8/15 22:30
「クレパスで同じ空を描きたい」自由詩4*08/8/14 8:27
「暮らすように歌う」自由詩5*08/8/13 0:01
「夢の描き方」自由詩3*08/8/12 16:24
「優しい雨」自由詩18*08/8/7 0:04
「水のための夜」自由詩6*08/8/4 23:36
「青がせまる」自由詩6*08/8/1 23:00
「風が生まれるとき」自由詩6*08/7/30 23:36
「妊婦のロボ子さん」自由詩4*08/7/26 21:53
「砂の記憶」自由詩11*08/7/25 23:47
「嘘かもしれない」自由詩7*08/7/24 0:24
「迷い森」自由詩4*08/7/22 22:05

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