昼下がりの教室が好きだ
土曜日、テスト終了後のちょっとした時間
つかのま開放されたような空気が好きだ
そして特にやらなくてもいい採点を
僕は好きでやっている

どうせ僕が採点しなくても ....
高校二年で剣道三段のその生徒は
「30cmの棒があれば先生を倒せますよ」と
とても冷静な顔で言う
なのでシャーペンより長いものは
できるだけ持たせてはいけないと思っている

僕は六年前 ....
休み時間に生徒が漢字練習をしていた
なかなか漢字が覚えられないとぼやきながら

僕はそれを見守りながら
漢字はいくつかの漢字がくっついていることもあるから
それを手がかりに覚えてゆくのも ....
オレンジの雲をかじる
甘酸っぱい空気を冷やして飲んだ

気流が発生する前の
静かに流れる朝は鳥の声に押されて
ようやく白い地を染める

地球の回転は空の綱引き
勝ち負けのない勝負は ....
今年はじめての風邪をひいて
布団の中でまるまっていたいのに
僕は先生なんて呼ばれたりしているので
待っている子供たちのために教室へ行く

ところで
そこの教室の窓はとても大きい
僕が ....
娘が
私の誕生日にプレゼントをくれた
そういえば
最近娘とは会話もしていなかった

細長い化粧箱

包装紙をやぶいて中を見ると
ドライバーが一本入っていた

娘は
私がそれを ....
手紙を書くときの始まりは
どうしてもこうなってしまう

「お久しぶりです」

大変便利な世の中で
携帯やら電子メールやら(「電子」って古臭い)
いろんな意味で距離が縮まって

僕なん ....
りぃ りぃ りぃ と雨が降り
渇いた大地を潤してゆく

六月は
晴れたり曇ったり
そしてこんなにも雨が降ったり

(もうこれ以上叩かないでくれ)

庭にはやっと咲いた花たちが
 ....
ああ わかってる
どうせ僕には君たちの言葉なんてわからない

飛べもしない翼で空を指さす
それが何を意味しているのかなんて
僕にはわかるはずもないんだ

「飛びたい」と訴えているよう ....
迷走した夜明けが今日に辿り着いた
しまい忘れた記憶が日に焼かれ
過去になりきれなければ後悔になる

(朱の刻)

その頃眠りにつくのがいい
いろんな唄も聞こえるだろう
そ ....
下町に生まれてから
高いビルに憧れていた
今になって見上げる景色は
華やいでいるのに
どこか淋しい

地方に引っ越して
久しぶりに来た東京

夜の地下鉄の
長い階段をおりてゆく ....
すべての生きものに終わりがあるように
今日という日が暮れてゆく


プラスチックの透明感が
美しいと感じられない
 
 空っぽのペットボトルを
 赤く染まった空に透かし
 屈折す ....
悲しい夢を見たあとに
声を上げて泣いてしまったのは
その夢が悲しかったからではなく
その夢が現実にほど近い
記憶だったからかもしれません

昔のことですから
もう数えきれないくら ....
たとえばだれかのこうふくが
だれかのふこうのうえにあるとしたら
それはとてもかなしいことかもしれません
そのかなしみもまた
だれかのよろこびのかてになっていて
だとしたらとてもふくざ ....
降りつづける雨は
もしかしたら辛い過去かもしれません

降っては止み
降っては止みを繰り返し
いつしか涙のようになって

まるで一人ぼっちみたいに
その「ぼっち」が淋しく響いて ....
美しい言葉をさがすために
美しい言葉をさがす旅に出た

海に行けば海は美しく
山に行けば山は美しく
空を見れば空は美しかった

けれどそれを表現するだけの
美しい言葉を知らない ....
ほんとうはね
「ほんとうはね」っていう言葉が嫌いなの
何だか嘘をついてたみたいじゃない

たしかにね
「ほんとうはね」って言う前に言ったこと
やっぱり嘘になっちゃうかもね

でもね ....
 いずれは誰にでも
 やってくる終わりのときを
 誰が教えてくれるわけでもないけれど


それはまるで
人生という山に積もる雪が
まさにその季節に向けて
静かに融けてゆくように
 ....
春は優しい風の音色で
ひらひらと踊りながら地に還る


田舎の祖母の他界の知らせに
慌ただしく帰郷の支度をしながら
移り行く季節の名残に
そっと目を閉じる一時

思い出はいつも
 ....
一人になって
ふと疲れを感じる昼下がり

もう数えていないのと
ぽつり呟くあなたを
抱きしめたら壊してしまいそうです

指先で宙に描く願い事
それが何だかわかりませ ....
幾多の苦難を
一つ一つ思い出に変えながら
今日も夜空には過去が浮かび
月影は淋しさをなぞるように
きれいな円を描いている

たとえば
「さよなら」の四文字を
どの星にあてはめれ ....
ふと動物園に行きたくなったので
ふらっと電車に乗り込んで
ふらりと向かった

「水曜日は休園日です」

がっくりしてまたガタゴト
帰りの電車に揺られる

電車の中に居る人を眺 ....
お日様の下
おまえはかたく焼かれてしまった
ただ真っすぐ
地中から這いでてきたおまえは
涙をながす瞳さえ
持って生まれてなどいないのに

かたく焼かれたおまえの
その真っすぐな身体
それを泣いてや ....
ゆきゆきて花びら落つ
されど
世はさむざむと語るも虚し

日差しさやかなることを願い
枝先に残るつぼみに
その時を問う

また一片の行方を見やれば
地を春色に染め
伏 ....
桜の開花を待つことなく
君たちはゆく

若さとは強さであり
同時に弱さでもある

だけど安心しなさい

私が信じる君たちは
無限の可能性を持っている


桜の開花を待たずに ....
ああ 今日は
なんて美しい音色だ
風はすこしばかり強すぎるけれど
これは春なのだから仕方ない
それよりそこかしこで
草も木もみんな楽器みたいに
お互いをこすりあわせている

風が吹 ....
(真っ白な雪が見たかった)

真っ白な雪をかきわけて
地面の温もりを感じたかった

こんなにも寒いのに
雪の一つも降らないなんて

(真っ白な雪が見たかった)

すべ ....
(美しく生まれたかったと
 思ったこともありました)


ある日
一羽のチョウが迷い込んできて
羽を持って生まれてきた生き物は
そんなふうに飛ぶのが
当然なのだというように
ゆら ....
春の気配を漂わせても
外はまだモノトーンの景色

窓辺
揺れる裸の枝先の
まだ開かぬつぼみ

食卓を飾る赤は
花瓶に押し込められた薔薇
生気のない色はイミテーション
ならばまだ ....
その線の流れは
いくつもの分かれ道があっても
不思議とまっすぐに見える

迷い間違えながら歩いているようでもそれが
過去となれば運命と名づけられるからなのか

生まれながらにして刻ま ....
ベンジャミン(729)
タイトル カテゴリ Point 日付
「美しいことに理由はいらない」自由詩5*08/3/28 1:17
「バンブーソード」自由詩3*08/3/25 0:26
「億万人の心の音」自由詩20*08/3/22 1:26
「明け方の月はよく笑う」自由詩3*08/3/21 11:36
「空を見たいと思うとき」自由詩8*08/3/19 12:33
「プレゼント」自由詩3*08/3/17 1:29
「お久しぶりです」自由詩407/9/26 3:16
「もうこれ以上叩かないでくれ」自由詩8*07/6/22 14:55
「動物園のペンギン」自由詩8*07/6/18 23:34
「朱の刻」 (青年詩片)自由詩7*07/6/13 15:52
「東京」 (地下鉄のホームで)自由詩7*07/6/10 7:55
「黄昏る」自由詩5*07/6/9 6:50
「悲しい夢を見たあとに」 (青年詩片)自由詩9*07/6/7 1:25
「すべてがつりあいのなかで」自由詩6*07/5/29 18:50
「水結晶」 (二部作のうちの①)自由詩5*07/5/24 12:52
「美しい言葉」 (青年詩片)自由詩4*07/5/20 14:08
「ほんとうはね」 (青年詩片)自由詩5*07/5/9 9:48
名残雪自由詩807/4/29 18:12
散る自由詩607/4/22 9:24
「今日生まれたあなたへ」 (青年詩片)自由詩7*07/4/14 17:28
「月影」 (青年詩片)自由詩10*07/4/13 0:57
「動物園」自由詩12*07/4/6 16:05
みみずの涙自由詩4*07/3/27 14:57
「春」 (青年詩片)自由詩7*07/3/23 22:00
卒業する子供たちへ自由詩10*07/3/17 20:39
たとえば歌をうたうように自由詩12*07/3/14 11:52
雪のない冬自由詩7*07/3/12 13:38
「チョウ」 (青年詩片)自由詩10*07/3/9 11:31
薔薇と心臓自由詩5*07/3/7 14:21
「手のひらの地図」 (青年詩片)自由詩3*07/3/6 10:26

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