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母さん
ぼくは思いだしました
まだ若いあなたの
細くも強いその手にひかれて夏
緑に燃える蜜柑葉をくぐりどこまでも道はつづいていました
おばあちゃんのお家までねと
暑くて永い昼下がり
眩暈 ....
娘と一緒にドラッグストアーに行って
「好きなものをひとつだけ買ってあげるよ」
と言ったら
「ホチキスが欲しい」と言う
「ホチキスならうちに二つもあるでしょ。
塗り絵の本とか色マジックのセ ....
{引用=進歩は昔話を撲滅する}
あんたの事は食わしちゃる
あたしが部屋で何しとるかは
詮索せんといて
覗きでもしたら出て行くきね
女房のオツーはそう言って襖を閉め
日がな何事か ....
(以下英語で)
「カスタマー・サービスです」
「あの、レ・ミゼラブルの上映スケジュールを知りたいのですけど…」
「それでしたらウェブサイトで調べて下さい」
「さっき調べたのですが、 ....
冬の薄暗い回廊を
渡ったところに教室があって
頭痛を抱えたままの君は
そこをめざして歩いていく
壁にはたくさんのテレビがついていて
音もなく瞬きながら
世界中のつらいニュースを
さか ....
内科につれていって
眠れないから、と
夫にいう
夫は頷き
やけに尖った車の鍵を取る
ちゃらり、と手のひらが鳴る
大きい車は苦手だったはずが
高い窓から外を見るのにも
慣れて ....
近所の子らが小銭を握って
フルタのチョコやオレンジガムを買う
細野商店はおばさんがやっていて
娘と息子がひとりずつ
近所の子らが大人になって
いつやらクリーニング代理店になり
細野商店 ....
文句が有るなら言ってみろいいえ別にありません
お前の態度が気に食わない文句があるなら言ってみろ
いいえ今日は用事があるのでライン長様に文句なんて
我慢だ、足軽社員は我慢が命と心の叫び ....
{ルビ月極=げっきょく}さんは資産家だ
日本全国に空き地を持っている
でも、どこに住んでいるのだろう
月極さんのお家がない
そう思うと、ちょっとかわいそう
パートさんになった
月極で働 ....
これただの手抜きじゃないのかという
そういうたぐいのあら挽きこしょうがあって
かんではじける火薬感が
くちのなかからあふれそうで
でもとどまってて
それをじっとこらえれば
ぼくも高倉健にな ....
人を
ただしい場面で
ただしい順序で
ただしい角度に
揺すると
泣く
そのただしさを
習得することを
愛とか技とか
呼ぶ人びとを
軽蔑し
憎んでいるわたしも
ただしい角 ....
野良猫が生垣から顔を出して
じっとこっちを見ている
/かけとび
あやとび/
/ステップとび
去年はできなくて癇癪を起していた
ふふふ、まあ頑張れよコワッパ と思った ....
会社をたたむと決心して以来
もののたたみ方に注意するようになった
これまで自分でたたまなかった布団を
たたんでみたりするようになった
いつもはそこら辺に放り投げている
パンツや靴下もたた ....
春はたまごの眠り
たまごの中でまどろみながら
イースターエッグの夢を見ている
{ルビ復活祭=イースター}の朝が来たら
ウサギが隠したたまごを
子どもたちが探しに行くよ
春になったら ....
「寝てる姿と食べてる姿がかわいいってずるいよね。」
男友達が昔の彼女に そう言われたんだって
嬉しそうに話していた友達
今でも信じられない信じたくない
友達は たぶん 一生病院の中で暮 ....
短歌を超える詩が、あってもいい
詩を超える短歌が、あってもいい
詩人も、歌人も夜はおなじ寝床で肌をよせあって
眠るのだとおもう
今日はもうなにも書けなくて
はやくお風呂にはいってあし ....
便利やで。このひと。
うれしいと泣く。
哀しいと笑う。
恋もできる。
歌も唄う。
故障は少ない。軽くて丈夫。
充電式やから停電に強い。
環境に順応。
ええ仕事する。みんな欲 ....
月曜日
の
昼休み
コンビニで
メンチカツ
入りの
パンを買い
公園で
前向きに
食らう
いつもと
同じ光景
昨日と
違う蝉
財布の小銭は
明日あたり
....
通り沿いにガラス張り
湯島のちいさな洒落たカフェ ペグ
オーナーの娘だろうか店員女性にときめくわたしは
「おはようございます。玄関マットの交換です!」
の発声加減については役者なみだ
マ ....
とおいと
おい場所まで
いったつもりがわりとちかくだった
手ざわりとして
においなのかもしれない
そういったものたち総称としての手ざわりとして
あったような手ざわりとして
なんとかあとで ....
もう読みたくはないのだ
わたしは明るい光のもやもやと
たゆたうなかに身を落とした
ここでは視界も聴覚も澱んで
生温くて居心地がいい蜜液のような
見詰め過ぎたのだよ秒針の動く早さとたど ....
肌をすべる泡が灰色に変わりはじめ
見下げて
乳房から続く白い曲線や
つま先の綺麗な花色に
絶望する
口紅を塗らないのは
ちいさな爪を伸ばさないのは
この隙間を
みつけてほしいんだと ....
蝉は夜企んでいる
おてんとさまが顔を見せたら
どんな風に吠えてやろう
入道雲を飛び越えて
知らぬ街まで響かせようか!
蛙たちの雑談に
まぎれた樹の幹
食い込むほど爪を立て
ひっそり ....
猫が疑問符を撒きちらし
夜がいくらか賑わいを増す
その髭の長さぶんの内容を
ひとつはそっぽをむいた月へ
ひとつは笑い揺れる木々へと
夜が明けるまで
あくびする間もなく語りかける
永遠 ....
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