すべてのおすすめ
ある人を喜ばせる役目を終えて
そのメルヒェンを忘れ果て
路上に居る様には見えなかった
マスコットキャラクターの小熊
目的のある足は目も触れず通り過ぎて行く歩道で
しゃがみ込ん ....
既に色褪せて重たく落ちている花片を
踏みながら歩む林の中は
もう黄昏ている
椿林の木立
わずかな隙間から
聞こえる波濤のどよめき
腰をおろしてみなさい
....
拡がりが
拡がりを飲み込んで行く
私は 母の形をした服を着て
熱い、熱いと泣いている拡がりを宥める
いったいもうどんなかたちをして
街を許したらいいのか
どんなかたちをして 乞 ....
ゆうぐれ、ぼくの家のすぐ目の前にある小さな公園、だいぶ涼しくなってきた風、古いブランコがほんのすこしだけ揺れている。その座板のうえに置かれている、子供用のリコーダーには、しかし老いの枯れ葉が何まいも詰 ....
子供たちが整列をしていた
何をしているのだろう、とよく見ると
整列をしていた
身体の隅々にまでしみわたる雲のように
なだらかで滑らかだった
透明な水を植物にあげて
話すことなどもう ....
積乱雲を想って
紫の渦あじさい
順呼気に澄む
ふくらみ過ぎた花と緑は
まるで巨大なくるみ型の舟
或いは脳みそ
私はミソスープに伸ばした腕を
食卓の
小鉢に触れたいと ....
「うまそうやなぁ!」
いきなり頭上から降ってきた補佐の声
昼休憩時
開いたわたしのお弁当
ほうれん草の胡麻和え
切り干し大根の煮物に出し昆布の千切りまで入り
かぼちゃの含 ....
あなたの手のマメを撫でれば
マイスリーが夢を見せる
そしてわたしを抱く、腕の筋肉が
風景を透かせて見せ
ウグイスが季節を外れて
空に絡まるとき
どうやって{ルビ解=ほど}けば良いのだろ ....
○「年齢確認」
コンビニで酒を買う時に
いまだに「20歳以上」を押すように
言われる
これにはいつも違和感を感じる
せめて「60歳以上」にしてほしい
○「平和ボケ」
戦争になると
....
その日は夕方までに出張先を二箇所回る予定だった
庁舎の駐車場を出発した公用車のバン
走る 湖岸道路から
雪化粧した比叡の山陵が見えて
ハンドル握る主幹へ助手席の私はたずねる ....
「朝顔を咲かせてきたの。」
始業時間のチャイム鳴る前、
いつもより遅れて出勤した私は
理由尋ねる彼女へ答えた
君よ 開け
線路わきの道沿いで
私の手が一輪の花へ伸びた
....
日本海に春の来た時は
静かに 静かに
目をとじてみると
生命ない小石が激しい息吹をもらす
波 寄せる毎
丸くなり
カラカラ カラカラ と
妙に乾いた音たてて
踊り ....
それは凄くて 彼の胸は貝がらだ
完璧な夏に 投棄された貝がらだ
涸れないことをほめるのは
ただ軽蔑するのと一緒だ
彼は{ルビ薬匙=やくさじ}を咥えさせて
蛇も寝なさそうな夢を明か ....
言いすぎたあとは
待つしかない
すでに言葉は
離れて祈っている
あなたの心が
傷ついていませんように
私とあなたは
違うということ
お酒を飲んで
黙って横になっている
....
ジャンジャン横丁を
制服姿の女子の二人乗りが突っ切って行ったのは
もう十数年も前になる
後部に座る子の脚が長いのか
見送ると大胆に
自転車の幅からすんなり伸びる白が左右 ....
JRの車輌、
扉の傍に立った私の向かい側にいて
身を寄せ合う二人の男性
つい見惚れてしまう私の目には
まるで月のもと
ただ蒼白く静まりたる世界で
澄んだ瞳に引きし ....
もう見ることは無いと思っていた、
はっきりと思い出せなくなっていたあなたの横顔、
今こうして隣で金色の風を浴びて、
火のようにはためく髪と、
水底のような瞳が細められるのを見て、
どうしてこ ....
前に進めば
いつでも新世界
前に前に進めば
いつでも新しくなる
モヤモヤとした気分
溜め込めば重くなるばかり
一歩一歩が
軽くなるように
不要なものを捨てる
色んな刺激を ....
雨がふっている
雨がふると
星が丸いな と思う
水は火になれ
力にもなれ
私もまた
雨がふっている
雨がふると
心が濡れた と思う
水にお ....
朝のスープの
セロリの香り
悲しかった様な気がする昨夜の夢を
おぼえていない 朝の靄
一匙ごと かるくスプーンを動かしていると
一口ごと すくいとられて胸の中へ流れこむ
....
草原で風に吹かれて
座っている
誰かが来るのを待っている
偶然通りかかるには
あまりにも広い
知らなかった
こんなにも膝を抱えるなんて
自分自身で歩いて来た
わかっているけど
一 ....
月がきれいな夜
ゴンドラに乗って
ドラッグストアに
買い物に出かける
カビ取り剤が
20パーセント引きのクーポンで買える
「カビ取り剤を買いに来ました」
「カビ取り剤をください」
....
○「老老着信」
着信があると
また葬式かあ?
と思ってしまう
今度は親友危篤の着信だった
○「あとどのくらい」
僕は
あとどのくらい
生きるのだろうか
避けられない死なら
天気 ....
いく本かの 樹が
チロチロ陽を洩らす太い枝に一羽きて
また二羽が来る
小さな頭を左右に振って
最初にきた小鳥が身を投げ出すように低空飛行
今し方 私達が登って来た細道へ向かう
....
雨の中 お弁当を食べた
山積みの木の枝を燃やす
離れられない仕事だったから
雨にぬれていくご飯 おかず
服に染みた煙の臭いは
ぬれるとちょっとおえってなる
思いがけず惨めさがこ ....
ある晴れた日に一軒家の庭で
赤い五枚の花片をしっかり開く大きな花を
母と見たのは昔の話
花の名前が思い出せずに 覚えた小さな胸さわぎ
茎が真っ直ぐに伸びた葵科の花
「この花は ....
5月28日
黒いペンで書かれた
カレンダーのさりげない予定
几帳面な字
その翌日
あなたは
日めくりの裏のような
真っ白な予定の永遠に続く
向こう岸へと
踏み出してしまった
....
豆腐は木綿の方が好きだ。同時に、現政権は嫌いだ。
微塵切りにした葱をのせ、ポン酢を垂らす。
降ってくるのは雨。
湿った土。
子どもの頃も子どもなりに世間と折り合いをつけてきたが、
生 ....
仮設足場組立工事が始まると
いつの間にか ダークグレーな防音シートは
しのつく雨に暗く、まるで
封建制度の時代にたてられた牢獄の様に
そびえていた
からだのモヨウが ....
シャッターを落とす
あのざっくりとした硬さ
断ち切り目に
憧れた子ども
これっきり然とした震撼も
つかの間フイルムを失うと
空間に倣う
一度きりのはずの人生で
く ....
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