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 冬
誰もが道行く姿に目をみはった
くすんだ家並の下町
それは何よりも奇異に映えた

女は山の手の私立病院に通う
病人ではない、看護師で
給料とボーナスを貯めて八年
恋人のひとりも作ら ....
丸ごとの白菜は
野菜というよりは
赤子のような
生きている重量があって
大切な預かり物のように
抱きかかえれば
ここは冬の入り口

ひと皮むくごとに葉は
正しく小さくなる
まるで
 ....
この街は明るすぎるんだ
いつか電気回路ショートさせてやる

月がいつもより暗い気がする
きっと街が明るすぎて
目が眩んでいる

いつの間にか
僕は小さな稲妻を走らせることが
 ....
いつも背伸びしてしまう
疲れた時の息抜き
ではなくて
無理に見栄を張ってしまう

いつも空回りしてしまう
君をがっかりさせたいん
じゃなくて
笑い合えたらそれでいいのに

 ....
靴底に引きずる秋がしなびた、爪先から凍っていく
自販機は無関心に沈む
誰にも覗かれない口元で
そっと胃の中の小銭を罵倒して

木枯し
僕の夢もいでぼろぼろ
木枯し木枯し
乾いた唾液がへ ....
水槽の中を泳ぎ回るネオンテトラを見続けています、
いますと、空に浮かぶように小さくて、愛らしくて、
、こうしていつまで眺めていても見飽きないのです、ですが、
話かけていると話かけてくるので ....
これが、わたしにとっては、この世の中でいちばん美しくって、いちばんかなしい景色です。1962年11月27日岩波書店初版本「星の王子様」130ベージの景色に似ているけど、すこし違います。


 ....
取り忘れたのだろう
束ねられた
豊かであった髪を
解体しながら
(舞踏会は終わったわ)
ていねいに
抜き取ったつもりでも
女の指から
逃げおおせた
小さな
黒いそれが

おそら ....
よく通う小松座の前で
あの子が煙草を吸った
白い息を溜め込んで
何か言いたげな顔をした

適当に並べられた蕾を見て
どれが冬に咲く花か分かるか

マフラーに顔を少しだけ埋めて
かじか ....
陽が沈むころ
コウノトリのコウちゃんは鉄塔に帰ってくる

ねぇ、コウちゃんいてないわ……。
洗濯物を抱えて二階から降りてきた妻がいう
鉄塔のてっぺんで夜をすごすコウちゃんは、まだ三才
個体 ....
それなりに成績は良いほうだけど、
発想力とか推理力とか、
所謂持って生まれた知的能力はおそらく平均以下。
それでも頭良い人の振りはできちゃうの。
最近読んだ本に小難しい小説を挙げてみたりね。
 ....
私 もうずうっと前から
森の奥の大きな切り株で
寝たふりしてるの
小人のエキストラ7人も雇っちゃったの
クソまずいアップルパイ作って吐いたの

あなたをお待ちかねなの

ちょっ ....
休日だから
チュッパチャップスはくわえたまんま
外はきれかけのボールペンみたいな
ぷつぷつとぎれる雨がふる
エンジン炊きたてだったから
中はまだしばらくはだざむいね



いつのま ....
生きなくちゃ 生きなくちゃ
今日も生きなくちゃ
豪雨の後の水溜りに
スーパーカーが突っ込んで
泥水飛沫がかかっても

生きなくちゃ 生きなくちゃ
明日も生きなくちゃ
たとえ世界 ....
片づけておいてね、って 言った
私の責任だとしても
鞄という鞄の ファスナーもホックも全部
ジッパーは下ろされ パックリと口を開けて
私を 逆さまに覗いて笑っていた

自分では見 ....
戦争跡地や
災害被災地を
訪れようとする観光がある
ダーク・ツーリズム

悲しみは
人を引きつける
死から
人は学ぶのだから、と

パネリストは言う
そうかもしれない

では ....
眉上ちゃんは
モンブランが好きだ

この前近くの美術館の
帰りに寄ったケーキ屋で知った

“パスタみたいで可愛いよね”


眉上ちゃんは
よく質問をする

物理の授業中 ....
ドラッグストアの棚に並んだ
石鹸の類い
これでもない
あれでもない
おそらくどこにもないのだろう

探している香りは
高電圧のくしゃみのように
蒸発してしまって
世界のどこにも、ない ....
その靴は私の足にあわないので
履くたびに痛みが増しました

1日その靴を履かなかったら
少し痛みがやわらぎました

どうしても
その靴をはきたかったので
翌日は我慢して履きました

 ....
髪の毛を30cmも切りました
前髪なんて眉より遥か上

やけくそですよ、ええ

課題プリントたくさん破りました
おかげで部屋は紙屑だらけです

やけくそですが、なにか

ごはん ....
手渡され
キャベツを剥いている
一つが終わるとまた一つ
終日キャベツを剥いている
来る日も来る日も剥いている

甘ったるい青臭さ
葉をもぐ音は眠気を誘う
額に縦皺や青筋を浮かべ
倦み ....
金木犀
私好きなんです
少し香るぐらいが

香りすぎると
体を蝕んでいくようで
クラクラします

あの日
道で立っていたときも
こんな匂いが
あなたの首筋から香って
火照っ ....
君の肩幅は私が描く世界の幅、
小さな世界の思い出、
小さな言葉で綴る午後。
前髪より軽い言葉のられつ、
女の子が好きな女の子が描く
スカートの柄。
チョークの粉が、まぶしいなんて、
全部 ....
七色に輝く水しぶきを浴びて
キャッキャと走り回るあなたを
私だけのファインダーに
永遠に閉じ込めておきたくて
夢中でシャッターを押したのに
あなたのぶれた指先や
揺れるスカートのレースしか ....
どんなにおそろしいか
どんなにふあんか
まくらやみのなかで
ふみだす そのいっぽ

声をかけられなかった
ずっと昔
学校帰りの交差点で
その人は白杖を持って
信号待ちをしていた
声 ....
あなたは 年老いた家の姿を見たことがあるか

台所からは 骨と皮だけになった皮膚の隙間から
食器と血が 毎日滑り落ちて死ぬ音

骸骨のような運転手になった父が
赤信号のまま 車を通 ....
今日も同じ場所で立ち止まれば
聞こえて来る 母の明るい声

「あんたはヤクルトが大好きでね、
 お風呂上がりに必ず一本飲まないと寝てくれなかった。
 ある時買い置きがなくなっちゃった時があっ ....
早く
早く早く

私のメーターの
ほんの少し先を
あなたが走っている

私は
追いかけるだけでいい
あなたの息づかい
乱暴な試み
私は
任せるだけでいい

私ののどが
低 ....
とぼとぼ帰路の中
目の前の大きな道路

お空の星はもう見えなくなってしまった

時速45kmの彗星が放つガスが
15mの横断歩道の先の少女に纏わりつく

その反対の僕にだって
真っ白 ....
河の向こうにあるのは
向こう岸です
至極当然だけど、事実です
あなたは今、どちらの岸辺で詩を書いていますか
向こうですか
こちらですか
それとも、どちらだかわからないですか
一生懸命に書 ....
平瀬たかのりさんの自由詩おすすめリスト(813)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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