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男の妖精もいるのか
バイクで信号待ちをしていると
学習塾の窓がそっと少し開き
にゅうと黒板消しを持った手が現れた
ぱんぱん一生懸命腕を振って
ぱんぱん外壁に叩いているのだが
あまり白い粉は出てこないみたいだ
....
涙は手頃な宝石です
貴方のほっぺを飾ります
私の心を溶かします
嘘でもいいかと許せます
嗚咽が喉を焼きだしたら
抑え込むのは無理でしょう
風に押される野火のように
貴 ....
ひがないちにち丘の上で雲をみていた
雲には歴史がないんだただ瞬間だけがあるんだ
アンタレスは赤色巨星で太陽は金の林檎なんだな
僕はちょっぴり白色矮性みたいな気分だ
120億光年の彼方の銀河 ....
照れ隠しで言った下ネタがひとり歩きしている
近所の人はおじいさんとおばあさんが
一緒にいるところを見たことがない
どっちがどっちにくっついて
おもちのようにふっくらまっしろ
のびていくしわしわ
仏のように柔らかな如 ....
見失った目的を嘆いても始まらないのに笑えない茜色の雲ってさみしいし
見誤った人生を後悔すればまた諦めきれない陽が昇るってつらいけど
そんなことはないと慰めてくれるひとも必ず居ることを忘れない ....
死に逝く間際
人は自らの人生を 遠く
心象風景として眺めると言う
ある者は石くれの丘に広がるぶどう畑を見た
長年の労苦のまだ見ぬ結実を眺望し
その芳香と甘さを味わうかのように
微笑みな ....
岬の突端に立ち
両手を広げたとき
長い髪が風にそよいだ
色は草の緑
影も同じ
名を呼ぶと
振り向いた頬は
今吸ったばかりの
塩混じりの空気で
薄ピンクに膨らんだまま
「なあ〜にい? ....
神社の脇に湧き出ている水を
手をかざして一口飲むと
喉をコロコロ撫でる
境内に生える大木から
風が気持ち良く流れており緑が眩しい
少しずつ身体中の細胞に広がる湧き水は
....
裏のほうの園庭は
どくだみまみれでだれも近づかなかった
しめったようなぶあつい葉と
こなこなした細ながいおしべ
どくだみはえらい植物なんだよと
先生は教えたけどもだれも近づかなかった
....
苦しかったら
ここにおいでと
空が囁いてくれた
でも私には
翼がなかった
辛くなったら
ここにおいでと
海が囁いてくれた
でも私には
鰓がなかった
....
【カロート】
骨を収めるところだ
簡単じゃないよ
市民の骨を有料で収めるうつわだからね
俺はそんな仕事は嫌だったが
青焼きを渡されちゃ嫌とも言えず
自ら重機の操りも ....
・
夏のはじまりの声に
奪われた鼓膜は
透明の
セロファンに覆われた
巻貝の中で浮遊する
・
白い花びらの波に
さらわれた遠い渚で
掠めとられたくるぶし は
薄暑の縁ど ....
ぱたぱたとひるがえるちいさな二足のズック靴
幼稚園への近道で
つないでいた手を離し
走ってもいいよというと
かならず笑い声をあげながら
細い坂道を駆け下りていった
その弾む後ろ姿を
おぼ ....
鼓膜を震わす太鼓のリズム
笛の音は多くの人が吹いている
外に出てみると前の道路を鼓笛隊が練り歩いている
子供ばかりが所在なく雑多な感じ
兜を被った大人たちもなんだかなぁの雰囲気
だけれども毎 ....
運んだ翼の遠く消えゆくを
ポケットの小銭は知らせる
後戻りなんかできゃしないぜ
情けなく雨は降るんだ
ここが自由の国だと
降り立ったのだけれど
雨は冷 ....
なにも 間違えじゃあなかった
自転車とは 自分で ころぶから自転車
自転車の練習をして みごとに こけたのは わざと だよ
わざと 痛い目にあってみただけさ
新しく自転車を買って その ....
切れ切れの
ビブラートが
君の内側に吹く
風の形を囁いた
痛みのような
ブレスが
君の内側を巡る
水の温度を呟いた
耳ではなく
皮膚の下の
毛細血管の先端で
僕はそれ ....
娘の担任の先生から突然メールが届く
件名は娘の名前
かすかな心臓の高鳴りを覚えながら
本文を開ける
文字が目に飛び込んでくる
“She had an accident!”
アクシデント!? ....
最近姫が西洋音楽をはじめた
ヴィオロンとかいうキーキー言う楽器だ
まわりは大変迷惑千万昼寝もままならんし爺は疲れ気味だ
琴かせいぜい三味線ぐらいでいいと思うのだが
姫の西洋かぶれは止まらん ....
天気がいいですね
きれいな庭ですね
(踊りませんか
いいえ、食事中です
目が赤いですね
ちゃんと寝てますか
(あの作戦うまくいきましたか
いいえ、忘れてました
陽が暮れて血がで ....
愛用のマグカップは
幾歳かの誕生日プレゼント
一番多く注がれた飲み物の第一位は
きっと緑茶だろう
お水よりも?
と問われても
自信をもってそうだとは言い返せないけれ ....
鮮やかな緑の波を揺るがして
強い風が吹き抜けて行く
その風にあおられるように
忘れていた何かが目覚めようとしている
あなたと出会ったのはこんな緑の季節でした
お互いに愛し合いながら傷 ....
鳥山が立つとき
海の深層には
おおきな迷いが泳いでいる、と
あの日 あなたは教えてくれた
あなたの育った長崎の海は
いつも
あなたを包み込んで
すべてを許し 微笑んでくれた
そんな ....
我が家には
クイーンサイズのベッドと
アッキーの為のロフトベッドがあります
わたしがずっと寝ていた時には
社会人と起きている時間がずれるので
和室に布団を敷いて寝ていました
....
目の前のビルに
多くの人間がひしめき合い
忙しく動き回っている
皆同じような恰好をして
皆同じように倍速で囀りながら
男も女も激流のよう
そんな中に一人
着こなしの悪いのが右往左往
....
{引用=
陽炎に
雪 みあげれば
あっさりと あっさりすぎるほどに
春のよそおいを見棄てる
サクラでした
生の 爛漫が閉塞と終焉のはじまりなら、
未完でありつづ ....
(略)
快晴という空虚
ひざっこぞうを
陽にかざし
飛行機雲を一本引く
となりのレジのほうが可愛かった
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