蚊取り線香の匂いが好きだと
誰かが言った

すごく落ち着くんだって
わかる気がした

猫を抱いて
庭先で蚊取り線香を焚く
とても静かな夜

長い間忘れていたその匂いを
思い出そう ....
いつか完成するだろうか
あばらの中のいくつかの空洞は
満たされて、微笑んで眠るだろうか

脂肪に埋もれる柔和な女になれるだろうか
昔は違ったのよ
と笑って言うことができるだろうか

抱 ....
寝床に横たわると
せせらぎが聞こえてくる

母の家は川に近いが
夜は窓も閉めているし
国道を挟んで
川の流れる音など聞こえるはずがない
たぶん一晩中自動で回る
換気扇の音だろうと
弟 ....
ぼくたちは知ってゆく
ありのままではいられないのかもしれないと

人生でたったいちど編んでもらったマフラー
誰もほんとうのレストランを知らない

バイク乗りであまり街歩きもしなかったし
 ....
つかみどころのない臓器
痛みはあっても在処のない

つるりと気取った陶器
来客用もちゃんとある

すきま風の絶えないあばら屋
震えている いつからここで

過敏すぎる 肉を削いで裏返 ....
くるみの内側を
走り続けていたよ
放物線を描いて
世界を広げようとしたよ
僕は
一人ではなかった
君の姿は、
見えなかったけど
くるみのにおいが
していたんだ
僕が目を覚ますときも ....
滲む濃紺のシルエット
おくれ毛ぬれたその耳を塞いで
いたのは 誰の声だったのか

小さな手から逃げ出した
風船は 空いっぱいにふくらんで 
音もなく 破裂した 大人びて寂しい

始まり ....
帰省した
ほんの気まぐれに
親に顔を見せた
ひどく暑い夏の折
来月に盆を控え
年のはじめに世を去った
祖母を思った
居場所なく
結局仏間でくつろぐと
線香の匂いが
また ....
孤独なんてものは感じ方の問題で、孤独でなくなることなんか簡単だ。
その気になれば、音楽と話をすることだってできるし、夜と手をつないで眠ることだってできる。
私たちは、あらゆるものを友達だと思うこと ....
みんな嘘つきなんだよなあ
知りません
燃やしました
ルールも
友情も

みんな嘘つきなんだよなあ
不幸の手紙を
もらったことがある
あなたの彼氏は
誰それと 云々
必死すぎて笑っ ....
うまれたての水のつめたさで
細胞のいくつかはよみがえる
けれど
それは錯覚で
時は決してさかのぼらない
この朝は昨日に似ていても
まっさらな朝である

それでも
あなたの水は
六月 ....
指は、憶えていてくれる。
キーボードの文字の配置を。ピアノで猛練習した曲の指使いを。
本人たちも忘れてしまった、指切りげんまんを。
雨に囲まれた待合室に坐っている
だいぶ長いこといる気もするし
そうでない気もする
入ってくる人もいる
出てゆく人もいる
以前もここで
待っていたことがあるような気もするし
ないような気も ....
空の青さが濃くなる日
木の葉も緑を濃くしていた

さくらこぶしりらこでまりなど白っぽい花が終わり

赤いサルビアが揺れる頃

濃い血の色をしたワインを飲み干し
ラベンダーの香りが漂う
 ....
 海を見ていた。
 港を行き交う人々の足音を聞いていた。
 岸壁に寄せる波の音に海鳥たちの鳴き声がかき消されてゆく。
 視覚よりも聴覚が敏感なそんな午後だった。

 海の色は藍色。
  ....
あの星にも、かつて誰かが何かを願ったのだろう。
同じ星空を見て、あなたもきれいだと思っているだろうか。
遠い遠いあなたにも、いつか出会えるだろう。夢を見つづけているかぎり。
だって、同じ星空を見 ....
つぼみふくらみ
匂わずに匂うよう
結びの前にほころんで

 笑いも 
   泣きも
     つかの間の

結びの前に散りはてる
燃えてあふれるその様を
いまは小さくしまったまま
 ....
そして春が来て
今年も川辺の並木に
ホタルイカの花が咲いた
日中は褐色に湿り
夜になると仄かに光った

数日でホタルイカは散ってしまう
川に落ちたものは
海にたどり着き
地面 ....
私は存在するので歌を歌ったりもする
眠りのなかはいつも春で、毎日夢の中で春の空気と遊ぶ
眠りたいから夢をみる
桜が散るまで、失われることを知りもしなかった
散った桜が、私を見る
それでも ....
わたしの愛しいお月さま
 借り物の光で身を装いながら
 あなたは女王のように天を渡って往く

わたしの愛しいお月さま
 ちょっと見わからないが肌は荒れ
 あっちもこっちも傷だらけ

わ ....
いいにおい
夜のおわりのみどりのにおい
なま白い手足で泳いでいく女のこたち
文字の群れとあかるいカステラ
いいにおい
頭の右うしろのほうの記憶
こうばしいおとこの子たち
めくばせとジ ....
砂のような
罵詈雑言を
浴びせられても
べつに痛くもかゆくもない
友達だったこともないヤツから

雨の日に浮かれ
這い出てきたのだろう か細い
蚯蚓が

ぺかぺかに光って
張り付 ....
絶望に負けたくない、と
娘が言った

絶望を知ったのかと
私が絶望した

悲しみにも負けたくない、と
娘が笑った

娘が隠している涙に気づいて
私が泣いた

この子は
強いん ....
憎しみが始まる
気づかぬうちに

理由も動機もないまま
操られ

私の敵は
君じゃない
君が憎むのも
私ではない

互いに見えないのだから
気にすることはない
なのに
君の ....
もみの木のてっぺんで何してやがる
季節外れの煤けたお星様って訳じゃあるまいし
カラスのくせに風見の真似か なに
風は見るものじゃない 乗るものだって?
違いない 世のなか乗ったもん勝ちよ
だ ....
夜、おしっこに起きたときの
ベランダの外に広がるたぷたぷと波打つ闇や
満員電車でとなりあう
湿った背広のすえた臭いなど

そういうものを
とん、とん、とん、と踏んで

住宅街を俯瞰し
 ....
海岸に沿った
緩やかな下り坂を
自転車に乗ったきみが
麦わら帽子を
左手で押さえながら
駆け抜ける
両足が離れたペダルは
クルクルと空気を
掻き回している

きみの後を
女性警官 ....
ボディブローのように
じわじわ効いてくるのは
僕の中にも君が居るから

君の中にも居るらしい僕の片鱗を
君がこよなく憎むように

その嘲りは抗い難い誘惑

拒むにしても
逃げるにし ....
視界にはたくさんの目がある。
開いた画面に浮かぶ目玉は、
口になって牙を剥き出している。
口になった牙を生やした目玉が
私の目を喰らおうとする。

瞬きひとつでページをかえると、
今度は ....
若い頃は良かった
なんて言わない
思わない
今が一番
いつだって
これからだって

とかなんとか言ってみても

こんな春のいい陽気に
年頃の娘たちが
きれいな足を惜しげもなくさら ....
石田とわさんのおすすめリスト(1485)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
花火- ガト自由詩10*17-7-26
女のすてきなあばら骨- 田中修子自由詩16*17-7-25
せせらぎ- Lucy自由詩17*17-7-23
僕のレストラン- 梅昆布茶自由詩1417-7-20
こころ- ただのみ ...自由詩10*17-7-19
くるみ- うみこ自由詩517-7-16
暮れないまま- ただのみ ...自由詩16*17-7-15
- かんな自由詩12*17-7-13
月には届かない- 水宮うみ散文(批評 ...2*17-7-12
入道雲の約束- umineko自由詩5*17-7-12
今日の水に寄せて- そらの珊 ...自由詩18*17-7-6
ゆび- 水宮うみ自由詩2*17-7-2
雨に囲まれた待合室- 塔野夏子自由詩10*17-6-25
少しずつけれど確実に- Lucy自由詩7*17-6-16
憂鬱- ヒヤシン ...自由詩6*17-5-20
- 水宮うみ自由詩3*17-4-30
春遅れの街で- ただのみ ...自由詩12*17-4-15
そして春が来て- たもつ自由詩1117-4-14
散らない- 水宮うみ自由詩1*17-4-5
微笑- ただのみ ...自由詩13*16-6-22
いいにおい- はるな自由詩1216-5-14
乾燥地帯- Lucy自由詩16*16-5-2
- ガト自由詩11*16-5-1
所属- Lucy自由詩14*16-4-27
風談義- ただのみ ...自由詩13*16-4-23
もう怖くなくなった- 平井容子自由詩816-4-23
ポケットに詰め込んで- 花形新次自由詩216-4-17
君が小さな悪意なら- Lucy自由詩12+*16-4-17
缶詰- あおい満 ...自由詩11*16-4-15
青春時代- ただのみ ...自由詩17*16-4-13

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50