息をしている
すべてのものたちが
息という名の
うたをうたう
うたという名の
命を
深く
息を吸いこみ
ふくらんだ分だけの
息を吐く
そのあと
わたしのうたは
誰かの肺の中 ....
暴力好きと
叙情性は
相容れないと
思っているあなた
無類の中上&梶原ファンである私は
そんなあなたを否定した上で
肘関節を逆に曲げたいと思う
「俺もあれくらい凄みのある顔ならなあ」 ....
脳の誤作動だったのだ
満月がこんなにも喝采されるのは
月は暦を変えられないことの杭を打ち込まれているかのようで
好きになれなかった
あなたの中に住まう狩人は
おぼろげな兎の陰に矢を放 ....
わたくしの心にだって情念の火くらいはありますのよと
微笑んで密集した蕪を抜く
抜いても抜いても蕪は密集していて
今日も明日もあさっても蕪の抜き菜がおかずですねと
やっぱり微笑んで蕪を抜く
微 ....
光を打つものの影が
空に映り揺らめいている
二本の穂の墓
影が影に寄り添ううた
切り落とされても切り落とされても
見えない部位は羽ばたきつづけ
音の無い風が生ま ....
冷たい雨音を遮りながら
仕事帰りに紺色の雨傘は
静かに溜息をついていた
鉄道駅に着いたので
ちょうど雨傘をたたもうとして
夜空を閉じるときに
満月がみえると本当はいいのにねと
何か反実仮 ....
さよならを告げた記憶はないけれど自転車はもう錆びついていた
お返事を書くか書かぬか迷ってるヤギはいくぶんヒツジに似てる
降り注ぐ光のすべてうけとめるここはあまりに硝子張りです
みなぞ ....
秋。
夕日がくたあーっと疲れてて
その肩を
もみもみしてあげたいなーなんて
でも夕日の肩なんかもみもみしたら
あったかくて思わず
夕日の背中に抱き付いちゃう
「ちょっとーちゃんと ....
骨のはら、平らかにひろがってゆく
りと、たってしまう。そよぐ音が、声が
あることの根をふるわせよ、ふるえ、よ、と
しきいにふれるか否かの下方でなる
よよ繰りかえす「ことのね」のれつ
おん ....
イチョウの葉がこがらしに
金色にかがやいてまいおどる秋の羽だ
地に落ちて
みちゆくひとにふみしめられ
甘いかおりとサリサリの音
音はもしかしたら
いなくなることに
泣きたてている ....
オリオンは輝くための動力と視線に入る神聖なる光
あのひとの背中に耳をあて
心臓の音を聞く
汗をかいては歩いていた
影は黒く
草は青く
恋をすれば
みんなが震える
電線にとまっている
鳥たちの口はとんがっていて
きびしいこと ....
踏み付けられた
つぶされた
わたしはそれでも
生きている
揉みくちゃになり
みっともない
姿になっても
生きている
茎が折れて
羽根のような葉もちぎれ ....
この夜に目が覚め
この夜底に触れる
私にはもはや
親兄弟家族親族はなく
現世的無縁仏だ
円やかな現世孤児だ
そこでは
私という存在が剥き出しで
そこでは
私という存在が真っ裸 ....
以下は、文字と音の実験詩です。
詩を朗読しています。宜しければこちらもどうぞです。
https://youtu.be/3R5yliaT0bs
ひらひらひらひら
蝶のよに飛び散っ ....
渚 もしもこえがなくなったならこえの代わりがもらえることを
あなたは外付けの倫理 ぼくたちの溺れるすべてをただしさとする
だめになるためにするべき100のことしても たぶん いいよ は ....
地球は自転をして呼吸をしている
アンドロメダの惑星の輝きは
生きている証を夜の暗闇の中で示している
青い大空の中では
全てが澄み渡り
生命は存在を忘れて
失語症の詩人のように姿を消す
....
さようならアメリカ
たぶんぼくはアメリカが好きだった
ジーンズが好きだった
コーラが好きだった
ポテトチップスも好きだった
さようならアメリカ
自由と平等と人種差別の国よ
民主的で覇権的 ....
乾いた太陽、冷え切った指先にほどけた毛糸を巻きつける
赤い手のひらは落ちていくのが早まったし、昼はとても短くなったね
深い夜は夢を見て、朝、現実に戻るまでの道のりはとても長い
桜の花びらのよ ....
世界ハ
巨大な鏡像スクリーン
透明な皮膜のなか
ふわふわ微睡み感じ取る
人、森、岩、猫、大海原
唐突、道路に開いた穴
その深淵ハ
弾け飛んだ信頼の重み
傾く生を朦朧と
肉の苦痛に ....
生まれ出る暗闇を
スリッパで歩く
冬の
イルミネーションはもう、海に沈んでしまっていた
ほしの形をあしらった
知恵の輪を
あつめては ほどく 少年の眼
それを見つめているたくさん ....
物憂げな予感に満ちて
黄昏時に立ち止まってじっと
夕日を見ている人がいた
空が暗色に沈んでいく
目に丸い陽の跡が残って
月の横に暗色の太陽が浮かんだ
空に色を付けるのなら
赤しかない ....
昔、{ルビ通=かよ}っていた中学校の屋上に
天体観測の丸いドームがあった
天体望遠鏡を覗き込むと
こころの暗がりがみえた
こころはどの星だろうと
それから何十年も探 ....
ナンデーナンデーが増殖する頭をかかえ
森の中をさまよっておりますとパトカーの
音が谷あいに響いて山に反響して 谷の
町々のどこに パトカーがいるようだか
さっぱり分からないの 心の中はそんなか ....
君の指先は、瞳のようにひらかれた触覚をしている
私の顔など、誰よりもよく捉えていて
鼻筋は好きだが唇は嫌いと、批評も手厳しい。
ある日、乾き荒れた私の背中を撫でて
「頑張ってきたね」と、ふ ....
夕陽はきっと溶けるように
水平線に抱擁されて 海の底
人魚の里で明日を孕むのだと思う
そこでは どんな哲学をさかのぼっても
たどり着けないとわをしる風が
淡水の泉を可愛がっている
つぎつぎ ....
境界線は今日も
曖昧さを保つようにして
空は青と白の始まりと終わりを
見失ったまま浮かんでいる
朝と昼を跨いだはずなのに
わたしはその境目を
....
ほそく
だけどまわりの庭木よりたかく
そよいでいる
白樺の梢の辺り
黄ばんだ葉の疎らな繁りにふと
青いまま
いくつか
乾きながら
さわさわと光にそよいだころの
面影を残し
....
ユトリロの白の時代の終焉は
小さな教会を過ぎ
角を曲がれば
景色が変わり
曇りかけた空 薄暗い白壁が
もう見えなくなっただけのこと
かもしれない
道を挟んできょうかいと向き合い
キャン ....
昼間なのに少し薄暗い北向きのカフェ
観葉植物の傘の下で
大きな背もたれのひじ掛けがついた椅子に深く腰掛け
背中の後ろ、ガラス窓から差し込む少しの陽射し
店内には静かにジャズ
まったく僕は ....
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