詩は、情緒の穴である。 端的に言い換えれば、詩とは、ハーモニーである。 ゆらぎである。 感応することであり、掘り起こすことである。 詩は、情緒の穴である。 つまりは、そこにこそ、詩の存在意義があり、そ ....
星屑のドレスを身に纏い
音譜の風に黒髪をなびかせる
彼女の足元で
青いガラスの靴の音が
きしきし、
夜の世界に響き渡っていた
ビロー ....
何か小さな祝いの言葉が
ずっと背中に降りつづいている
鉛の泡
砕ける冷たさ
夜が夜を着ては脱ぎ
雪を渡る光を見ている
そそぎ そそがれ
そよぐうつろ
....
真白な画面に
昨日の出し物が思い出された
ワイルドな田圃での
豊年祝い
裸踊りに酒がふるまわれ
私は控えめに生中だけを飲む
飲食店のストライキは
ストップした
これで心置きなく
少年 ....
土佐の海辺の村で
毎日毎夜薄暗い電灯の
野外畳の上にでんと座り
鍋に茹でられた貝という貝
爪楊枝でほじくり出して
それぞれに違う味覚
食い喰らい喰らい食い
瞑黙ひたすらに
味わい味わい ....
片付けられない部屋に
終われない言葉が散らかって
絶句。
「。」とは、簡単に収納されてしまう私の居場所
膝を抱えて座り込めば 隙間から立ちのぼる私の苛立ち
そこからはみ出でくる消化できない ....
しあわせ って意味も知らずにそれでも
その響きに惹かれて 微かに瞬く
ひかりを 疑えなかったのだと思う
決意をして 決意通りに堪えて生きてきた
泣いて泣いて泣いて泣いて いまもまた
わたしは ....
洗いたての芝生がちろちろと
脈を交わらせている
川までの道すがら
ちいさな生き物は溺れ死に
汚れた内臓は、光る命へと洗われる
車椅子に花を差し入れる
目を細めてファインダーを覗 ....
霜降りた田園のあとかたに
朝日の残滓が
それは早すぎる追憶
天涯より撃ちつけられる萎び
もう戻れない日々のなかにいる
最初からなければ良かった原発
誰にでもある ....
{引用=*吹雪}
また寝過ごした
慌ただしく時間を折りたたんで
結露の向こう 誰かが叩く
風のふりして泣いている
{引用=葉牡丹}
あまりに冷たい断り文句じゃないか
あまりに ....
おだやかになるべくあたたかいきもちで
いきてゆけますように
そんなことを誰にでも発信し続けている
エゴのしずくをふりまいて
誰でもいいわけじゃないけど
誰かに言われてはっとするこ ....
ちぎれた 火の粉を雫の中にやどした言葉たちを超えて鳥が謳う
ほととぎすは 夜通し歌をもやし カッコウは霧雨を もやし
溶接工は 鉄を燃やして繋ぎ合わせノアより巨船を創り
アリアは ....
ちょうど
想うことと考えることのあいだで
人間がひとしきり
随分と迷うとき
やはり優しさが生まれるのだろう
朝方の出張に備える
昨晩の夜更け過ぎには
ただ愚直に仕事に行く
考えがあるだ ....
透明な水槽の底
沈んで横たわる
短くなった鉛筆たち
もう手に持てないほど
小さくなってしまったから
持ち主たちが
ここに放したのだ
その体を貫く芯が
ほんのわずかになったのは
....
戴いた去年の賀状を
眺めながら
一枚 書くたび
次々に
押し寄せてくる
記憶の波に
浸るのではなく
溺れるでもなく
むしろ
耐えている
再生多発する 複数の痛みに
懐かしさな ....
あなたを見るために
光を媒体にした
あなたを聴くために
空気を媒体にした
媒体なしにあなたを知りたくて
肌と肌を重ねてみた
そうして慰めを得ながら
無限の孤独を思い知る
....
この前まで鉛筆をもっていたひとが
木の匣にはいる
燃やされてちいさくしろくなって
木箱にはいる
鉛筆で書いた文章が
もう そのひとだ
そのひとを見ると
鉛筆をもてない
あのひとのこ ....
愛娘が毎朝八時に起こしに来る
歪み捩れた時空の層を超えるのは
なかなか大変だそうだ
[合鍵を作ってやろうか?ちゃんと電車に乗って来いよ]
おはようのキスをしながら僕は言う
[そんなことし ....
心はどこにあるのだろう
心は海にあるのだろう
今朝の静かな{ルビ潮=うしお}には
わたしが隠れているのだろう
そこでは無数のお魚が
シャンパン色の夢みてる
そこでは一人の{ルビ ....
あれは、さみしいひと
佇んでた 遠目からじゃ見えない
薄青い菖蒲が頼りなさげに風で揺れてる
通り過ぎて交じり合わないひとたち
全ては、約束事で絡み合って
ゆれていく
可愛い大地がさような ....
沈む夕日の下
産声ひとつ
迷子のままで
歩む世界
還る場所は
遥か空の彼方
迷子は歩く
往く当てもなく
いつか帰る
場所を探して
照らす朝日の下
産声ひと ....
ふと思ったのだけれどね
人間には通気孔が必要だってこと
きっとどれかの上着に入ったままの入場券もいつかは必要なんだ
なくてはならないものなんてそんなにないんだけれども
たやすい自由はい ....
陽鳥
きのうのことのようだ
逃げ出すように ひとり列車に乗り 海を目指した
行き先は 宮島
宮島のカラスに逢いたくなったのだ
途中 かあかあ
二度ほど 鳥が鳴いた
....
という回文を考えた まだ誰にも負けていない
後輩がおっきな賞をとってから宙ぶらりんの命のキャップ
「夏よりはいいよ」とめんどくさそうにサドルの雪を追い払ってる
あな ....
あなたがわたしにひいた線は
しずかに沈んで いまはもう
ほとんど わたしになりました
種から花へ
あるいは花から種へ
その季節ごとにひいた線は
たがいに絡まりながらなお伸びてい ....
あなたを思うと、
わたしの心に幾つもの
穏やかな図形が描かれる
熱い珈琲をかきまぜながら
窓の向うの樹をあなたは見ている
たぶん、世界じゅうのすべてのものが
....
夕方にカレーの匂いをもらすほどボロい家屋に棲んでいたよね
キャラメルの紙の折り目の白ずんだところを銀河Aとしてみる
吐く息が重なるだけで君の顔ぼやけてた 厳冬の壁ドン
み ....
感情が漂白され
漂流していく時空を
速くなったり遅くなったり
緻密になったり大雑把になったり
なんて自由自在に響く移行
魂の打つ突発的な躍動
変拍子や裏拍に
コレハナンダ?
新たな ....
星さえも見えない夜の底にいてお願いシリウス僕を照らして
暗闇に瞳をこらせば見えて来るきらきら光る僕だけの{ルビ星=スター}
流れ星どうかお願いここへ来て君のしっぽに手が届くように
君 ....
あまりのやりきれなさに思わず
荒んだ瞳になって街のど真ん中で
……黙して堪えなくてはならない時にわたしが
想う 風景があります
そこはひたすらにさやかでのどかで 透明で
必要がないから透明な ....
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