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きみが
ふるさとを
いとしく呼ぶ
あいづ と
づ、にアクセントをおいて
うかうか
夜行バスで
きてしまった
きみが歩いた町を
見たくなってさ
雪の白と温泉の湯気
....
膨らんできた
はくもくれんの
銀にひかる繭のような葉
わたしのはらのなかで
懐かしい男と猫とあのうちは
ことばをうけて赤ん坊になり
ホトホト
うみ落とされてゆく
ていねいにガム ....
いつだって
箱の底に
残っている
ひとつ
とろける、喉に絡みつく、朝焼けの甘やかな、桃色
足掻くように過ごす、ふつうのひとができることをわたしはできない、晴れる昼、淡い水色
-雨の日は ....
下弦の月から放たれたように
斜めに白い線が奔っていた
夜の飛行機雲
こんな時間帯に
ずいぶんと低空に飛ばしている
旅客機か
観測機だろうか、と、君がいって
わたしは感心してたちどまる ....
怖い夢を見て
こむら返りして
いててってなった
ひとりなので足のつま先を
顔のほうへ曲げてくれる人がいない
昨日まで雪の降るまちにいて
彼の仕事の手伝いをしていて
たくさん食器を ....
となりでこんこんとねむっている君は
いま、夢の旅のどこらにいて
どんな風景を見ているのだろうか
空を飛んでいるのかな
くらい深い海に潜っている?
なにしろきみは獣だから
草原を走ってい ....
わたしはきっと見たことがある
祖母の灰色の目をとおしてだけれど
B29がつきぬけるように真っ青な
雲一つない空をはしってゆくのを
疎開するため
汽車で広島を出るとこだった
ちいさな伯母 ....
私は中学を出て、友人の家を転々としながら生きていた。時たま家に帰ったけれど、親は何も言わない。マンションの台所のテーブルやそこらには、たっぷりの食事やおやつが大量に何日もそのまま置かれ、腐って匂いを ....
お母さんがわたしを
おなかに宿したとき
ピンクや赤や白の花が
見渡す限り一面に
あまぁくあまぁくかおって揺れる
夢をいく晩もくりかえしたよ
だから
しらべなくとも
わたしが女の ....
あしたは雪が降るそうです
大気がこころを揺らすんだ
あと三日で母が逝った日だ
目が腫れぼったくなる夜中
花柄の枕に涙が沁みて真昼
飛び降りても抱きしめると
窓の外雪が降り積もってた
それ ....
じいちゃんの亡くなったカミさんが
うえたザクロの木のもとに
実がパッカリあいてころがっていた
皮からあふれ散らばっている実
鬼子母神の澄んだ涙を
庭におりたツグミがうまそうに食んでいる
....
イチョウの葉がこがらしに
金色にかがやいてまいおどる秋の羽だ
地に落ちて
みちゆくひとにふみしめられ
甘いかおりとサリサリの音
音はもしかしたら
いなくなることに
泣きたてている ....
わたしに命をふきこんだのは
横須賀の廃屋のようなうちに猫と車と住む
がんこなかんばん屋の男だった
かんばん屋と猫と車はそのうちで
消えたがる女をなんにんも生かし
わかれをつげてきたという ....