ぼくは小学校にはいるまで
母の隣に寝ていた
母が小料理屋を始めて
夜遅くまで帰ってこなくなった
ぼくらの面倒をみるためにきた叔父が
押入れにあがって布団を被った
ぼくも隣にはいる
ぼくは ....
君は交差点の角に座り込んだまま膝を抱えて石になる/呼吸する石の塊となる
行き交う人の波を見送りながら立ち止まらない世界を眺めている
思考だけで生きている君/無表情な哲学者
其処だけが別世界 ....
必然と人生で必要なものは
食べ物と金と空気あろう
もともと黒い烏丸には
白い空間など身に覚えのないことだろう
くじびきで決まった神などに
この先の行く末などを
指し ....
夕刻地平線 紙の切り傷
鼓動にあふれた静寂がふたつ
痛みをともなうのは
前世からの記憶のひとひら
秘めた焦燥は赤色に駆られて 涙をおとす
はりつく体温と
しお、鉄の味
....
ぼくの存在は地球にしかない
あの青くてきれいな球体にしかない
夏の匂いのまま貼られたアフリカ大陸
ぼくの存在は
あの青くて半分影のあるあそこにしかない
月にはない
太陽にはない ....
渚を歩いていたときのことだ。
波打ち際に、細くなめらかな黒い曲線が描かれていた。
それは波の姿を象って視界の及ばぬ範囲へと延々と続き、
足元に目をやれば無数の点の集まりで、なにかの種を思わせ ....
僕たちは行進する
雨と雨と雨の合間を
かなしみの残る青空に
バシュポン
圧縮した空気は開放され
白い弾丸は
砲の初速を逃れた彼方で
小さな羽を広げる
あの
遥か積乱雲と日輪草の
....
シグナルを待つ間
雨の音ばかり聞いていた
せつなさが押し寄せて
あわててアクセルを踏めば
頬を伝わる涙に気付く
外はサイレントレイン
あなたの声も聞こえない
まるで逃げるように車を飛 ....
ガストで
ましろいA3のコピー用紙に
ボールペンで
いままで実行してきた戦略を書き連ねていた
そうやって戦略を練り直していた
斜めまえのテーブルで
四人の若者たちがくだらなかった
三 ....
カコン、と落ちる軽快な音。
どこかに引っかかっているんじゃないかと心配で、何度も手をつっこんでしまう。
甘い気持ち、苦い気持ちありのままに全部書いたつもりだ。
あの人のところへ飛んでいけ ....
父が亡くなっても泣かなかったくせして
MJの死にはわんわんと泣いた
そんなものだよね
近くて遠い悲しみと
遠くても近くに感じられる悲しみ
人生のアルバムから今まで生きてきた記録が ....
今日は寝坊をしてしまい。
ヒゲは剃り残しがある。
顔には満面の笑み
優しさをポケットに入れて
人に頼まれれば
何でも受けて
人に相談があると言えば
何でも黙って聞く
やさしさは ....
人々は 互いの浅瀬に足を浸して
塩の水を汲み取っている
此処では誰もが 孤高で
ありながら共存している
互いの森で 迷いながら
不意に君は森を抜けて 一面の草地に ....
みんな頭の上に
金魚鉢を持っていて
歩けば中の水が
ちゃぷんちゃぷん
揺れている
ときどき
金魚が入っている人がいると
みんなが振り返る
水が濁って
少ない人がいた時は
....
再会と別れが出会う街で
すれちがう人は他人ではなかった
魂が抜けたように
それでも旗をふり続ける
工事現場の機械人形
それもたまにはいいけれど
縮んだ雪だるまになど ....
誰もがやり直せることを
その情熱の持続を
誰もがひとりではないことを
奇跡を引き寄せるからくりを
その情熱の持続を
ぼくは証明したいのかも知れない
雨が降る青い ....
かつて
じくじくと赤みを晒して
生々しくも痛々しく負った傷が
見事なまでに肉に覆われて
今は消えた
永劫
治ることなどないと思っていたけれど
その確信すら消えて流れた
そうして ....
ころころ転がる
ボールのような毎日を
思うように転がせなくて
焦ってしまったり
怒ってしまったり
ぶつけて傷ついたり
気が抜けて凹んだり
それでもまた
弾みをつけて出かける ....
朝は晴れ晴れと
色とりどりのアヤメの中歩く
季節六月、紫陽花の花
朝は晴れ晴れと
君を見てアヤメの中歩く
季節六月、紫陽花の花
言葉を交わす余裕なく
六月晴れ渡る梅雨入り前
紫 ....
午後
カーテンのすきまから
迷いこんできた空想がひらひらと漂う
うまく捕まえることができずに
言葉にならないので
そのままにした
きっと
そのままの方が良いのだと
勝手な理由を知る ....
海面を泳ぐ光の青を捕まえようとして手を伸ばしてみる
伸ばしても
伸ばしても
届かない両手をばたつかせて
それでも懸命にもがく君の
溺れそうな
沈みそうな平泳ぎが僕は好きなのさ
夏はもう、
すぐ ....
*
暮れ急ぐ空の半分は明日の為のもので
残りの半分が今日と昨日に残した物を映しているのだと、
お互いに主張して譲らない青と赤が、譲り合い一つに溶け合ったなら紫色を生むのだと、天の切れ間には黄昏 ....
灯が川を流れてゆく
灯はたましいだ
青い川を流れてゆく
悲しみが胸や鼻をつまらせる
あなたをコピーする
それをたましいに貼り付ける
あなたが見つめている
....
建物と人が
梅雨明けのひかりを
跳ね返しては吸っていた
夏が影を濃くしてゆく
命の闇と宇宙の静けさを
反語のように振りかざして
風が首を撫でている
夏服の透き ....
見知らぬ地方で
街路樹の道を歩いていた
誰かが私を見ているような気がして
後ろを振り向いたが
誰もいない
南国特有の強い日差しが
こんもりと茂った
緑の街路樹たちを照りつけていた
....
解放された自由などいらない
解放されない
繋がれた
なにかがほしい
雨が
一粒であって
降れる場所を知らないように
水面にとける
ささやかな波紋でありたい
わたしに
あなた ....
そして魚は夢を見た
パラソルをさして
弁当を食べてはまた泳いだ
浜辺に差す太陽は快晴
海を泳いでいく私
毎日
ただ毎日
息を切らしながら
汗を流しながら
ひたすらに働き
心を
魂をすり減らしては
真夜中の扉の前で
いつも立ち止まろうとする
だけど
....
例によって煩う空間
屋上から堕ちる君の手を掴む
この糞熱い時に
体と体を密着させるなんて
キチガチだろうと答えを出した
喉が痛い苦しく悲鳴をあげるよ
叫び声は神にも ....
なにも感じないでいられたら
雨の匂いに
こんなにも胸を痛めなくても済んだのに
なのに降り続ける雨は
遠ざかる傘の記憶を 小さく落として
....
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