一滴の水の中へと
沈殿してゆくひと夏の青空が
無呼吸で深遠へと降りてゆくので
圧迫された半円の夏空その低空ばかり
飛び回る鴉たち
重たく旋回しては羽を乱散させ
またしても映り込む水の中
....
愛は世界を救う責任を押し付けられて
部屋の隅っこでいじけちまってる
おい、愛とか言うそこのゴミ
何が愛だ
最初から
おじいさんや
おばあさんが
いたわけではないのです
ただ風ばかりが吹く
何もない夕暮れのようなところから
むかし、むかし
と物語はいつも始まるのでした
やがてお話が終わる ....
わたしのからだは
出来損ないのモンタージュで
つぎはぎのでたらめの
パッチワークのモザイクで
ちゃんと機能しないもんだから
子宮にできるはずの内膜が
肺にできちゃったりして
月経の時 ....
ハロー ジョゼ ハロー ジョゼ
背中の傷は 自分でつけた 爪の跡
ハロー ジョゼ ハロー ジョゼ
自意識過剰で 前髪を直しすぎるね
ハロー ジョゼ ....
今思えば
すべてのことは
半径二キロの輪の中で
起こっていた
その中は
やさしい
繭のなかのように
柔らかくて
はじめて刺繍糸を買いに行った日のこと
鮮やかに覚えてる
刺繍で風 ....
縁側で闇を見ている妹の白いうなじが僕を呼んでる
夏野山汗ばみながら駆けてゆくゆくえふめいの妹の兄
鉄塔の錆びた階段昇りゆく100階したから姉とは呼べづ
鏡台に映る妹べにを ....
いるのは煙草で
はちみつオーレ
犬の絵の
木目喫茶店を見つけたら
帰っていい気がしたが
育ったのは
他の人を話す
回数が増す
男の人を前に
白くなって
立って目線で荷物をまとめられ ....
苫小牧の少女が一篇の詩を書き上げる頃
渋谷の未成年たちは今日の居場所を探す
小さなハコで鮨詰めになって揺れながら
沖縄の夜の珊瑚礁を思う
糸井川の漁村の少年は
明日の朝の漁を邪魔 ....
母方の祖母の雪江さんは
70歳くらいでガンで死んで
お通夜の次の日に突然生き返った
その時なぜか僕1人しかいなくて
雪江さんは自分の死化粧を見て
「えらい別嬪さんやなぁ」となぜか ....
私が人様にはじめて認められた文章は、詩ではなく評論であった。それは静岡県民文学祭で芸術祭賞を受賞した。今の私からみると暴論みたいなところもあるし、古くなっているところもあるし、そもそも「評論」と名乗っ ....
玄関を開けると ふっ と
新茶が香る
こんな深夜にも
茶工場はフル操業中で
その明かりだけが夜目に眩しい
工場の前を過ぎる
明かりが背後に遠ざかる
街灯のない土手の草むらで
気の早 ....
フセイン、昨晩おまえの夢を見た
おまえは壇上から民衆に向かって演説をしていた
それはおまえの国の言葉なので俺には聴こえなかった
サダム・フセイン、俺がおまえの夢を見ているとき
おまえは俺の ....
今日が何月何日だか分かんなくなっちゃったって?
自分の存在理由が分かんなくなっちゃったって?
いいよそのままで、
俺も忘れた
いいよ行こう薄着で、 行こう、
海へ。
春の ....
エミリー
あなたと最初に出会ったのは羊水の中
あなたは何も言わず
私を蹴って押し出してくれました
あなたはそれっきりそのままで
難産だったと語る母にあなたのことを訊いてみたのです ....
感情の吐露です
それは美味いのですか
脂がのってるのですか
私は場違いではありませんか
大将、
はちまき ずれていますよ
ずれているのは何だっけ
そ ....
人間はへんなことをする。
ぬけるような秋晴れの空だというのに
古いお城に集まって
中世の衣装を着て
お芝居が始まった。
しずしずと歩む男たちの
おそるおそる歩む女たちの
なんという白 ....
なぜ
目がさめるんだろうって
思ってた
まだ小さなころのこと
ずうっと眠っていられたら
幸せなのに
お金がかかるからよ
カナコさんがわらった
ブランコが行ったり来たりするのは
....
大切な人への手紙は
必要以上に 重い部分をを伝えてしまうから
僕は二通の手紙を作ります
さらけ出す文を一通作って
あなたに出す二通目のほうには
一通目の表面だけを丹念に ひろいあつめ
恥ず ....
父も母も老いた
しばらく会ってないきみの両親も
老いたことだろう
時々ふと、水洗いでかさかさになった
きみの手を握りしめたくなる
というのはかっこのつけすぎかもしれない
十年た ....
ちっちゃくて硬い。
鈍色にくすんだ鉄のかけら。
美しい鳴き声は持たない。
美しい模様もない。
田舎の物置の
米ぬか臭い片隅で
ただ生きてゆくために
もぞもぞと生きている。
生の ....
君とアリス・ドライブの途中
蒼い森の入り口で白い車の息があがった。
僕は
車のボンネットを開けてしたたかに朝の蒸気を浴びる
ナビ・シートでは彼女のソウルが
コールタールの音をたてているんだろ ....
神の乳ちぎりを思いついた俺の天才が怖い
さっそく準備のために買出しに向かう
街は色とりどりの銃弾で溢れ、幸せそうだ
もうすぐ、本当にもう、すぐだ。俺も幸せになる
神の乳ちぎりで俺は幸せ ....
よるはわたしをまたず迫ってくる
気がつくとあたりはくらく
わたしは電気をつけずにふとんにくるまる
ひるとよるの境目が
きいきいと鳴くおとでめをあけると
よるが目の前に立っている
わたし ....
お日様が低くなるとね
輝き出すの
今まで輝かなかったいろんな物が
わかる?
ほら,ここ,
よそよりちょっと高いでしょ
だから
よくわかるの
夏の間は
輝かなかったもの
....
一
あなた
あなたから
あなただから
あたたかだから
あなたあたたかだから
あなたあたたかなからだだから
あたたかなあなたはだかだから
あたたかなあなたはばかだから
あかさかはあさだ ....
西北東三方を山に囲まれ
南東は関東平野に面する内陸県
高崎から下仁田を結ぶ上信電鉄沿線
南蛇井あたりの豪農の何代目かの曽祖父の放蕩がもとで
国を追われて富岡に出てきた祖父徳太郎は
赤貧洗うが ....
1.蛇の体温やその毒を蒸発する空気に塗した
2.あたたかなデザートを食べる前の多少膨らんでしまったカラダを思い返しながら
「あの頃は・あのころは」などと吐き捨てる
3.た し か め る ....
十一月の夕暮れに
落とした財布は
世界の意味にすっかり濡れて
もう使い物にならない
ちょうど
開かれることのない
窓の高さで生きる
ぼくらのように
おとといと昨日と今日の夕焼けの違 ....
かなしい
かなしい
かなしい
音が
三回して
水たまりの鯉は
のたうちまわっていました
おたまじゃくしは
海の中で目を白黒させていました
砂漠では
珊瑚が立ちつくしてい ....
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