ごちそうさま
長く永い みちのりでありました。
ひさしの
蜘蛛の巣ごしにみえる
青空は澄んで高く
深まってゆく秋です。
すこしすこし
冬はちかい
手をあわせる
まなざしは ....
ひし形の歪んだ街に産まれて
時々、綿菓子の匂いを嗅いで育った
弱視だった母は
右手の生命線をなぞっている間に
左耳から発車する列車に
乗り遅れてしまった
毎日、どこかで ....
シャガールの恋人たちよ天蓋に夜を満たして水浴びしなさい
留守にして帰り着いたら生き延びた薔薇が幾つも咲いていました
ビッグバン、インフレーション自鳴琴の箱を開いた誰かがいました
鎌倉 ....
ばあさんが男を一人しか知らないとしても
人生の物足りなさはそこに在るのではなく
今日もやかんの熱湯をポットに注ぐことや
皺だらけの寿命の尽きるのが
再来年でも明日でも変わりはしない
そのこと ....
ねじ式の少年のように
医者を探す為に放浪することもなく
私は医者を見つけることができた
いくつもの検査
結果ステージ2
決して嬉しくない医師のお言葉
手術室へ向かうベッドのアト ....
だあれもいない夜に私はたっています
それは夜のくらさのためではなく
そのくらさが私の影とまじりあうからでもなく
ただ私がどんなものともつながっていない
無縁のものだからなのです
とおくふ ....
ワイシャツにアイロンをかけているうちに
見知らぬところまで来てしまった
さっきまでいっしょにいた妻や娘の姿も見えない
どこか淋しい感じのするグラウンドで
赤勝て
白勝て
子ども ....
憂鬱さも手伝ってペンを持ちノートに向かう
何かが滲み出てくるようにペンはゆっくり動こうとするが
書き始めるきっかけとなった憂鬱さが
邪魔をし始めた
ぼやーっと壁に掛けた絵を観ていると
平 ....
あるかないかの境界線 世界はことばでこうせいされる
くるしいの 後にくるのはなにもないのに そこに名前がほしくなるのは
28 E・ブロンテの死んだ歳 脱バージンのメリットは ....
冷蔵庫ゆっくり冷えていくものが光のような気がしてならない
やっと今一人で立てた足元にいろんなものが這いのぼってくる
ゴミ置き場月光に散る貝殻が泣いてるまぶたに見えなくもない ....
ふとしたはずみで鍵をかけてしまった
ぼんやりと手を見ても、何処にも鍵を持っていない
南風が緩やかに吹いた、首の傾き一つで忘れてしまいそうな
春先の、こと
日向に浮かぶ
そちらの、具合 ....
つかみそこねた指先が
泣いているような
夕暮れ
また
ひとりぼっちの私の
すぐそばを
通りすぎる風
私を遠くへ運んでおくれ
飛び出しそうな心臓の
音にも似ている鳥の
声をきいて ....
100519
満員電車で饅頭を運ぶときは
潰されないように気をつけなさい
あたりまえの注意を背に
饅頭を詰めた蒸籠を運ぶ
人でな ....
五時のサイレンが鳴ったら
みなさんおうちへ帰りましょう
わざとゆっくり歩いて帰る
うちに着くと
やかましいリビングを通り抜けて
疲れきった階段を上がり
自分の部屋に向か ....
手首を切り落とす、
という妄想が頭から離れない。
私の手首を切り落とすのではない。
最愛の人の手首を切り落とすのである。
切り口はなるべくすっぱりと潔いのがよい。
切れ味よく骨まで切り落 ....
虫かごと網を持って
虫をとりに行った
どんなに網を振り回しても
虫以外の生物や
生物ではないものしかとれなかった
とったものは逃がしたり
あったところに置いたりした
元の姿に ....
一斉に
咲け、と命令されたから
季節たちは
夢中になって
駆けぬける
ひかり、が
まぶしいものであるほかに
匂うものでもあることを
なんとなく均衡に
ふりまいて
....
海のはなしをしよう
とりとめもないことでいい
海の青さや広さや深さ
どんなことでもいい
海のはなしをしよう
難しい言葉でなくていい
海の美しさや眩しさを
波のように繰り返しはなそう
....
{画像=100518032154.jpg}
幽霊坂という名前の坂は、東京都内にいくつも点在、
していて、神田淡路町、目白台、三田、田端など、に
ある。これらの幽霊坂は昼なお薄暗く幽霊でも、出 ....
朝焼けの練色が射し込む砂丘に
一人立ち尽くすと僕は日時計になるのです
河口の方向に伸びる長さで季節を知ると
はき出す息の色が
まっくろな海のうえに
浮かぶのです
明日、がどこかではない ....
女の声は殆どが水で出来ている
舐めとればそれはひどく甘ったるくて
お祭りの屋台で食べた綿菓子みたいに
口がべとべとになってしまうんだ
男の声は殆どが煙で出来ている
吸 ....
駆け上がったスケールの天辺で
頭にティアラを乗せられた途端
3オクターブ下の森へと転がり落ちた
黒鍵に打たれた身体に赤い痣が散る
地面に投げ出された
ティアラの真直ぐで静謐な輝きは
脆い影 ....
女王蟻みたいに言葉を産んで君、なにがかなしい?なにがかなしい?
しゃぶられたペニスの先に非常灯 回る回るよ 世界は回る
キャタピラの外れた人がキャタピラの人の波間に漂っている
望 ....
はじめに
僕は一切の宗教を信じていない。信じていないのは、いろいろな宗教にかかわり合いを持ったから。だから、信じてはいないが、影響はされている。小学校の6年間の夏休みの自由研究を仏像研究に費やす ....
社会や自然環境がどうあれ、私の内部は、いま大河が深く静かに流れるようにして、その上空では雷(いかずち)が一輪の微笑を打ち鳴らしている。
今朝の朝日が部屋に差し込んで来た。また、一日を始める時 ....
お風呂につかってとけない私がいる
何はともあれ
すべては静止するまで
花もここに咲いている
ひっそりと
いつだったか
この日が来るのを知っていたような気がする
まぼろしだったか
湯 ....
鳥かごの中で
小さなキリンを飼ってる
餌は野菜だけでよいので世話が楽だし
時々きれいな声で鳴いたりもする
夕焼けを見るのが好きで
晴れた日の夕方は
日が沈むまでずっと西の空 ....
そうして
列車は燃え上がる火山の山腹を廻り
向かい合って座っていた僕たちの
車窓から美しく災害が眺められた
列車のドアから乗客たちが飛び降りていった
飛び降りては降りそそぐ炎のように水鳥を抱 ....
タンスの引き出しを開ける
中には冷たい水族館がある
死んだミズクラゲが二匹、三匹浮いている
私は係員ではないけれど
係員であるかのように網ですくい上げる
これをどうしようか思っていると ....
こんなにいいおてんきはうそなんじゃないかと
うそみたいな白い砂浜に座礁したのは
あれはざとうくじらかしら
おうおうとあしかのようなかけ声で
おとこたちが
丸太を ....
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