水のように流れ
人のように往来した
そのほとりからいくつもの
日常と非情がわき上がり
その沿線はいつもどこか湿っている
鬼門に向かって伸び
裏鬼門へと帰ってゆく
その繰り返しの中から
....
明るさを見失ったら夜。何も言うことがなくなったら朝。
西と南に窓のあるへや。背丈の伸びた笹の葉が揺れる。
道ゆく人に涙をみせてはいけないよ。お前の宝石を生け捕りにされてしまうよ。
朝。夢 ....
さざなみは
優しい顔して
ぼくらをつかまえる
数え足りるくらいしか
ぼくらは夏を
めぐっていない
それなのに、
ぼくらは
もう
夏のなかでしか
生きられないような
生 ....
わたしたちは
ノートを破る
戦争は、ありました
原爆は、おちました
南京大虐殺は、
「無かった」
と言う
きみはいつでも
修正液を用意している
「お前だけだ」 ....
ある日
ということにしておこう
ほんとは
ほぼ
毎日だけど
ある日
ぼくは
割れ目が泣いているのを
見つけた
とてもとてもとても
哀しそうに悲しそうに
しくしくえんえんわ ....
地図でしか知らない街へ歩きたい持てる荷物と君と二人で
黄金の秋の世界でコーヒーを飲みましょうリスを見守りながら
「すまない」といつか未来で言うだろうきっと言われてまた言うんだよ
愛だ ....
夏だというのに歩かされていく
コイン駐車場に
車を止めて 僕は
スーツを着なければならず
営業車で
知らない街を巡っていく 水の
温度はどのくらいだろう 裸で
日差しを存分に浴びてい ....
*
染みるだろう
痛いだろう
秋風は特に
包まれて
ほろほろと
愁思に触れ
湧き立つ淋しさが
吹き毀れる度に
両の手で目を塞ぎ
アスファルトの丘の上
下るように影が放 ....
影長く夕暮れても一人の街
書物に忠誠尽くせば背が伸びる
孤高なる生はち切れて射す秋陽
単独行もの言わぬ行なり詩文よ
言葉の海に網打って意味を捕る
金色 ....
昨夜は いかにも憂いでして
お風呂にも入らずに
眠ってしまったのです
予定のない日です
お昼過ぎ 湯をあびながら
ほうっ、と つばを吐きました
また その ....
ひさしぶりに
裏庭を見ていた
貝殻や
魚の死骸が
たくさん漂着していた
いつのまに
海が来ていたのだろう
命はまだ
こんなにも
満ちているのに
干潮の砂浜を ....
きみの奥にいる四人目を
億千万から探る夜
朝は遠く
遠くで始まるバイク音は
億千万に投函している
億千万の活字のなかに
それは書かれているのだろうか
獏の逸話が本当ならば
とび ....
090825
モビルスーツが欲しい
食べたいだけ食べて
夜は
名刺のように眠る
弾かれたように起き
スマートに走る
美しい心の持ち主と競い
心 ....
ぺっとがすきだから
いきものがすきだから
ぼくらはすきなもののため
どうぶつえんにあつまった
いつでもかれらにふれられるなら
かれらをしあわせにできるなら
ぼくらはすきなもののため
....
夕暮れの縁側
ふと気が付けば
秋はすぐそこで
僕の憂鬱を抱えて待っています
ああ
夏が終わるのか
そう呟けば
少しばかり涼しい風が
心の隙間を
通り過ぎていきます
夏の ....
Mは
もう名前すら忘れてしまった
突然消えてしまった
彼の為のコースがぽっかりと空いた
選手登録表が
一つ埋められなくなった
仕事が増えた
マリファナをやっている ....
パルとニュウはあやとり専門学校で出会った。
二人は毎日仲良く電車に乗って家に帰る。
MP3プレイヤーのイヤホンを二人で耳に片方ずつ着け、
パンクバンド「五体満足」のファーストアルバムを聞きながら ....
今日も現場で草むしりをした
なぜ草むしりをするのかを上司に聞いたところ
みっともないからだそうだ
お客さんが来たときにみっともないからだそうだ
アメリカやフランス発で
雑草の効果的な生か ....
わからないことがわからないよりはましだった
点滴をうたれつづけている腕はもう
黒くしなびてしまった
かつて素描を誉められたうで
私本体はいつだって二の次だ
だったら 。
整い ....
まだぼくが明日と昨日の区別もつかないときの、とってもおさないころのはなし
風邪をひいた。微熱だったけれど息が詰まるようで、頭が靄のかかったようにぐらぐらとしている。何度も眠りに付こうとす ....
天気はさまざまなものを
当たりまえのものであるかのように
人に見せる
そうして見せながらも黙っている
黙っているから人は勝手に騒いで
動き回ってくれるのだ
道の真中過ぎに
坐っているもの ....
日没を追い越したくて海岸線
灯台よ、まだ闇を告げるな
たき火して語り合う手の缶ビール
温んでいくのはだれのしわざか
まっさきに真っ赤に落ちてしまうのも
....
{引用=
盆がすぎ、まだ青々と立つ稲の 鈴花が
まだ咲かぬのかと歯軋りする歯は黄色く毀れ
甘みが乗らなかった梨の実をもぎ
浅く掘った穴に震える足で踏みつけていく
「来年はがんばれよ」 と ....
こうちゃんがいる
淹れたての
紅茶の湯気の向こうにいると
寝言を言って
祖母は祖父を追うように
逝ってしまった
けれども祖父は
こうちゃんという
名前ではなかった
....
信号があるから信号と言った
月が出ていたから月と呟いた
手をとれば手があると知れる
何が分かるわけでもない
たよりない
こわいこわい
話すべきひとつの何かを願う
願いは願ったとた ....
Tさんと僕との距離は引き潮の朝の波打ち際の音
繰り返す君の名前は永遠に波間に揺れる太陽みたい
波に浮く空き缶目掛けて釣針を投げ合うようなぼくらの会話
粒と波波 ....
橋の袂から川に沿って伸びる灯り
向こうは賑やかだね、と言う
川は此方から彼方へ
花火の焼けた火薬の匂い
炎に揺れる小な提灯あかり
再び鳴き始めた虫
るりり、るりり、るりり、
ばあ ....
花垣線に乗った。
駅長さんを呼んでみたが、
もうずいぶん前から、この駅は無人だった。
乗り換えの駅に到着した。
次の電車が来ないので、
改札を通って、待合室で待った。
強風のため、 ....
テーブルの上に置かれたマカロンは
食べるのがもったいなくて
子供の頃大切にしていて使えなかった色鉛筆のよう
ピンク、みずいろ、きいろ、きみどり
思い出せる色はぜんぶ淡い
金魚すくい
浴 ....
知らんぷりしている 愛というものは見えないところにあるべきだから
ハッピーバースデーすらも言ってくれないひとの相談にのっている夜
わたしにもそうして ....
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