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売り場に置かれた固いビニルのソファで
じんじんと騒がしい頭を抱えながら座り
来るのがわかる
身体の内部が裂けて
外へ走りだす時たてる あの匂い
静かに伝わる音を喉で感じる
周囲の通行人 ....
わーい春のさかさま
黄色い花を摘む
卵を買いに行って
転んで帰ってくる
いつかまたここに来ようねって
言ったそばから消えて行った
ちいさく、ずるい人たち
どんな歌も届かないよ ....
○「名言失言」
*「若い内はいろいろあるけれど
結局健康で長生きした者が勝ちだ」
*「長生きはなんのため?
と自問自答しながら年を取っていく」
*「田舎の自治会の会計も
今では ....
人生をする前に
ぼんやりと生きてしまった
そのぼんやりが
いつしか人生になってしまった
いつだって間違ってきたし
正解などわからないまま
年老いて来てしまったが
正解ばかりを選べる人生な ....
手のひらに載せたガラス瓶の中は不可思議な水で満たされていて
米粒ほどの数匹のさかなが泳ぐ
ここで生まれてここで死んでいく
生殖も食事も排泄も
すべてのことがその水を介して完璧にめぐっていくのだ ....
暗い朝に
経を読み
香を焚き
粥を啜り
写経する
日々の修行を守り
仏に祈る姿が美しい
自ら幽閉した世界が心地よかった
ある日の雑踏に赴き
托鉢に出かけた昼下がり
涼し ....
背後から誰かが俺の名前を呼んだ
駅構内の雑踏
立ち止まり
振り返ると
知らない誰かが
知らない誰かと
偶然再会した様子だった
雑踏は人の河
流れを堰き止めた
知ら ....
宙の青さを
みつめていると
静かさが
しみてくる
重いいのちを
・
お空
ありがと
なんでも聞いてくれて
こころがすっとする
今日も生きているよ
・
目をつむり ....
ある日、あなたの背中に
窓があるのを見つけた
開けてみると
普通に外の景色があった
眩しければ鳥になるといいよ
とあなたが言うので
わたしは鳥になって
空へと飛びたつしかなかった ....
南天に座したる青き狼の星よ
我に力を与え給へ
高鳴る心と引き換えに
天を動かす力を
海を裂く力を
大地を砕く力を
愛するものを守らんとする
命の鼓動と引き換えに
我に力を与 ....
高台に古い教会が見える
海辺の街を見下ろしている
結婚式でよく使われている教会
華やかなエネルギーが流れて
街全体が愛で潤う
私もあなたも
生まれ育ったこの街が好き
愛のある ....
あめんぼ、
みずたまりから、
いなくなってしまった、
ごくありふれていた、
虫、
ごくありふれていた、
あなたの、
「いってらっしゃい」や、
「おかえり」、
という声も、
けっして ....
そりゃ そんなに
連続していたら
どれか ひとつくらいは
密室殺人じゃない時だってあるわ
「相撲をとって
負けた方が
真犯人な。」
と、言われ
対戦相手が
四股を 踏むか ....
硝子の抜けた窓を透け
川に浮かべた傘いっぱいに
夕ぐれの街が溢れる時間
暮れる光のにおいに
昨日と明日が
すれ違う今が翳りとなってひそみ
貨車が黙って
曳かれてゆく不安で
すぐに下 ....
さくらの花びらのしわを読もうとしても
他のことばかり考えてしまう
死んだ人の顔とか間違えたこととか
風が強すぎて星が何を言っているのかわからない
唇の開閉に合わせてうなずくだけで眼がうるむ
....
「きのうのよる、ミイちゃんがかえってきたみたい。ほら、からっぽになってる」
わたしは妹に話しかけた、からっぽのミイちゃん用の銀色のお皿を持って。
「ほんとだ、ミイちゃん、かえってきてごはんたべたん ....
欠けたようなよろこびが
胸におちるたび
あなたのかたちになってへこみました
愛だと言い切ればよかったね
宙にうかべたまま
少しずつすりへって
もう見えないのにここにある気持でい ....
長い通院生活も今日で終わる
とある春だった
通い慣れた道、河川工事はまだまだ続くらしい
詳しくは知らないけれど新しい駅が出来るという
パン屋、スーパー、マンションや公園、行き交う人々
駅を支 ....
別の星から
花を摘んできた
それはそれは
大変な旅路だった
いろいろなものを失った
財産や名誉
同行していた友人たち
そしてこころ
すっかり空っぽになって
一輪の花を ....
時間屋という屋台が最近この街にも見られるようになった
もう少し生きたいという人や
あの時間に戻してくれというような人
未来の時を希望する人
今をもっと濃い時間にして欲しい人
二十四時間を三十 ....
丸い皿は丸く 四角い皿は四角く洗えと言われた
白い皿は白く
深緑の皿は深く深く果てしなく緑に洗えとも言われた
少しも汚れていない水盤のような皿たちに
水流をあてると
どの皿も垂直にしか洗 ....
しじまという名の少女がいた
「しじまです」という自己紹介の後の沈黙に慣れている顔だった
この名は代々受け継がれていると言った
姓ではなく名の力を継ぐのだと
数年後
高名な画家が彼女をモ ....
一日一度静かに燃える家があり
今まさに燃えさかっている
そしてその近くの電線に
数羽の小鳥が舞い降りた
いつぞやのにぎやかさはどこへやら
今日の電線の音符は歯が抜けた様相
それでも音符たち ....
情熱はもう涸れてしまった。
一行目では誰もが世界一の詩人になれる。
二行目、三行目からは篩にかけられたように、
詩人だったものはただの凡人に成り下がる。
バレてはいけないよ、夕 ....
みんな 考えることが
おっくうに なったので
頭を はずして
かわりに 肩の上に
鳥籠をのっけて 歩いてた
鞄を抱えた 背広姿の人も
バス停でバスを待つ 女の人も
みんな 肩から上は ....
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