財布の中の、野口英世と目が合った。   箱から出ておゆき、羊たち
呑み込んだ象を吐き出すんだ、うわばみ

立つことが精一杯の星の上で
灯りを消す、点ける
(日の出と日の入りのあわいは僅か)
薔薇を宇宙の風から守る
(風は吹くのを止めた)
穴から落ちればパラレルワールド
次元を捻じらせたうさぎが走る
うさぎの名前は、ない
(名もなきものは虚構)

全てがデタラメだという、あなたの世界が
滑らかに流れているという ....
真っ赤な花が白い雪でくすんでいる
赤が赤になる前に白がそれを遮り
白が白になる前に赤がそれを遮った
花と雪とが小さな組合を作り
花が風景を焼き過ぎるのを雪が消火し
雪が風景と睦み過ぎるのを花が攪乱する
ここにあるのは調和の美しさでもなければ
矛盾の美しさでもなければ
相克の美しさでもない
ここにあるのは冬の迷路
花が雪でまぶされるだけで生じてしまう
脱出できない冬 ....
金メダルはいらない。
銀メダルはいらない。
銅メダルはいらない。


いや、金メダルを作りたい。
いや、銀メダルを作りたい。
いや、銅メダルを作りたい。


いやいや、金メダルという概念を壊したい。
いやいや、銀メダルという概念を壊したい。
いやいや、銅メダルという概念を壊したい。


いやいやいや、もらえるなら金メダルも拒まない。
いやいやいや、もらえるなら銀 ....
外葉をめくったら
白い小さな亀がい
て、脱皮直後の未
防備ゆえのその純
真な甲羅にしばし
じいっと魅入る、
命あるものはみな
平等にそんな生ま
れたてがあった。
キャベツ、それは
花に似た天体。け
れども花には成れ
ない、だからひと
すじなわではいか
ず、ゆえに平和が
ていねいにたたま
れたとてもすてき
なところ。
knoc ....
休暇の日には旅行に行きたい。近場の都市の小さな祭りに参加して、山車を引いたり酒を酌み交わしたりしたい。人々との瑞々しい触れ合いの中でも、自分の中の凍った寂しさはいつまでも融けないことを確かめたい。夥しい人々との交わりの中で僕はいつのまにか寂しさを見失った。寂しさは僕の中に冷凍保存された瞳の明るい少年であり、僕の全ての涙と笑顔の故郷なのだ。冷たい寂しさはいつまでも僕のポケットの中に忍ばせてあるように 雨の日に、僕は雨粒の音を数えている。僕が数えられるよりももっと速く雨粒は降ってくるし、遠くの雨粒の音はよく聞こえない。それでも僕は雨粒の音を数えている。自分の感性の平原、その静寂に一番響く雨粒の音を探している。全てがほとんど同じであろう雨粒の音の中で、この世の正と負との境界を厳密に突くような雨粒の音を、たった一つでも聴き分けることができればいい。

雨の日に、僕は家の中で外を想像し ....
  そらのいろはいつしか
  こわれやすいビー玉ににていた


  むらさきの焔をあげる焼却炉の
  そばにたって、あなたは体を温める
  それは遠いところへいくための
  慎ましくやさしい儀式だ


  ちいさな諍いも
  おおきな哀しみも、一緒に
  あなたのこころのなかで歌っている
  あなたのほほえみににていた
  そらのいろは いつしか
あなたのみらいのために祈らせてください

そう語りかける女の瞳は
目の前の現実であるわたくしではなく
どこか遠い国を見ているようでした

ミライは
いつの間にか
ミイラにすり変わっていくのです
そうして
容易くわたくしは
まだ見ぬ
いつかは誰もが行く国へ
想像を巡らすのです

ゆるいカーヴに沿って
石畳の歩道が寄り添う乾いた街で
靴の細いヒールをひとつ
台無しに ....
一人一人が
一人一人であることを超えて
一つの波打つ連合となり
一人であることを忘れる
言葉は言葉を呼び
笑いは笑いを呼び
そこに何の抵抗もなく
めまぐるしく連鎖する
四人集まって一つの人間ができた
言葉と笑いとまなざしが
骨格と筋肉と神経になって
一つの人間の透明な楽しみの中で
四人は隔たりを忘れる
この小部屋には時間が流れていない
ただの空間のみだ
時 ....
 ふと誰かが呼ぶ声にはっとして玄関に出てみた。やや関西訛りのする初老の胡散臭い中年が立っていた。薬売りだという。昔ながらの熊の謂だとか、小さなガラス瓶に入った救命丸など、まったく利きそうもない薬をずらりと並べた。
 そんなもんいらねぇ、と言おうとするのだが、なんとな�
道路わきで見かけるほとんどの獣は
車に引かれてしまった獣
口をぽかんと開けて
横たわっている
腹が裂けたり
頭が割れたりしているものもあるが
たいていの獣は毛むくじゃらで
血が大きく飛んでいることは少ない
そんなところで寝ていると風邪ひくよ
と声をかける子供がいてもおかしくないような
そのまま剥製にしても事故で死んだとは思えないような
きれいな体をして ....
寂れた街の
忘れられた貯水池のような土曜日の午前に
伸び過ぎた爪を噛み千切っている
零度に焼け焦げる窓辺
表通りでは
ひたすらにエンジンが稼動している
トムウェイツがサーカスの歌をうたっていて
俺は自分自身を分解している
マシンガンみたいにキーボードを打つ癖が治らない
どこかしらのキーの反応が鈍くなる
風になびく
どこかのセールのフラッグみたいに生きることは出 ....
この道は海へ続くという
海へ至り海のいちばん深いところで尽きるという
僕は道端において山脈が途切れる村をまなざし
もう後には引き返せないと強く心に刻む
そのとき確かに海はいくつもあった
いくつかの海の浜辺で引き返し
今度は遂にいちばん深いところへと分け入っていくのだ
そこで道と共に果てていくのだ
海のほほえみがきらめく
この世界で一番美しいほほえみのために
世俗の財産を ....
私の育った施設ではカツと言うとくじらだった。
ごはんと言うと麦が半分以上混ざった灰色に変色したものだった。
米軍が施設に寄付したので、パンは多かった。
長い卓に全員正座してパンを喰らう様は奇妙だったが、くじらのカツの
獣臭さとウースターソースと粗悪なパンが以外に合うのだった。
味噌汁の実は自分達が育てた野菜。くじらをサンドしたパンにあうわけも
なく。年に一回真っ白いおまんまが食卓に並ぶ ....
毎年恒例となりつつある
甥のいる楽団の定期演奏会に行く
残業を断って 実家の母を乗せて行く
年に一度の演奏会だ
最初から見せたい 見たかった

クラッシックなどよくわからないけど
歌謡曲のメドレーやくじ引きでのプレゼント
今年は甥のデュエットの歌も聴けて大満足
一生懸命 拍手をした
すると指揮者が客席を振向き 曲にあわせて
観客の私たちにも手振り身振りで
拍手を小さくとか大 ....
無数の人間が小説を書き

無数の人間が詩を書いている

誰もが自分を知って欲しくて

誰もが自分自身を叫んでいる

でも、その自分というのは何だろうか

君はテレビの中の人間を見て

羨ましいと思った事はあるだろうか?

彼らがあれだけ人気があるのは

「自分」を失ったからなのだよ

誰よりも徹底的に自分を捨て去った者が

自己なきこの世界で ....
また、イスのせい
名のような
となえる声をかかえて {ルビ儘=まま}のみちゆき
昼下がりの野辺は
視界を圧するしろい雲
暑くてあつくて まだ夏のあかし

山本通は一本道
左に傾く舗装に沿って
冬の風に苛まれた樹木らが
{ルビ夏=いま}は「て」の字に荒れて立つ

了解も
理解もつけず
車が窪地に飛び跳ねる
轟音が野面を渡る
あの男のからだを踏み熨して作ったこの道
決 ....
友の庭に咲いていた
白いリラの花が羨ましくて
根元に生えた幼木を譲り受け
我が庭に植えた

植えた翌年は庭の隅に
ひょろりと立つだけで
花をつける気配はなかった

何年もの時を費やし
木は少しずつ成長した
その間に
小学生だった子どもたちも
中学を卒業し、高校生になっていた

ある年
雪で折れそうになりながら冬を越えた木は
たった一つ
白いブドウの実のような花房 ....
つたったあとを
つたうものあれば
つたったあとを
つたわないものもいて

誰かのまなざしのあとを
なぞるものもあれば
誰かの言葉のあとを
なぞらないものもいて

きょうのまことが
あすのうそになっても
すべてゆるされて
競うこともせず
流れていくまま
支流のような小川が
つたう
この窓が好き
死ぬ場所をどうするか
出稼ぎ組の私にとっては重大な問題である

私は、どこで死ぬのか…
高度に進んだ医学界では
見つけた患者をベッドの上以外で
死なせるようなことは許されない

秋に、老いた桜の大木が折れた
ビルの隙間の忘れられた地面に佇立して
春のたびに見事な花を咲かせ
その時だけは、衆目を集めた
その桜が
ビルの谷間を走り抜ける風に
身を任せて倒れた

桜が倒れ ....
苔生した岩が目覚めの胸を押し潰す
浅瀬では精霊の呼び声がまだ響いているので
安らかに泉に潜り込む
カーテンの隙間から立ち昇る朝が角度を傾け
夢の泡を貫いてくる
惜しみながら深部を反転したのち
ようやく現の瀬を踏んだ

テーブルで一杯の水を飲むと
突然、透明な膜が全身を包み�
碧い鉱石を
もう、ずっとながいこと
求めつづけて
彼は

自分が
空に渡っていった
海であることを
憶えていない







夕日の熱は
裏切りという罪を燃やすのに
都合がいいから

だまってみてる

誰もみな
紅く凝り固まって







圧倒的な氷は
つややかな黒色らしい

そういえば

夜空の星は
黒鍵 ....
青春は少年時代の狭苦しい熱をいつまでも温存している。光に満ちた限られた視野のもと全力疾走する衝動は、青春を迎えた若い人々の血液の中に一定濃度で存在し続ける。若者は少年のように庇護されたいし、少年のように傷つきやすい。愛への癒着から自立へ向かい、傷つきながらも傷を癒して皮膚を厚くしていく過程が青春なのである。青春を生きる人々は、同時に少年時代をも生きている。

青春はいつでも晩年に成 ....
父は今日
返事をしなかった
話しかけても

目だけはじっと
私をみていた

まゆみだよ
わかる?

といっても
黙っていた

聞こえる?
と聞くと
うなずいた

声は出せる?
あっていってみて
というと

あ、と言った

気分はどう?
といっても
返事はなかった

眠いの?というと
頷いた

じゃあね
お父さん
またくるからって言うと ....
ものを買うということは
自らの欠けた部分を見誤るということだ
見誤る隙間とは別の高みにものを置くということだ
本が届くコーヒーが届く椅子が届く
だが人は買うことではものを所有できない
所有は長い交渉の果ての思いがけない和解なのだから
しかも所有のときものは既に
当初欲されたものではなくなっている
自己の中に埋め込むために人はものを買う
だがものは自己の中に入り込まない余剰 ....
磨りガラスの向こうの公園で
外国人に話しかけられた
どうやら、フランス語らしいが
何を言っているのか分からない

家に帰ると母親が叫んでいた
ひとつひとつは意味のある言葉
けれど、つなげると耳に入らない
彼女は歌い方を忘れてしまった

テレビを付けたら色とりどりの人たち
カメラ目線で得意気に囀っている
でも、相変わらず理解できない
ぼくの方がおかしいのだろうか

病院 ....
スイス銀行の口座に
100万ドルを振り込まないと
このブスを凌辱するぞという
ペーターからの脅迫電話に対して
隣で縛られている当のブスは
口では助けて〜と言いながら満更でもなさそうだし
電話の受け手のブスの家族にも
「あの娘も今年で40なのに
男性経験のひとつもないんだから
ここは思い切ってペーターに任せてみるか」的な
雰囲気が漂い始めたので
怖くなったペーターは
住所を教 ....
「すみません。おひとりさま1パックまでなんです。」

その日
特売の卵を2パック
かごに入れていた老人は
無情なレジ係にそう言われ
1パック取り上げられていた

解けかけた雪が
昨夜の寒波に凍りついた
危険なつるつる路面を歩いて
背中の曲がった老人は
ひとり買い物に来たのだろうか

日曜日の生協は
開店前から並ぶ人も多かった

老人のかごの中身は
卵のほかに
 ....
会社の帰りがけに車を左折させる
道から少し離れてある実家の林檎畑が見えてくる
減反した田んぼに育てた林檎の木
今はこの世にいないはずだが 父の幻がいる
畑が物陰になり見えなくなると
右側の田んぼ中に 実家のお墓が見える
父さんと 新しい墓標に車の中から叫ぶ
そして実家に寄り 仏壇を拝み母と話す
父が死んでから毎日のようにくり返してる

夜 眠ろうと灯りを消すと
屋根の上を歩く ....
乾 加津也さんがポイントを入れずにコメントしたリスト(476)
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