朝がやってくる
風がやってくる
音がやってくる
虫がやってくる
雨もふりかかれば
猫もやってくる

人がやってくる

外へ広く放たれた
寛容な空間だった

祖母が景気よくぞうきんがけをすると
そこはつややかにひかりはじめる
再生される静かな時間
摩擦され たちのぼる木の匂い
干された布団が
おひさまを吸い込んで
ふっくらとして並んでいる
吊るされた柿は
しな ....
首が回らないのに
辛気臭いが被さったら
最悪
食えないカビの温床

なんとか上げ上げで脱出したら
足を引っ張る奴の
便利屋にはならないよ
いますけど。

陽があたれば途絶える命
じめじめの土壌が嫌なら
陽当たりにおいで

灼熱のアスファルトで
「自然と社会の公正に感謝」出来るのか



「聞く」ことを重視している場所で
育った井の中の蛙は
逆の世界に飛び込 ....
塩を振られたなめくじは 
縮みあがった僕なのです 

縮みあがった僕だけど 
今は一児の父なのです 

一児の父であるならば 
縮みあがった、この体 

自分らしくのそぉりと 
濡れた体をてからせて 

体をのばす、歓びを 
体くねらす苦しみを  

親父のほこりというものを 
示してやらねばなりませぬ 

{ルビ可愛=かわゆ}い{ルビ可愛=かわゆ}い、僕の{ル ....
光が次の
季節を連れてくる
風はそれを
押し戻そうとする
雨が次の
季節を置いていく
人はそれを
なかなか見つけ出せない

ひと雨ごとに
行きつ戻りつしながら
季節は摺り足で
ゆっくりと前へ進む

ひと雨ごとに
立ち竦んでしまう心には
凍てついたしこりが
いくつも出来たままだけれど

ちょっとした素振りから
垣間見えてしまった
その人の本音や

ち ....
 
 君は透き通り始める

 すべての色に
 染まり終えたあとで

 それは
 詩の終わりでもある

 私は君に
 世界を見る

 ガラス越しに出会う 朝のように
さみしいアスファルトに薄い雪化粧
その上にきりとり線を描いてゆきます
おなじ歩幅で 一直線上に
きりとり線を描いてゆきます

振り返らない足あとは
戻らない昨日によく似ている

もうすぐさよならする教室から見えた
誰かが残したきりとり線
きりとって 貼って
出会って わかれて

そんなふうにして 誰かのきりとり線と
また混じり合って 別れてゆく

いびつに歪 ....
都会の人々が
いっせいに蝋燭に
明かりを灯したその夜

ひとつの灯が
消えた

わたし…
それっきり
くちびるは動こうとは
しなかった

友人の一人は
彼女の瞳は笑っていたと言い
別の友人の一人は
哀しげだったと言う

帰り際
それぞれ彼女との思い出を語りながら
夜の暗闇に散って行った

一人の青年が
小枝に止まっている
小さな鳥に気付く

そして ....
(春)


君よ、春にあいましょう
ひときわ人の旅は終わらないから
つばめよ、旅人たちよ
春にあいましょう
私が春であるように、君が春であるのだから
ふたりあえた季節に花が咲けばそれでいい
旅人よ、旅人たちよ
その旅がなんだったのか
あまたの辛苦も悲しみも
美しいばかりの浪漫も
君の旅を私の旅を
この満開の桜の下で語ろう
そしてまたこの満開の桜散るなかで別れよう
満 ....
 


沈黙する為に

僕は詩を書いている

一本の草木となる為に

僕は詩を書いている

自分という存在を忘れる為に

僕は詩を書いている

そして、書いた詩はすぐに忘れる

それは今、僕がこの瞬間に脱ぎ去った

僕という人間の抜け殻だから

そうして、僕はまた

新たな詩を書く
梅雨でわたしは列車に乗った
外はすごい雨で
だけどわたしは
傘を差さずに駅まで来た
わたしの顔から
涙が綺麗に消されていた

夏で蝉が乗ってきた
六年間ずっとホームで
この列車に乗れるのを
心待ちにしていたのだろう
羽化したばかりの羽を
自慢げにはためかせていた

秋で熊が乗ってきた
背中に大きな籠をかついで
その中にはたくさんの実があり
お腹の空いたわたしは
 ....
トイレに詰まった
黒いブツを
これまた黒い
そして細長いスッポンで
グイと押し込んだら
今度はスッポンが取れなくなって
あわてて塩酸で溶かそうとしたら
便器を溶かしちゃった上に
塩酸を痛がった水が氾濫を起こして
逆流ならぬ逆襲を始める
「お前のいろんなものを受け止める生活は
 もうこりごりだ」
そんなこといわないでよ
は通じない
水はトイレの個室を飛び出し
家の中 ....
昔私は直線だったの
――そう。
昔二人は交わらない二本の直線だった
或いは一つの茎から分かれた二つの花
片方は恒星で、もう片方は流星だった
昔あなたはピアノの鍵盤の一つだった
そして昔私は屋根の上で死んだ蜂だった
或いは私は直線だった

雨が降ると
窓を流れる水のひとつひとつのなかに
私はあらゆる可能性を見た
あるべきものとなりえない全てを見ていた

――安心しておやす ....
*

部屋のカーテンと窓を真夜中に開けて夜風を、冷たい夜風を、それはそれは冷たい夜風を
引き入れることが、私の夜中の、十二時の、日課であった

一日の始まりを朝ではなく夜としたことは、まさしく人間における史上最大の、歴史にお
ける、進化における、過ちであることを、多くの人類は知らない

いや、知ることをしようとしない、それを知ること、知ったところで、どうにかなるわけ
ではないこと ....
       うす汚れた魂を
       夜更けに洗う
       洗面器に冷たい水を張り
       ひとつまみの塩でもみ洗う
       不信と後悔がにじみ出て
       真っ赤になった指先に
       偽りと欲がこびりつく
       冷たい水に晒しても
       拭い去ることのできぬものたち
       刻みこまれた嘘とただしさ
     ....
     つぶれたスーパーの裏には
     ひとり郵便ポストが立っている
     その赤いからだは色褪せて
     ところどころが剥げている
     スーパーとともに忘れられ
     それでもそこにあり続け
     待つことしかできぬ動けぬ身
     通りすがりのだれかが
     遠くのだれかに宛てた手紙を
     入れてくれる日を夢みているのだろう   ....
冬の薄暗い回廊を
渡ったところに教室があって
頭痛を抱えたままの君は
そこをめざして歩いていく

壁にはたくさんのテレビがついていて
音もなく瞬きながら
世界中のつらいニュースを
さかんに映し出すけれど

悲しむことも
怒ることも
上手にはできなくて

冬の薄暗い回廊をくぐりぬけ
やっとの思いで
たどりつくと
若い男の先生の 誠実な
地道な 辛抱強い
徒労の日 ....
休みの日だからって
何かすることはない
ヒマだから仕事してたほうがいいかも知れない
生きることは
絶望と希望の
バランスかも知れない
こうやって詩が書けるのも
一応めしが食えて
一応住む家があって
一応時間があるから
そのことに感謝して
今日も生きたい
生きること
それ自体�
机の胎から生まれ
引き出しの乳房を吸い
椅子の胸に眠る赤子


目覚めるたびに
人になってゆく
どこかの
寂れた海岸で
練炭を使って
死んだ人がいた

夜寝床について
一日を振り返る
ほとぼりを使って
その人を
火葬する

根を
泥土と
苔を使って
くるんで丸めて
ひとつの小さい
宿り木を作った
斑入りの薄緑の葉を持つその木は
五月になると
花を咲かせる

消えかけた塔から
細い煙が揺らめきもせず
上へ上へ ....
雪なんて当たり前だった幼い頃

道南の辺境で借家の玄関の硝子戸を開ければ

一階はすべて雪の壁だったこと

なにせ長万部が唯一町の体裁をそなえたようなところで

物流の届かないそこで

僕の妹は生まれてすぐ死んだ

母自体がすでに栄養失調だったが


でもそこで北の海とたまにひぐまも出る山と鮭が僅かに登る小さな川が
僕の世界の原風景だと思っている


 ....
めでたいと言って飲むお酒の肴には、何があうのだろう
悲しみに酔いたい時に飲む酒の、肴は何がいいのだろう

終電車で故郷のお葬式から帰って来た夫が、ネクタイを解きながら
「蕗をちょっと頼むよ」
と、私に言った。
手荷物のなかを見ると、5、6個何やら無造作に入れてある。
手にとって見ると、それは土と雪の匂いを残したままの、固い固いふきのとうだった。
子供のように、一月にこんなものを採っ ....
「ママ!ママぁ!」

真夜中私を激しく呼ぶ声の元に行き
いつも通り右手を差し出すと
大事なお人形を愛でるかのように
それを自分の胸の前でぎゅっと抱き締め
再びすやすやと寝息をたて始める
この あまりにも弱く幼き存在

人の才能を羨み
人の成功を妬み
人の幸せを素直に喜べない
おまけに今日は
感情をむき出して怒鳴りつけ、泣かした
そんな半人前で醜い私でしかあり得ないのに
 ....
ご飯に行きましょう
という言葉が
社交辞令だと
しらなかった
にほんの
とうぶにあって
とざまの
ガザン藩
という
藩が
あると
いう
あやまった
ちしきを
おしえると
がざんと
いうじは
どうかくのかと
きかれない
がいこくごぽくて
うそが
めいはくだから
入院初日十羽鶴でも嬉しい やっぱりかわいいなあとおもって
パンダをみていた
れっさーぱんだ
ちいさいやつ
ちゃいろいし
なんか
かわいい
しまも
はいっているし
かわいいな

おもって
でも
やっぱり
どうぶつだと
しょせん
けものだから
あんまり
かわいくても
いみが
うすくて
にんげんのほうが
いいきがする
どうぶつじゃないし
詩人は不幸を売っている 皆が助けてくれる。
皆が声を掛けてくれる。
皆が救ってくれる。
死んではいけない。

2時間も電話で話して
くれる人がいる。
心配してメールをくれる。
本をくれる。
本当に俺を救えるのか?

自分は楽をしている。
自分は幸せだ。
自分は贅沢だ。
満ち足りているのに
満たされない。

絶望の淵に立たされている。
後ろから押して貰えば
楽になれるのに。
死神は迎 ....
祭りのあとに目を覚ます
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