今年のさくらは覚えていません
きみを想い
あふれる涙を隠すため
うつむいていたから

きみと出会った春でした
あまりにも嬉しくて
あまりにも情けなくて

母さんの力は
この両手だけしかなくて
それはあまりにも非力で

保育器の中のきみは
小さく生きていました
励ますつもりが
励まされていました

今年のさくらは覚えていません
母親なのに
泣いていてはいけない ....
私は亀ちゃんを生んだ

亀ちゃんとは本人の前では決して使わないあだ名

亀ちゃんは本当にゆっくり成長していく

初めて歯が生えたのは一歳三カ月
初めて歩いたのは一歳八カ月
二歳になっても殆ど言葉が出ないし
おむつが取れたのは五歳四カ月
体も弱くて病気がち

その亀ちゃん
水泳を習い初めて一年半経ったのに
まだ顔を水につけることさえ満足にできない
(正確には一度できるよ ....
私達の間を
短い、短い手紙が
暗号の様な手紙が
いったい何往復した事だろう

   ひとつの文字の背後には
   何倍もの文字が群れなして
   文字にならない感情が
   行き場を失った言葉の大群引き連れて

稲妻の様に残像を残す文字が
読む行間さえない文字が
行間読めとかしこまる
逃げるように目を閉じると

   空白ではない空白が
   頬引きつらせて口ゆがめ ....
あなたの顔に
穴が一粒

紐を通してくれと
言うが

どれだけ手繰り寄せても
紐のはじまりが
やって来ない
何も知らない日々が
ぼんやり流れているようだった
知らない恋人と僕は歩き続けていた
街の 住み慣れた世界の郊外にある 沼のほとり
その汚れた沼には誰も来ないようだった 
だけど 僕らも 同じようなものだった


職安に行くことが
同じであればいいのだがと 必死で 勉強している
何も仕事は決まらないけれど
税金は払えず 貯金は目減りしていく 何年も滞納していた
サッカー選 ....
部員よりもマネージャーのほうが多い 下校途中のスクールバスに
突如乗り込んできた男達
怯える少女達に男が
「どの子がマララ・ユスフザイか?」と訊いた
まだ愛くるしさの残るきれいな瞳を持つ少女が指差された
次の瞬間彼女の頭と肩に喰い込んだ銃弾
彼女の瞳が最後に捉えたのは、
自分に銃を向けた男の恐ろしく冷たい目の光かもしれない

医師になることを夢見て
女の子も学校で勉強をする権利を
勇敢に訴え続けてきた14歳の ....
赤ちゃんがいると
赤ちゃん言葉をしゃべりたくなるのは
ちょっとだけ
赤ちゃんになると
楽しくなるから

みんな赤ちゃんの頃があったのに
記憶はないから
二度目の赤ちゃん役をやってみる


牛乳はにゅうにゅう
蜜柑はみいみい
犬はわんわん

赤ちゃんがいなくなると
赤ちゃん言葉もいなくなる
今度は永遠にいなくなる
ばいばい
これは赤ちゃん言葉ではありません

 ....
やまびこは
いつだって待っている

誰かが
自分の方へ
声をくれるのを待っている

やっほーに
どれだけの意味があるのか
ないくてもいいし
もちろんあってもいいのだが
ただ
やまびこはじっと待っている

やまびこは
いつだってさみしがりや

誰かの
真似をしたくて
声をくれるのをひたすらに待っている

やっほーを
返したあとに
人間が耳を澄まして
や ....
「ねえ、こい、と、あい、って何が違うと思う?」
「こ、と、あ、が違うと思う!」
「そうじゃなくて、意味だよ、意味」
「えーっとね、こいは魚で、あいは英語かな」
「そうでもなくて…、えーっと…、つまり、わたしのことどう思ってるの?」
「ユーだと思ってる!」
「だからそうじゃなくて…、もういいよ」
「もういいの? じゃあ、きみこそ僕のことをどう思ってるんだよ」
「え、あたし? うーん… ....
閑古鳥もいない  無音 できないこと
それは人並みのこと
それが多すぎる自分を
鏡に映す

鏡は冷酷じゃない
うそを映してくれる
許すように
そっと

なにもかもを捨てようか
たずねてみた

いのちも?

鏡はたずね返してきた
だから
うん、それもありかな

正直にその
瞬間を

置いてみた
二人のあいだに
すでに鏡は人格を持っていて
いま、わたしは一人じゃなかった

 ....
  真夜中のいきものたち

真夜中の市場にはすでに
大都会の胃袋を満たすための供物が
続々と魁偉な動物のような巨大車両や
あるいは中型や小型のさまざまな甲虫たちによって
到着し並びはじめている

轟音をともなって
怪鳥の跋扈し摩天楼の林立するあかるい昼の世界を避けて
あえて夜行性を身に着けたいきものたちは傍目には
その夜の荷役を嬉々として引き受けているようにも見える

昼 ....
潤みながら飢えている目は
風の日に飛べそうで叩きつけられた原理と似ている
美しくなったら会いに行くわと言う恋人のために用意した指輪は痩せすぎた彼女の指から抜け落ちて朝が来ない

朝は来ない
必要なものもない

渇いてなお飢える目は悲しく
潤みながらも飢える目はもっと哀れで
美しくなったら会いに行くわと言う恋人が会いに来たが判別することができない

いつも
風の日に
飛 ....
連日32℃を超える暑さを
新聞、テレビは猛暑日連続○○日と騒ぎ立て
それでも夕方からいい風が吹く夏だった
こんな風に、冷房ナシの夜はいいなあ
砂浜で波を眺めているみたいで体が安らぐ
空の深さを感じて心も清々しい

冬の間は凛々しい夏の姿に憧れて
カレンダーを先めくりしていたが
今や無慮な太陽にうんざりして
辛気くさい10月を待ったりしている
何故なら精神的にも若さがなければ
 ....
なんでもない詩人たちがけっこう好きなのです
ごく私的でもよいのです
ときに詩的でさえなくとも

ぼくのちっぽけな世界をあたためてくれる
ひとひらの言葉たちがたぶん
ぼくがなんとなくたいせつに感じているものに
ちかいと思えるのです

文部省や詩壇のことは
よくわかりません

ぼくはただひとの人生や
感情や日々の息遣いが身近に
かんじられることが
心地よいのです

そ ....
寝ます 信号機が一つ増えただけだった

それが妙に腹立たしくて

この道を使うわたしはエゴイスト


狭い

直角に曲がることの

繰り返し 運転は苦手


3つ目の突き当たりで気づいた

左手に雑草絨毯を敷き詰めた応接間を


横たわる水道管が3メートル

その中を22年前の夏 或る暑い日曜日

でなければ

21年前の冬 寒い祝日の火曜日でもいい

 ....
体調悪い これまでも
世界の秩序が狂ったことはあった

その結果
それまで うまく棲み分けられていた人々がまじわることで
多くの不都合が生まれたのだった

紙の民の一人であるミス ドリアンは気象の記録者であった
いつもは秋になるときまって大きな台風がやってきて
それらにジェーンだのマリアンだのと名前を書き記すのが主な仕事だった
「今年は何か様子がおかしい」
南方で生まれた台風うずの赤ち ....
ベランダから部屋へもどってくると
なんか照明がばたばた言っている
ぎょっとして上をみると
一匹のトンボが照明に羽をぶつけてばたばたやっているのだ

ぼくはほっとした
ああ トンボね きみでよかったよほんとに
あいつとかあいつとかだったら本当にどうしようかと

しかし 一緒に一夜を明かすわけにもいかず
彼にはお引き取り願わなければならない

我が家には虫取り網なんていう気 ....
出かけるのなら
帽子を被ってお行きなさい
いざという時には
バケツになるから

出かけるのなら
傘を持ってお行きなさい
空から降ってくるのは
優しい雨だけと限らないにしても

出かけるのなら
ハンカチを持ってお行きなさい
行き着いた星で
ぼくはここにいると振れば
誰かがそれに気づくことでしょう

最後の人類を見送ったあと
わたしは
たんぽぽ茶を淹れました
春の ....
カウンターのまえに生簀がある
生簀のうしろで二人の板前が
包丁を手にして僕たちの注文を待っている

弟と〈活定食〉というものを頼んだら
すかさず板前が網を持ち出して
生簀から魚を二匹すくった

板前は華麗な手つきで
あばれる魚をさばいていく
肝が棄てられ
身だけが残る
それらは活造りとなり
僕たちの目の前に運ばれた

魚はピクピクと鰓をふるわせる
生命が絶たれたばか ....
クロワッサンを
ココアにつけて
体も心も温まる。
眠くなり寝床へ

人を大切に思い
人に気を遣って    
人の話を聞いて
人の為にいのる

何もできない僕
情けをかける君
心開いてくれる
人がいて生きる。
                

染み透る冷たい澄んだ水を腕に流して/
仮初の水素の香りと爽やかな森の空気がきみの頤から滲み

戦ぐ風               贖罪の韻律がかすかに

未詳の午後/
華やぐ永遠の子午線―――――――――――静かに手渡された
永劫の韻律と記憶と

未詳の花束

邱の上
湖面を揺らす風たち
静かな鳥たちの群れと移動

抱き抱えられ ....
河田町のランチ時
ショートカットの急坂を
曙橋へと下りる時
おとこ社員を従えて
登って来たのはお地味なあの顔
あべちよ
羽織ったカーデのあいだから
堂々お山の五合目見せて
やっぱ露出度高かった
誰が言ったか
おもむくままもいいけれど
見せりゃいいってもんじゃない
そんな程度の理解は御無用
あべちよあべちよ

どこぞ老舗のお嬢でもなく
バイリンガルでもハーフでもなく
 ....
もしも
かなしみのなかのかなしみで
そだつきがあるならば

そのきは
うみかぜのなかで
ぐっとねをはり
えだをすこしずつのばし
はなをさかせるだろう

そのはなは
きっと
すいしょうのように
きよらかで
とうめいな
じゅうしのはるの
やさしいきもち


いつかどこか
みしらぬ
とおいくにで
ぼくの
なくしてしまった
つばさが
みつかったなら

 ....
{引用= 

口を噤んでいたユリの
吐息はひとつ
羽衣をひろげるように
つぼみを といた
 

消え去らぬ
心の蒼いしおりを 想いださせる
白い芳香


純心を乱す 花のかたらい


  劫という時のながさの 昔
  私が、生まれた
  私は、天とひとつの存在でした

  人待ち顔の花の身は、いつわりの
  うつせみ
  わけなど ありあまるほどに

 ....
卑怯な言葉がザラザラしている 「宇宙樹の秋」
              木の若芽

やわらかな陽の入ってくる林の道
耳をすまそう
耳に手をそえて
鳥の声がひとつひとつ
きわだって聞こえてくる
高い声 低い声
陽気な声 のんびりした声
せっかちな声 甘い声
ひとつひとつの声がいのちのよろこびをうたいたくて
ああして

つやのあるくすの葉
かわらずにこんもり茂り
小鳥の隠れ家になっている
きっと ....
乾 加津也さんがポイントを入れずにコメントしたリスト(476)
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