二十五年前のある日
おとうとの幼稚園の授業参観に行った母が
苦笑いしながら帰ってきたことがあった
なんでも恥をかかされたらしい
その日のテーマは
「お友達に手紙を書く」というものだったのだけど
クラスの中で おとうとを含め三人だけ
まだ字を覚えてない子がいて
その三人は 配られた便箋で紙飛行機を作って
踊り場でそれを飛ばして遊んでいたらしい

おとうとは
未だに漢字が ....
 美しい体操

ロンドンオリンピック男子体操
団体決勝
日本のエースのワキ毛が濃かった
しらたきみたいな顔なのに
まっくろで一分の隙間もない
濃いにも程がある
男のワキ毛は嫌いじゃないけど
美しいとは思わないし
好きな男のも敢えて見たくはない
あれは事後に鼻を押しつけたり
ヒマな時遊ぶ用に生えているものだ
少な過ぎるよりはマシであれ
まるで毛皮を貼りつけたような
そう ....
銀紙の庭にときどきおりてくる
いつも窓辺に張り付いて僕はそれを朝まで剥がしている
境界線上になった手のひらの上で
それはいろいろな季節だった

たしか遠くまで見ていた
ぼやけた山の頂上で
変な言い回しの雲が踊っている
ひとつずつ、折り合いをみてはいるけれど
触れ合うことに慣れながら奥歯に残った感触を気にしていた

セメントから運命まで、絵の具の街と海を割って
強引な生命線が ....
{引用=

少女はあしあとをのこさなかった、水はけのわるい雨にゆるんだ
校庭をあるくときも、また、うすく雪のつもった歩道のうえをあ
るくときにも、わたしは彼女に聞いてみたことがある、それって
どうやっているの? 靴に仕掛けがあるの? わたしにもできない
かな? ねぇ、おしえて ? って、すると彼女は雪がとけていく
みたいに、じゅわっと校庭の土にしみこんでしまって、当然だけ
ど、 ....
ちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちてちて 狂ってしまいそうなくらい暑い日だった
私はカラカラに乾いた喉を潤すためにコーラを買い
そこでしばらく座り込んで街並を見つめていた


強い陽射しにいまにも溶けてしまいそうなアスファルトの照り返しがきつい
目の前をケイタイでなにやら話をしながら通り過ぎる40前後のサラリーマン
額の汗を拭いながら今日もあくせく働いている
大きな荷物を抱え 腰を曲げながら歩くおばあさんの横を通り過ぎる自 ....
わたしM子
様々な姿を見せるけど
青空は一番好き
実は八等身でフリーのモデル
いま就活中だけど、自尊心だけは高いのよね 。
試しに一時間だけプラカード下げて立っていたら(ほらほら)じろじろ見られて、すぐに近づいて来たわ 。
ひとりは化粧品の販売員で、もうひとりは不動産屋の社員
三人目でようやくお目当てのタレントスカウトね 。みんな男性だから、やっぱり美人って徳よね 。
 ....
マツモ○キヨシで買い物をした際、ドヤ顔で出したポイントカードが別のドラッグストアのものだと店員さんに指摘された。
慌てて出し直したが、それすらTカードだったからさすがに苦笑いをされたのだけど、
それはともかく爪が伸びた


年甲斐もなくガリ○リくんを食べたら「当たり」を引いてしまい、ただただその棒を握り締めていた所、見兼ねた後輩が新しいアイスと交換してきてくれ少し嬉しかったのだけど、
 ....
告白したら、わたしメカなの、と、ふられた、前向きにとらえて、体操服を盗むとエージェントがやってきて消されるから考えなおせ、と、いうことだろう、笑顔、汗ではりついた前髪のすきまから数字がのぞいている、なんのヒントかはわからない、確認のためにもスカートめくらせてほしい、チャイムが鳴って、教室に戻るとすでに襲撃をうけたあとだった、女子たちは戦い、男子たちは溶けるか、焦げるか、いずれにしろあとかたもなかっ 母さんの前でうまく笑えない



母さんは昔、私の頬を往復ビンタした

母さんは昔、私を木に縛り付けた

母さんは昔、私の手の甲に煙草の火を押し付けた

何度も

何度も

そして母さんは昔、私をばれない様に殴る男と暮らしていた

けれど母さんは昔、私をきつく抱きしめ『たった二人だけの家族なんだから』と泣いた



母さん



母さん
 ....
ぼくはあなたの死に目に逢わなかった
嫌 死に目に逢いたくはなかった

戦争を懐かしみ笑って話するあなたを
もう死んだのにいまもあなたを憎んでいる

今更あなたの冥福など祈る気持ちは
さらさらない そんな気は一切ない

しかし ひとつだけあなたに問いたかった
新兵で軍靴を履き南方戦線へ送られたとき

あなたに是が非でも訊ねたかったこと
それはあなたは敵であれ人を殺したの ....
救いようがない場所に
気づいたらこんな場所に
バカにしていた当人が
バカにしていた対象そのものに

掬いようがない距離に
気づいたらこんな距離に
蔑んでいた当人が
蔑んでいた対象そのものに

お気の毒にと
愛想で付き合ってくれていた
2人称ではなかったけれど 
3人称というほど遠くない人々
ふと見渡してみれば
1人もいなかった 
もう、いなかった 
ここには
1 ....
「詩人はキスをする時
目をつぶるの?」
という質問が子供から来ました
詩人はキスをする時
目を開けています
何故なら詩人は
見えない物を見るのが仕事
だからせめてキスの時だけは
相手の事を見つめようとするのです
死んでしまった
気づくと
生きていた
今あるからだの半分は
どちらでもないものだった


雁と鴨が飛び立った
海は水紋と
穴に分かれた
曇の音が
止むことはなかった


網を溶かす陽
音は何処にいる
音は常にいる
降るかけら降るかけら
ひとつとして逃がさずに


油と水と筆と紙
物と物と物を燃やして
絵を描くものは描きつづけている
汽 ....
国境の上には雨が降り
それは人が作った小さな仕切りを
嘲笑うかのように降り続け そして
その上空には美しい虹が架かっていた
それを隣国同士の国境警備兵達が
思わず見とれて数分の間、我を忘れていた
その間、彼らの頭の中には
国境も何もなく美しい虹が架かっているだけだった
 
 
(dear L,)
 
 
西窓から
こがね色の蜂蜜があふれ
あけわたされた廊下を
遊び風が濯ぐ
木目の数だけ鈍くきしむ床に
罅割れた指を這わせて
(鳴いている?)
やまない久遠の
練乳のような午睡のうえ


文法的には
あやまちなどない
細身のあなたが横たわる
あわく宿る偽りの水のうえに
おおよそ嘘という語意の
あえかな名前が呼ばれ
遺品のため ....
  不思議
  きみがふれた
  いびつな石ころが今朝、
  柔らかいパンへと変わった
  春の陽を白く吸って



  不思議
  きみがくれた幾つかの
  言葉は辞書にも載っていない
  埃を被った机をあふれて
  ハラリと眠たい音をたてた



  僕は
  いつも見誤って
  駄目にしてしまうけれど
  きみがくれた朝は



  光か ....
…それから劇場が宙を舞うように…
なんて、素敵な気分を味わえば
タキシードだって欲しくなる
一日を斜めにはしる雨
煙をまく緑芝の匂い
車道から電車通りを直線に過る
いつもの美術館はひっそりと佇んでいた。
考えてみても、直立した彫刻のまえで座り込むコンポジションな僕
端からみれば放蕩貴族なそいつ
魚の鱗から瞳を抉り出すような猫の昼間
(さあ、今日は//雨/ ....
乾燥注意報だらけ
途方に暮れる街角
掌がからっぽ、というわけじゃない
     
するべき宛はある
ありすぎる
したい宛はある
ありすぎて
踏み出せない

なにもできない
白々と建物は四角だ
閑散とたんぽぽ多数

駅に来れば
逡巡はもっと重大だ
右か左か

季節がら
桜をはじめ 愛と好奇心まみれ

諦めてバスストップに向かえば
また選択にさらされる
帰 ....
頚椎を曲げて上を向く
陽光に目を細めながら
淡い桃色の群集を目にする
ちらつく青空と雲と花びら
そして 無骨な幹と枝
それらの織りなすコントラスト

胸を広げて楽しむ

無骨な幹に迷子のように
咲く姿を見つけて
微笑んだりする風の強い日
そんな喜びを見い出す

頚椎をS字に戻す
アスファルトの舗道を再び歩む
スニーカーで蹴る地面が
いつもより いいクッションだと感 ....
叔父が息をひきとり、ちょっとだけかける。
バスケットコートにうみがたまり、1999年の、夏のあいだじゅう、ひどく早口の母とぼくは、スコアラーとして過ごしていた。あの黒人選手はスラムダンクをきめ、叔父の骨壷をかかえている父はハンズアップができないままピボットをしているように。ずっと浅瀬だった。
夏が終わる、優勝を逃したのは父だけじゃない。黒人は干からびた珊瑚のリングをゆらしている、そうだ ....
何度もみた
夢のつづきなのかもしれない
しろい腕がとどいた
ビルのうっすらと翳る

ほこりのように 積もっていて
砂のように舞い上がりそうな
潮の匂い
 

 (あ ずいぶんと
  くだったんだね
  この川)


いちど てばなして
二度と開けなくなった
貝のような記憶が
灰色の深い波のうねりに
さらわれてしまえば
いきぐるしくつっかえる
この喉のおもり ....
玉葱を
両手の平に包み込む

しばらくして
光が洩れ
一瞬煙が立つ

永い時間が経ったのだ

うたた寝でそんな夢を見た

そんな風にして待っていればいいのかな
と思った
あの日
お辞儀をした
それも深々と

本当は膝をつき
土下座すらしたかった

あの日
潰してしまい
誰もいなくなった
空っぽの事務所に
お辞儀しかできなかった私

帰る家を失って
待つ家族も去って
今日は声に出しての
ありがとうございましたの
最後のお礼のお辞儀

16年間
仕事納めに
お辞儀をしながら
言ってきたけど
そのお辞儀も
今日で終わり
 ....
 しかし、啓示を受けたのだ。山の彼方へ行くように。地平線へ。





俺という人嫌いは
背中にうっすらとした毛が生え
頭部には後光が輝くよう
髪が一部欠落している。

歩き出しの一歩目は眠り
思考ではなく夢を落下させる
漠然とした風景が雑然とした街に変わり
街外れの交差点を東に思念すると
蜘蛛が道先を歩く、
流れる山道が平坦に続く。

語り手不在の時間の流れが ....
意味もなく
きみの匂いを嗅いでいる
そこには
しあわせだとかふしあわせだとか
そういう類のものは
感じられない

春先のつめたい空気の中
アイスをほおばる
その口元
きすをするのにはちょうどよい
甘く溶けていく
ゆきのようだね

このままいっしょに
生きていこうか
それもまたいいねという軽はずみな
返答
に軽はずみな笑顔でこたえる
武器をもっているのは
どち ....
数多くの死体が目の前に散らばっていた
私は 風景を見つめていた
それは 何のためだろう
誰のためだろう
わからないけれど 街は どこにも 見えない
夜の闇の中を走っていくトラックドライバーを思い浮かべた
わからないけれど 私は 生きていた
彼らの目は 今 どこを泳いでいるのだろう
光る川が そこには 見えるだろうか
あれは 前に住んでいた 街でのこと
そんなことなどどうでも ....
僕たちはDNAの命じるままに歴史を漂流し拡散してきた

朝露に濡れた森の匂いに

木漏れ日の暖かさに

まっすぐ空に突き刺さるメタセコイアの高みに
想いを託してきた


僕たちは恋愛という幻想のなかで種の保存のメカニズムに

操られる哀しい詩人なのだろう


木の実を集め獣を追い集落をつくり女を孕ませ子供を守り

法律をつくり建築術を編み出し生活の調度を整 ....
かしこい子はすばらしいと
うたうおとなたちの心理を
わたしはすりつぶして粉に
したところにたまごを入れ
ホットケーキを作りました。
とても、あまそうな山です
つぶしてみたってなにも、
仕返しがやってこないの
。かれら、大丈夫かしら。

ちいさくそだってしまった、
わたしは、いつもいつも、
ひとに会うたびに「小さい
ね」などと云われておりま
した。それはとてもいいこ
と ....
〇さっき
甲板でその花は無理やり咲いていた、それを、わたしはみていて、本当に生きていたいのだなあ、と、潮風やしぶきや嵐にさらされても、ひとりぼっちでも、咲くんだなあ、それを、わたしはみつけることができたなあ、とおもった。それで、銀行には今朝行って、預金をぜんぶ下ろしてきたよ。

▽むかし
おねえちゃんの短歌がすきだった。決して家族に見せようとしなかった、ことばの配列が、まるでひみつの暗号み ....
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