間抜けな盗賊ヨランの話をしよう。
間抜けな盗賊ヨランは、(勇猛果敢なはずの)ドワーフのくせに、
ベル=ダッジアのように臆病だ、と言われていた。
しかも底抜けにとんまな奴だと。

ある時、ヨラ ....
カーガリンデの魔法使い、エインスベルには、
常に黒い噂がつきまとっていた。
いわく、彼女は黒魔術を扱い、死者たちを操っていると。
いわく、彼女は墓を漁って死体を集め、その身体を切り刻んでいると。 ....
おお、アイソニアの騎士よ、
誰がお前の勇猛果敢さを歌にすることが出来るだろう。
ああ、アイソニアの騎士よ、
お前はその死をもって死をも凌駕した存在となったのだ。

どんなに秀でた吟遊詩人であ ....
Seal-Womanという者がある。
それはアイルランドかどこかの伝説だそうだ。
アザラシのなかには、女性が隠れている。
それが月夜の晩、本当の姿を現すのだそうだ。

しかし、アザラシの娘た ....
空の上界を目指して烏がゆく。
空の上界の玉座には、極楽鳥の羽根が飾られていると言う。
烏はそれを一目目に入れてみたかった。
羽ばたいて、羽ばたいて、はるかな遠みまで来たと思った時、

烏はそ ....
風の王国に、嵐が吹いた。
嵐は幾人かの人の家の屋根を吹き飛ばした、
そして、住む家を失ったしまった人たちがいる。
すべてが運命? わたしたちはそれに耐えなければいけないの?

あがいて、あが ....
あまりにも海に似すぎている。そう、似すぎている。
僕のこころは、だから、慰めを必要としない。
なぜなら、僕はさざ波のようになることもあるけれど、
冬の嵐の海のようになることもあるからだ。

 ....
やもめ男の住んでいるアパートには、
一人のヴァイオリン弾きが暮らしていた。
そのヴァイオリンの{ルビ音=ね}は、
いつでも素晴らしいのだけれど、ヴァイオリン弾きは、

いつでもエチュードだけ ....
月よ、今夜は煌々と世間を照らしている。
ところで、月って何だい?
僕はそれを分からずにいる。
ただ、空に月がいるということのほかに。

月が地球の衛星だということはわかる。
月が海の満ち引 ....
早咲きの紫陽花を見て、立ち止まる。
曇り日のある午後のこと。午後のこと。
神……という言葉は使いたくないのだけれど、
神は早咲きの紫陽花をどう思うのだろうか。

天でも良い。
四季のあるこ ....
カシュクスの巫女は、この世の全ての理を知っている。
過去のことも、未来のことも。
ある日のこと、うら若き青年がカシュクスの巫女の元を訪れて尋ねた、
「永遠の生命を得る術を教えてくれ」と。

 ....
アドスの平原に竜は舞い降りると、
カシュクスの巫女は予言した。
それは塒を求めるためか、
今宵の獲物を狩猟するためか。

カヌカの大地に、生贄に捧げられた少女が立つ。
その心臓を神に捧げる ....
蜘蛛に羽根を捥がれた蝶のように、
貴女は苦しみに満ちた微笑みを浮かべていました。
(海が頌歌を歌う)
貴女は{ルビ他人=ひと}を救っても良いのです、

その心には優しさと慈愛とが満ちているの ....
優しい魚が生まれてくるまで、
君は{ルビ汀=みぎわ}に立って待っているといい。
「生まれ変わったら何になりたい?」と、聞いたら、
君は「イルカ」と答えた。

イルカでは魚を食べてしまうだろう ....
孤独を癒すために、水を飲む。
そのコップにはかつて、一匹の魚が棲んでいた。
それを汚らわしいと思う?
もちろん、水は汚穢などではなく、清澄そのものだった。

いつか生きていたことの証――
 ....
永遠という言葉を求めて、永久という言葉を求めて、
君はどこをさ迷う?
地球の砂漠? 火星の大地? それとも水星?
無限は何のよりどころにもならない。

一つだけ落ちてきた言葉を受け止めて、
 ....
雨、水、魚。……一本の糸でつながれて、
ぴたん、ぴしゃん、しゃらん。
わたしたちにはわからない音楽を奏で合っている。
それを聞いてごらん?

言葉はどこから来て、どこへ行くのでしょうね。
 ....
あなたは優しさに何と話しかけるのですか?
「ありがとう」? それとも「愛しい」?
地球という球体が回って、わたしたち{ルビ人間=ひと}もそれにつられる。
生きていることとは、つねに奇跡なのですね ....
石垣に小さな花が咲いていました。
幼いわたしは傘を差し伸べて、可憐な花を守るのでした。
子供心は純粋で、
哀れという気持ちで、ただその花を見守りたく、

そして、傘の上に不意に見つけた蝸牛を ....
このごろは病臥しているので、
戸外の風景を見つめることができません。
買い物に出かける時も、目に入るのはアスファルトだけで、
鋪石が足元を圧迫しているのでした。

それでも今日は白い色の桜を ....
 透き通った世界の境界には、透明な獣がいて、澄んだ夜を吠えている。明け方の明星を夢みて、夜明けの明けない空に遠吠えをする。透明な獣が夜空を嘆く時、そこには無限の連なりと重なりがあって、透明な獣を優しく ....  ……けだもの、というか、透明な鳥めいた幻がこんな物を落としていったの。

「自由を選び取ることにそれほどの困難は伴わない。それは緩やかな坂道を登っていくようなもの。腰を下ろしたいところで腰を下ろ ....
 詩人というのは、言葉を食べなければ生きてはいけない存在なのかもしれません。でも、今の私には、世界という存在はそれを見ていても言葉を生み出すということをしてくれません。つまり、世界はそこに何かを宿して ....  人と接していると、時にその人の中に自分を見る、ということが起こり得ます。人というのは往々にして、というよりもしばしば相手の情緒やふるまいに合わせた行動の仕方をします。その時、相手が自分の思考や思惑に .... やさしい歌を歌いましょう。
詩ではなく、歌を歌いましょう。
わたしたちは吟遊詩人の、
あどけない無邪気さを忘れてしまってはいませんか?
恋の歌を歌いましょう。
冒険の歌を歌いましょう。
戦 ....
 雨が降り続きます。それは決して晴れない雨です。なぜなら、雨は心のなかに降っているのだから。昨日はバス停でバスを待つ傍ら、ああ、この人はきっと割り込んでくる。と、いう人がいました。案の定、彼はわたしの ....  彼女が問うそのやわらかな言葉にわたしはと惑う。

 その刹那、その物腰、その唇の動き。私の目からは隠されている、それらの上に──彼女は、とても重い。母よ、すべての者の母よ、すべてを失くしたあなた ....
unfinished business.
わたしたちにはやりたりないことがいつでもあって、
それを、
閻魔大王が見守っている。

閻魔大王などと、たいそうなことを言ったものだと、
無限の興 ....
冬の雨が何よりも嫌い。
言葉など出て来ない。ただ、ひたすらしのつく雨。
雨の音に目覚め、雨の音に眠る。
わたしは自動人形のようで、「叫び」というものをこらえている。

人の生きることの苦痛に ....
ほどけゆくリボンの落ち往く先にある、希望という名の広い花園。

ローズティー、浮かぶ花びらふるわせて。貴方は横向き、遠い目をする。

道端のキバナコスモスは無言で、ためらう様があなたに似ていた ....
おぼろん(879)
タイトル カテゴリ Point 日付
間抜けな盗賊ヨラン[group]自由詩3*21/11/18 12:53
エインスベルの賦[group]自由詩3*21/11/18 12:12
アイソニアの騎士[group]自由詩4*21/11/18 12:11
sonnet自由詩3*21/6/14 4:56
自由詩1*21/6/11 23:07
自由詩1*21/5/30 0:05
自由詩3*21/5/20 3:25
自由詩0*21/5/19 6:02
自由詩2*21/5/19 1:42
自由詩2*21/5/18 22:00
カシュクスの巫女[group]自由詩1*21/4/25 7:00
アドスの竜[group]自由詩2*21/4/24 19:01
sonnet自由詩1*21/4/22 17:09
自由詩5*21/4/22 17:07
自由詩2*21/4/20 3:56
自由詩5*21/4/20 3:55
自由詩4*21/4/17 0:41
自由詩3*21/4/17 0:39
自由詩5*21/4/9 19:15
自由詩5*21/4/9 19:12
けものの夢自由詩2*21/4/2 18:25
ひろいもの/おとしもの自由詩0*21/4/2 18:20
世界と時間に対する一つのアプローチ散文(批評 ...2*21/3/27 4:09
コミュニケーションと詩散文(批評 ...2*21/3/27 4:07
吟遊詩人になりませんか?自由詩3*21/3/26 13:01
夢の迷い路自由詩3*21/3/20 22:26
忘却の河自由詩2*21/3/20 22:23
sonnet自由詩1*21/3/18 22:04
自由詩3*21/3/18 22:03
短歌雑詠短歌2*21/3/12 20:08

Home 戻る 最新へ 次へ
7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 
0.12sec.