そのころ、エインスベルは何を思っていただろうか。
自分が誘拐を阻止したクシュリー・クリスティナが、
彼女を憎んでいる、ということは知っていた。
(クシュリーは、魔導士全てを憎んでいる……)

 ....
その通りだった。アイソニアの騎士は、イリアスの元へと向かっていた。
すなわち、クールラントの祭祀クーラスの元へと。
このような陰謀を張り巡らすのは、彼以外にいない、
ということを確信していたので ....
「こうなったら、イリアスを拷問にかけましょう。
 アースランテの内情を聞き出すのです。
 いかに庶人に落とされたとは言っても、
 もとは王族の娘だったのでしょう?」

「いや。少女を拷問にか ....
そのころ、祭祀クーラスの元にも一つの報告がもたらされていた。
すなわち、アースランテがファシブルに宣戦布告をした、という一報である。
「何だと? アースラテが今動く? それは早すぎる……」
祭祀 ....
ハッジズは、アースランテの首都ハンザガルテに帰還した。これで、
アースランテの南方地域、ラレンテンやギージェの治安は安泰だろう。
後は、召喚獣の数を増強し、ファシブル軍を完全に排斥する。
「マリ ....
国母マリアノスは、ほうほうの体でファシへと帰り着いた。
ファシは、王国ファシブルの首都である。
大臣たちが、マリアノスを迎えた。しかし、
「この女王、いつまで生きられるか……」大臣の一人は呟いた ....
ファシブル軍の兵士たちは、何が起こったのか分からなかった。
辺りには、闇の結界が張り巡らされていた。
そして、少人数の集団から駆逐されていく。
ラーディガンは、この戦果に満足だった。

(ラ ....
「マリアノスよ、売女め! お前は今どこにいる。
 後陣に控えているのか?」ハッジズは叫ぶ。
(マリアノス様を守るのだ)──ファシブルの兵士たちは覚悟を新たにした。
そして、怒涛の勢いをもって、ア ....
そして、ハッジズ・ア・ラ・ガランデは言った。
「ファシブルの国母、マリアノスよ。お前は、
 真の臆病者になったのか。この戦いの地に、出でよ。
 王の登場なくして、何のための戦いか!」

マリ ....
ラーディガンは、数多のドラゴンを召喚した。
アースランテ軍の形勢逆転である。
ファシブル軍の兵士たちは、ドラゴンの炎によって焼かれてゆく。
その時、ハッジズは自軍の勝利を確信していた。

( ....
この世界において、戦いはまずは魔導から始まる。
最初は召喚獣を率いて、前線を突破することが常道なのである。
しかし、アースランテはその常道を覆した。
敵の魔導士たちを、弓矢によって打倒し、その魔 ....
その時、アースランテに対峙していた、ファシブルの軍勢は二万。
対して、アースランテの軍勢は八千ほどだった。
アースランテは、ファシブルの軍勢と、
カガイデの丘にて対峙した。

そこは、アース ....
「父上。あなたの方策には問題があると存じます」
クレール・ア・ラ・ガランデは言った。
「今ここでファシブルと対決することが、適切でしょうか?
 まずは領民を安んじ、安寧を図ることこそが得策だろう ....
しかし、ハッジズにはそれでも捨てられない野心があった。
アースランテをライランテ大陸一の国家にする、という思いである。
彼の価値基準によれば、クールラント、ラゴス、
そしてファシブルは滅ぼされね ....
そのころ、ハッジズ・ア・ラ・ガランデは、
息子であるクレールとともに、ファシブルの軍勢と対していた。
それは、アースランテの国内における、
ファシブル領の領民たちが反旗を翻していたからである。
 ....
その時、クーラスの密使が部屋の中に入ってきた。
密使は、祭祀クーラスの耳元に何やらささやく。
祭祀クーラスは、にやりと口の端を歪ませた。
「イリアス殿。どうやら、貴女の期待は裏切られるようです」 ....
少女は泣いていた。
それは、何年ぶりの涙だったろうか。

少女は、泣いていた。
物心がついて以来、

少女は己の無力を、
顧みたことがなかった。

しかし、今は涙の時だ。
少女は、 ....
夢はまぼろし。夢はどこにあったのだろうか?
わたしの心のなかに? わたしの未来に?

問うても詮無いことを、今さらのように言葉にして、
わたしは言葉の轍を行く。

そうね。そうして、どこへ ....
月の満ち欠けに思いをたくして、
わたしのこころは欠け、
また満ちる。

思い出のなかに、幸福はあったか?
いや、幸福などというものに、
価値はあったか?

月の満ち欠けに思いを尋ねて、 ....
「あなたには一つの弱点があります。{ルビ祭祀=ドルイド}クーラス。
 それは、あなたがわたしを十三歳の小娘だと思っていることです。
 わたしは、数々の秘密の教えを受けてきました。
 アースランテ ....
イリアス・ナディは自分の運命を受け入れていた。
アイソニアの騎士が己の命を全うしていても。
十三歳という年齢を比しても、アイソニアの騎士は、
世界の安寧を守ろうとしていたのである。

「グー ....
「何度でも言います。わたしは世界の行く末の鍵にはなりません」
「ははは。そう思っているのは、あなただけですよ。
 現に、アイソニアの騎士は、この場所へと向かっている」
「グーリガン様……」

 ....
「アースランテは負けません。クールラントにも、
 ラゴスにも、ファシブルにも……」
「あなたは、一つ事を忘れています。ヒスフェル聖国です」
「ヒスフェル聖国……」イリアスは息を呑んだ。

「 ....
「クールラントは、中立を保とうとしています」祭祀クーラスは言う。
「そのためにも、アイソニアの騎士を我が国に取り戻したいのです」
それが嘘だということを、イリアスは即座に見抜いた。
「あなたは何 ....
「あなた方がアイソニアの騎士と呼ぶ人物、
 グーリガン様は、私情のために国を売る人物ではありません。
 今この瞬間も、あなたたちを倒そうとしているのです」
「それは、あなたの懸想による妄言ですね ....
麻袋の中から出されたイリアスは、数日食事を取っていなかった。
その表情は、憔悴して青ざめている。
その眼前に、祭祀クーラスが彼女を{ルビ睨=ね}め付けている。
「なんだ、こんな子供か! アイソニ ....
二日の時が経った。フランキスは、
再び祭祀クーラス邸を訪れていた。
そこで交わされる密談は、今後のクールラントの行方、
そしてライランテ大陸の行方を必ず左右するはずだった。

その時、祭祀ク ....
「ところでだ、フランキス。お前はよもや、
 クシュリーの身を奪い損なったからと言って、
 わたしを裏切ろうとしてなどいないだろうな?」
そのクーラスの言葉に、フランキスは思わず青ざめた。

 ....
「先ほど、アースランテからの早馬が到着しました。
 イリアス・ナディの身柄は、クールラントへと向かっているとのことです」
フランキスは、祭祀クーラスの激昂に触れないように、細心の注意をもって言った ....
「それが、クーラス様。思わぬ邪魔が入ったのです。
 戦士エイソスの邸宅には、エインスベルがおりました」
「なんだと?」クーラスが顔色を変える。
「あれは、リーリンディア監獄に幽閉されているはず… ....
おぼろん(879)
タイトル カテゴリ Point 日付
いくつもの運命(二)[group]自由詩1*23/1/8 14:25
いくつもの運命(一)[group]自由詩1*23/1/6 23:23
二つの知らせ(三)[group]自由詩1*23/1/6 23:22
二つの知らせ(二)[group]自由詩1*23/1/6 23:22
二つの知らせ(一)[group]自由詩1*23/1/5 23:13
ハッジズの野望(十)[group]自由詩1*23/1/5 23:12
ハッジズの野望(九)[group]自由詩1*23/1/5 23:10
ハッジズの野望(八)[group]自由詩1*23/1/4 22:37
ハッジズの野望(七)[group]自由詩1*23/1/4 22:23
ハッジズの野望(六)[group]自由詩1*23/1/4 22:21
ハッジズの野望(五)[group]自由詩1*23/1/3 22:06
ハッジズの野望(四)[group]自由詩1*23/1/3 22:06
ハッジズの野望(三)[group]自由詩1*23/1/3 22:05
ハッジズの野望(二)[group]自由詩1*22/12/30 21:28
ハッジズの野望(一)[group]自由詩1*22/12/30 21:27
イリアスの矜持(九)[group]自由詩1*22/12/30 21:26
クリスマスの夜に自由詩5*22/12/28 16:11
Everything is okay.自由詩3*22/12/28 16:10
幸福のありか自由詩3*22/12/28 16:08
イリアスの矜持(八)[group]自由詩1*22/12/26 15:13
イリアスの矜持(七)[group]自由詩1*22/12/26 15:12
イリアスの矜持(六)[group]自由詩1*22/12/26 15:09
イリアスの矜持(五)[group]自由詩1*22/12/25 14:27
イリアスの矜持(四)[group]自由詩1*22/12/25 14:26
イリアスの矜持(三)[group]自由詩1*22/12/25 14:25
イリアスの矜持(二)[group]自由詩1*22/12/24 13:09
イリアスの矜持(一)[group]自由詩1*22/12/24 13:07
祭祀クーラスとフランキス(四)[group]自由詩1*22/12/24 13:05
祭祀クーラスとフランキス(三)[group]自由詩1*22/12/21 12:44
祭祀クーラスとフランキス(二)[group]自由詩1*22/12/21 12:43

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