「あなたはなぜ、『言語崩壊』を引き起こしたのですか?
 エランドル様。それによって、人間社会が滅びることなど、
 分かっていたでしょうに?」──この時のヨランは、探求心を満たすというよりは、
世 ....
「そうだ。わたしは世界だ」──オーマルに憑依したエランドルの声が言った。
「エランドル様。あなたはいったい何をお求めですか……?」
ヨランは、その一言一言が、何を招くのか、といった恐れに苛まされな ....
「お待ちください、アイソニアの騎士様。そして……、
 エランドル・エゴリス様」盗賊ヨランは、その時うやうやしく首を垂れた。
そのヨランの振る舞いに、アイソニアの騎士たちも疑念を抱く。
「おい、こ ....
「ふん。世界だとか何だとか、そんなことが世迷言であるのは、
 俺の経験が教えている。お前は、女だ。男の声を発している女だ。
 俺は、その影に隠れた事実があるなどと、信じはしない。
 化けの皮をは ....
「わたしには、かつて愛している者があった」──その声の主は言った。
今、オーマルは単なる傀儡に過ぎなかったのだ。
その声は、世界の秘密を明かそうとしている。
「今、汝らの時と、我の時とは合一する ....
その時であった。一行の伴である、オーマルが言った。
「我に従え。戦士よ、騎士よ、魔導士よ。今から、お前たちはわたしの僕(=しもべ)となる……」
その声音は、女性のものではなく、男のものだった。
 ....
「話が分かりにくい? そうでしょうとも」と、ヨランは言う。
彼は、今アイソニアの騎士を始めとした一向の、質問攻めにあっていた。
「おい、ヨラン。さっきのあれは何だ?」
「おい、ヨラン。お前は魔導 ....
その者の名を、今は言おう。エランドル・エゴリス──
世界の「再創造者」の名前である。しかし、こう言ったところで、
この言を聞く者には何も伝わるまい。だから、言おう。
エランドル・エゴリスとは、神 ....
しかし、そんな憂いとは別に、アイソニアの騎士は、
ヨランの肩を軽く叩いて言った。「そんなに消沈するな、盗賊。
 お前が活躍する機会は、これからいくらでもあるぞ?」と。
そして、呵々として笑う。
 ....
(もっと慎重を期しておくべきだった)と、ヨランは思う。
この世界ヨースマルテにおいては、魔術とは、それが秘匿されているがゆえにこそ、
一定の理解を得られているのである、と。
(もしも魔術が暴走し ....
「敵を滅却したのであれば、それで良いではないか。
 思いのほか、あっけない敵だった」そう、アイソニアの騎士は言った。
そこには、ふてぶてしいという感じは見当たらなかった。それは、歴戦の勇士の言葉で ....
「ヨラン、お前?」と、アイソニアの騎士は叫んだ。
「騎士様。……その疑念よりも先に、お答えを述べさせていただきますね。
 わたしは、魔導士ではありません。ですから、先ほど放ったのも魔術ではないので ....
ざざん! という衝撃波が、一行を再度襲った。
アイソニアの騎士は、依然としてエビ・グレイムの体に取りついている。
ヨランは、「ちっ」と舌打ちする。この盗賊がその心をかいま見せることなど、
滅多に ....
アイソニアの騎士の苛立ちはもっともだった。ヨランですら、いらいらしていた。
だが、オーマル・リケイディアの言葉には、
「強い者は強い、弱い者は弱い」といった、冷めた響きがあった。
彼女は何がしか ....
いくつもの閃光が、エビ・グレイムの目から放たれた。
それは、ヨランたちが立っている大地に、火柱を生む。そして、衝撃。
──衝撃波は、盗賊ヨラン、アイソニアの騎士、そしてエイミノアを薙ぎ払った。
 ....
だが、アイソニアの騎士はぶつくさと一人ごちていた。
「エインスベル……世界の救い。そこに立ちはだかる『魔女』という言辞……」
それは、エインスンベルのあるべき姿と、厭うべき姿とを、
重ね合わせた ....
「過ち? それは奇妙な言葉です。あなたがたはすでに、ダルザジアの群れを追い払いました。
 それは、このハーレスケイドにとっても良きことです。
 わたし、オーマルは、この世界の代表として感謝いたしま ....
読者にはまず、このことを思い出していただきたい。すなわち、
ハーレスケイドは時間が止まった世界である、と。
ここ、ハーレスケイドで何万年の時間を過ごそうと、
現世であるアースレジェでは、何秒の時 ....
アイソニアの騎士、そしてエイミノアも、オーマルの前に控えた。
彼らの振る舞いが、今後の彼らのハーレスケイドでの探索にも、
影響を及ぼすと考えたからである。──それは賢明な判断だった。
アイソニア ....
読者は迷うかもしれないが、ここは再びハーレスケイドである。
盗賊ヨランと、アイソニアの騎士、そして、エインスベルの従卒であるエイミノアは、
眠れぬ夜の、そして翌朝を向かえていた。
あくびとともに ....
「迷いは良い。お前は死すべき存在だ……」と、エインスベルは言った。
右の手には、クォータースタッフを携えている。
魔導士にしてはあるべからざる、戦闘的なあり様だ。
フランキスは、その右を、その左 ....
──「お前は誰か?」と、言った者があった。
フランキスは慄然とする。それは、エイソスか? それとも彼の侍従か?
いずれにしても、「わたしは誤った」と、フラン騎士は思った。
祭祀クーラスから言い使 ....
再び時と所は変わって、ここはエイソス邸の前である。
フランキス・ユーランディアは、エイソス邸の塀の影に隠れていた。
(わたしは、祭祀クーラス様の辞令を受け賜った。
 この国のため、祭祀クーラス様 ....
「くよくよ悩んでいても仕方がないぞ、ヨラン」
一行の誰よりも早く、己を取り戻したのは、アイソニアの騎士だった。
さすがに、彼は状況を読み取る能力に優れていた。この時も、である。
「明日になれば、 ....
ヨランの殊勝な答えに、オーマルは静かに頷いた。
(さて、ここでいくら時間稼ぎをしても、仕方がない。
 エインスベル様の処刑は、数日の後に迫っているし、
 ここ、ハーレスケイドでは、時というものが ....
「あの方」……とは、ヨランの推測によれば、一人の魔導士のことを指している。
しかし、その人物がここで登場してくるということは、ヨランの予想外だった。
(この女は……何者なのだ?)と、ヨランも考える ....
「あなたは、エインスベルという者の命が大事だと、おっしゃいましたか?」
アイソニアの騎士の胸に刺さるような言葉を、オーマルは発した。
「そう……。そうだ。エインスベルの処刑は、数日の後に迫っている ....
「対価? それは何なのだ?」──威厳と自信を取り戻したかのように、
アイソニアの騎士が言った。彼は今、アースランテの千人隊長という、
身分などかなぐり捨てたようであった。彼はただ、エインスベルの一 ....
「間一髪でしたね、騎士様」ダルザジアを退けた後に、ヨランは言った。
「ふむん。単なる偶然だ。お前はそんな武器をどこに隠していた?」
「背嚢にです」アイソニアの騎士に対して、ヨランは軽く答える。
 ....
「こんなものがあれば、魔法など必要ないではないか!」忌々しく、アイソニアの騎士が呟く。
その傍らで、エイミノアは言葉を失ったままだ。そして、ヨラン。
「この世界には、剣や魔法のみがあるのではありま ....
おぼろん(879)
タイトル カテゴリ Point 日付
世界の真実(八)[group]自由詩1*22/9/26 19:18
世界の真実(七)[group]自由詩1*22/9/26 19:16
世界の真実(六)[group]自由詩1*22/9/25 18:16
世界の真実(五)[group]自由詩1*22/9/25 18:15
世界の真実(四)[group]自由詩1*22/9/25 18:15
世界の真実(三)[group]自由詩1*22/9/24 17:44
世界の真実(二)[group]自由詩1*22/9/24 17:43
世界の真実(一)[group]自由詩1*22/9/24 17:42
ハーレスケイドでの戦い(十二)[group]自由詩1*22/9/13 21:21
ハーレスケイドでの戦い(十一)[group]自由詩1*22/9/13 21:20
ハーレスケイドでの戦い(十)[group]自由詩1*22/9/13 21:20
ハーレスケイドでの戦い(九)[group]自由詩1*22/9/12 20:11
ハーレスケイドでの戦い(八)[group]自由詩1*22/9/12 20:09
ハーレスケイドでの戦い(七)[group]自由詩1*22/9/12 20:08
ハーレスケイドでの戦い(六)[group]自由詩1*22/9/11 19:28
ハーレスケイドでの戦い(五)[group]自由詩1*22/9/11 19:28
ハーレスケイドでの戦い(四)[group]自由詩1*22/9/11 19:26
ハーレスケイドでの戦い(三)[group]自由詩1*22/9/10 19:17
ハーレスケイドでの戦い(二)[group]自由詩1*22/9/10 19:16
ハーレスケイドでの戦い(一)[group]自由詩1*22/9/10 19:16
世界の変化、あるいは彼らの戦い(三)[group]自由詩1*22/9/8 19:02
世界の変化、あるいは彼らの戦い(二)[group]自由詩1*22/9/8 19:01
世界の変化、あるいは彼らの戦い(一)[group]自由詩1*22/9/8 19:00
ハーレスケイド、探索(九)[group]自由詩2*22/9/7 18:12
ハーレスケイド、探索(八)[group]自由詩1*22/9/7 18:11
ハーレスケイド、探索(七)[group]自由詩1*22/9/7 18:11
ハーレスケイド、探索(六)[group]自由詩1*22/9/6 17:39
ハーレスケイド、探索(五)[group]自由詩1*22/9/6 17:38
ハーレスケイド、探索(四)[group]自由詩1*22/9/6 17:37
ハーレスケイド、探索(三)[group]自由詩1*22/9/5 3:39

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