「他国にハーレスケイドのことを悟られてはならぬ」
「はい。しかし、オーバ・ニーチェも動き出しているということです」
「クールラントの諜報機関か。もしや、我が国の人間のなかで、
 オーバ・ニーチェ ....
「ドラゴンたちは、ハーレスケイドから降臨したのです」と、オスファハン。
「やはりか。しかし、ハーレスケイドのことは、我が国においても、
 一部の人間にしか知られていない。公にはなっていないことだ」 ....
ライランテ大陸では、すでにあちこちで戦火の炎が立ち上っていた。
ドラゴンたちを倒す者、逆に味方につける者、
それらの者たちが集まって、戦争とも内戦ともつかない様相を、
各国は呈していたのである。 ....
「この一か月、いいえ、正確には二週間の間に分かったことですが……」
ヨランはもったいぶった口調で再び話し始めた。
「イリアス・ナディは、カラスガラの北辺にある
 バルケスの塔という場所に幽閉され ....
「とにかく私は、オーバ・ニーチェに当たりをつけてみます。
 戦争が未だに激化していない現在なら、イリアス嬢もきっと無事でしょう。
 祭祀クーラスは、依然として彼女を駒として考えていると思えます」
 ....
「それが、エランドルに利益をもたらすとは思えないが……」
「エランドルの思いには、隠された一つの秘密があります。
 エランドルは、ククリスというかつての恋人の復活を望んでいるのです。
 そのため ....
「おい、ヨラン。イリアスが誘拐されてから一か月の時が
 経とうとしているのに、なぜ未だその所在がつかめないのか?」
「クールラントでは、今オーバ・ニーチェという秘密組織が、
 幅を利かせています ....
イリアス・ナディは、バルケスの塔という廃屋に幽閉されていた。
この一か月間、祭祀クーラスはイリアスの存在を隠し続けていた。
しかし、アイソニアの騎士は容易にその姿を現さない。
「アイソニアの騎士 ....
アイソニアの騎士は、この混乱の中で何をしていたのだろうか。
アースランテにも諜報組織はあったが、
アイソニアの騎士はクールラントに潜入して以降、
イリアスの所在を掴むのに苦労していた。

「 ....
その間にも、水面下では様々な野望が渦巻いていた。
ヒスフェル聖国では、ひそかにアースランテとの和平を画策していた。
ファシブルは、アースランテの軍隊を防ぐので手一杯だった。
クールラントの祭 ....
中でも、アースランテに降臨したドラゴンたちは強力だった。
彼らは、火炎によってファシブル、ラゴス、クールラントによる
占領地を焼き払っていく。そこに慈悲はなかった。
ハッジズは、多少の自国民の犠 ....
ドラゴンたちがライランテ大陸に現れて一か月、
各国の魔導士たちは、ドラゴンを手なずける術を手にし始めていた。
中には、ドラゴネイアスという、人に変身できる種族がいた。
彼らは、各国の魔導士たち、 ....
ドラゴンたちは、それぞれに快適な場所を塒として求める。
ドラゴンたちが現れたのは、アースランテばかりではない。
ファシブル、ラゴス、クールラント、そして、
ライランテ大陸の東半分に広がる、ヤーコ ....
各国がそれぞれの思惑に捉われている間、
アースランテ、いやヨースマルテには天変地異が訪れようとしていた。
それはもちろん、エランドルの仕業である。
ライランテ大陸の各地に、ドラゴンたちが舞い降り ....
議論の行き先が見えない時、そこに必要とされるのは、
確かなカリスマを持ったリーダーである。すなわち、ラゴスの国王アウゼル。
「両者の言うこと、たしかに分かる。このライランテ大陸においては、
 ラ ....
「そのエインスベルです。我が国の諜報機関、ヨアリブによれば、
 エインスベルは、クールラントではいささか厄介な立場に立っています」
「知っている。監獄に収監されているのであろう?」
「されていた ....
「それよりも気にかかるのは、ヒスフェル聖国の動向です」
ケンパは言葉を継いで言った。「かの国は、以前からクールラントとは
 密接な関係を保っていました。しかし、ここへ来て、
 アースランテとも懇 ....
ラゴスの議会は、ケンパ・ハルラージャという有力者が治めていた。
ケンパ・ハルラージャは、軍務大臣であるシュランク・エルベとは、
犬猿の仲である。一方が西と言えば、他方は東と応える。
アウゼルは、 ....
ラゴスがライランテ大陸に占めている領土は、存外小さい。
アースランテの四分の一、クールラントの六分の一、といったところである。
しかし、西の大陸であるコーカタンにその十倍の領土を持っていた。
そ ....
アースランテがファシブルと事を構えたという報は、ラゴスにも伝わっていた。
だが、軍国ラゴスは静観の構えを保っていた。
ライランテ戦争後のアースランテ四国統治が、
このままでは揺らぎかねない、とい ....
祭祀クーラスは、アースランテとファシブルが接近しつつあることを知らない。
イリアス・ナディの身柄を鍵として、アースランテとの連合が可能である、
そう判断していた。その判断は、甘かったと言えるだろう ....
二万の軍勢が、八千あまりのアースランテ軍に敗れて以降、
ファシブルの議会では、アースランテとの和睦が取り沙汰されていた。
「これ以上、被害を大きくして、どうなさいますか?」
「アースランテの土地 ....
戦士エイソスは、直接祭祀クーラスの元を訪れることも考えていた。
(クシュリーやイリアス・ナディを攫わなくとも、
 物事を良い方向に好転させるすべてはあります。
 それは、エインスベルに恩赦を与え ....
エインスベルは虹の魔法石を持っているという。
それは、すべての魔導士たちの魔力を無効化する魔法石である。
ならば、エインスベルがヒアシム・カインの魔法を発すれば、
戦いの決着は一瞬でつくのではな ....
戦士エイソスは己が無力を感じて苛立っていた。
ランランテ戦争における無力、クシュリーの誘拐に関する無力。
世界を動しているのは、自分ではない、と感じる。
では、誰が世界を動かしているのか?

 ....
エインスベルの表情は、泰然自若としたものだった。
いや、実際には超然としていた、と書いたほうが良いだろう。
叔母ミーガンテへの復讐、ライランテ戦争、今回の監獄からの脱出、
事が起きるごとに、エイ ....
戦士エイソスは戸惑っていた。クシュリーが
これほどまでにエインスベルを憎んでいるとは、思わなかったのである。
彼は、初めてその妻に対して疑念を抱いた。
あるいは、彼女こそクールラントの運命を握っ ....
クレールは、ハッジズ・ア・ラ・ガランデの嫡子だった。
ハッジズには五人の子供たちがいたが、
クレールはそのなかでも最も武勇に優れていると言われていた。
しかし、政治力については未知数である。
 ....
「さて、どうでしょう?」今やフランキスは、元のさやに戻っていた。
祭祀クーラスを今暗殺する、という考えは完全に捨て去ったのである。
しかも、彼は自信家だった。アイソニアの騎士やエインスベルなど、
 ....
「それでは、こうしてはどうでしょうか?」フランキスは言った。
「アースランテのハッジズに親書を送るのです。
 王位継承権第九位のイリアス・ガ・ラ・ハルデンを預かっている、と」
祭祀クーラスは怪訝 ....
おぼろん(879)
タイトル カテゴリ Point 日付
オスファハンの戸惑い(三)[group]自由詩1*23/1/27 23:19
オスファハンの戸惑い(二)[group]自由詩1*23/1/27 23:18
オスファハンの戸惑い(一)[group]自由詩1*23/1/26 22:49
イリアスを尋ねて(六)[group]自由詩1*23/1/26 22:48
イリアスを尋ねて(五)[group]自由詩1*23/1/26 22:48
イリアスを尋ねて(四)[group]自由詩1*23/1/25 22:35
イリアスを尋ねて(三)[group]自由詩1*23/1/25 22:34
イリアスを尋ねて(二)[group]自由詩1*23/1/25 22:32
イリアスを尋ねて(一)[group]自由詩1*23/1/24 22:21
ドラゴンたちの降臨(五)[group]自由詩1*23/1/24 22:20
ドラゴンたちの降臨(四)[group]自由詩1*23/1/24 22:19
ドラゴンたちの降臨(三)[group]自由詩1*23/1/23 21:50
ドラゴンたちの降臨(二)[group]自由詩1*23/1/23 21:49
ドラゴンたちの降臨(一)[group]自由詩1*23/1/23 21:48
ラゴスの動向(六)[group]自由詩1*23/1/22 20:48
ラゴスの動向(五)[group]自由詩1*23/1/22 20:46
ラゴスの動向(四)[group]自由詩1*23/1/22 20:45
ラゴスの動向(三)[group]自由詩2*23/1/21 16:57
ラゴスの動向(二)[group]自由詩1*23/1/21 16:55
ラゴスの動向(一)[group]自由詩1*23/1/21 16:54
祭祀クーラスの思惑[group]自由詩1*23/1/19 17:13
アースランテとファシブルの和合[group]自由詩1*23/1/19 17:12
戦士エイソスの苛立ち(三)[group]自由詩1*23/1/15 16:33
戦士エイソスの苛立ち(二)[group]自由詩1*23/1/15 16:18
戦士エイソスの苛立ち(一)[group]自由詩1*23/1/15 16:17
いくつもの運命(七)[group]自由詩1*23/1/14 16:30
いくつもの運命(六)[group]自由詩2*23/1/10 13:22
いくつもの運命(五)[group]自由詩1*23/1/10 13:21
いくつもの運命(四)[group]自由詩1*23/1/8 14:27
いくつもの運命(三)[group]自由詩1*23/1/8 14:26

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 
0.1sec.