「今さら救世主の顔など、お前には似合わないぞ?
 お前は、ドラゴンどもにエイミノアを殺させた。一人の殺人者だ。
 そして、多くの人間の命を奪ってきたのだ。そうであろう?」
「そうだ。わたしは救世 ....
「ドラゴンが自然な姿? どういうことだ?」アイソニアの騎士が尋ねる。
「お前は考えてみたことがないか? 人はなぜ争い、殺し合いをするのかと。
 人は愛する者のために生き、時には家族のために犠牲を強 ....
「一体何が起こったのだ?」アイソニアの騎士とヨランは、驚き、叫んだ。
「案ずるのではない。奴らが暴れ始めたのだ」
「奴らとは? ドラゴンたちのことですか?」
「そうだ。今奴らは、怒りの最中にある ....
「ずいぶんと高飛車に出たではないか。『エインスベルを救え』とは?
 人にものを頼むのであれば、まずは膝を屈するべきであろう。
 ましてや命令など……。俺は、アースランテの千人隊長だ!」
「頼んで ....
「科学? その言葉も何度か聞いた。科学とは、一体何だ?」
「科学とは、そうだな。文明が行きついた、一つの到達点だった。
 そして、人間を滅ぼす元ともなったものだ。分かるか?」
「分かりはしない。 ....
「お前は、人間の未来のために、一人の男を殺したというのか?
 俺は、決してお前を許さない」と、アイソニアの騎士。
「しかし、対話なくして、お前たちが虹の魔法石を手に入れることはないぞ?
 良いの ....
アイソニアの騎士は、痛いところを突かれたという表情を見せた。
(エインスベル、エインスベル、我が最愛の女……
 しかし、エインスベルがククリスの生まれ変わりとは、どういうことだ?)
そこに、ヨラ ....
「策謀は、わたしの仕事ではなかった」
エランドルが、その過去を懐かしむかのような口調で言う。
「そして、今も策謀家ではない。わたしを導いているのは、
 哀惜だ。人が人として生き、人として死ぬ。そ ....
「ふん。時間だと? ここでは時間の流れが止まっていると、
 嫌というほど聞かされた。大方、お前は不死の存在であるのだろう。
 それに、お前はオスファハンに虹の魔法石を与えたというではないか?」
 ....
「オーマル。お前の役目は終わった。しばらく休むが良い」
「はい、エランドル様」そして、オーマルは別室へと退いていく。
彼──エランドルの周りには、様々な機械が置かれていた。もちろん、
機械などと ....
ヨランが驚いたことに、アイソニアの騎士は、
さしてためらうこともなく、その建物の中へと入っていった。
むしろヨランのほうが、(これは罠なのではないか?)と、
思い迷っていた。──ここは慎重を期す ....
「何をしていらっしゃるのです? エランドル様がお待ちです」
オーマルは、二人を手招きする。──そこには、ひとつの建物があった。
それは、アイソニアの騎士も、ヨランも、見たことのない様式のものだった ....
アイソニアの騎士は、その出誕の経歴とは裏腹に、世界を感じる者だったのである。
オーマルに言われるものでもなく、彼は、歴史と世界の乖離を把握していた。
すなわち、理想がこの世界を導くものではないと。 ....
「何をしているのです? わたしは、あなた方をエランドル様へと、
 引き合わせます……」オーマルは、一層低い声で、彼らへと通知した。
「お前の目論見は……分かるつもりだ。しかし……」
アイソニアの ....
「さて、あなた方をお導きいたしましょう。エランドル様の元へ……」
人間体に戻ったオーマルが言った。しかし、アイソニアの騎士とヨランとは無言である。
「あなた方の心は承知いたしました。ですが……、
 ....
「分かった。エランドル様に会わせよう。
 もうしばらく待つが良い。オーマルが汝らを案内しよう」
ライディンゲルの、それは急な変化だった。そこには、
エランドルという人間の秘密が隠されているようだ ....
「汝が拒絶するのであれば、それも良い。だが、
 それでは、虹の魔法石を与えることはできない。絶対にだ」
「それは、困ります。わたしどもはなんとしても、
 エインスベル様を救わねばならないのです… ....
「そして、エランドル様の目的とは?」と、ヨラン。
「すべての神々を抹殺することだ」ライディンゲルが答える。
「人一人を死に追いやっておいて、さらなる悪に身を染めよと?」
「そうだ。エインスベルに ....
「しかし、あなたはエイミノア様を殺しました」
ヨランも、少なからず怒りに駆られている。それまでヨランは、
ドラゴンたちが、これほどまでに高い知識を有しているとは、
考えていなかった。アイソニアの ....
「果たしてそうかな? 我らは、汝らの運命を変えることもできる。
 もし望むなら、アースレジェの全てを支配できるであろう。
 だが、我らとて非道な存在ではない。人はドラゴンを敵と見なすが、
 元々 ....
「そうだ。彼は賢者だった。そして、我らが意識共有体である
 ということも、すぐに受け入れた。彼は世界の平穏を望んでいた」
「そして、虹の魔法石をお与えになったのですか?」
「与えたのは我らではな ....
「はい。それは正しく戦いです。しかも、誤りでありました」
「謝罪をする必要はない。我々ドラゴンは、意識共有体である。
 ひとつの個体が、ひとつの意識を持っているわけではない。
 例え一頭が死んで ....
「すべてはエランドル様が決めるであろう。
 お前たちが平和を求めるに適さない者たちであれば、
 エランドル様はお前たちを排除する。
 話してごらんなさい、我らが{ルビ長=おさ}ライディンゲルと」 ....
「そこで、汝らにひとつの問いをぶつけましょう」
「それは、何でございますか? オーマル様」
「汝らは、戦争というものを、どう思っている?」
「戦争ですか。それは、国と国との争いであり……利益の分 ....
アイソニアの騎士とエイミノアが剣を納めるとともに、
ドラゴンたちの攻撃は止んだ。──一瞬の静謐、と、それは思われた。
しかし、”オーマル”であった龍が口を開く。
「よく思い留まってくれた、旅人よ ....
千のドラゴンは、まさにアイソニアの騎士たちに襲いかかろうとしていた。
この時、剣を捨てることとは、まさに己の死を意味する。
(こんなところで死んでたまるか)という思いが、
アイソニアの騎士にもエ ....
アイソニアの騎士は、一頭のドラゴンを斬って捨てた。
「ぎゃっ!」という悲鳴を、オーマルであったドラゴンが上げる。
しかし、「アイソニアの騎士様。騎士様。ここは対話すべきです。
 ここハーレスケイ ....
「人間が……ドラゴンに変わったのか?」アイソニアの騎士は、呆気にとられた。
エイミノアも同様である。剣の柄に手をかけけたま、その光景を呆然と見守る。
ただ一人、盗賊ヨランだけは、それがありうべきも ....
「さあ、ドラゴンたちが来ました」オーマルは上空を見つめて言った。
「龍どもか! 一匹残らず殲滅してくれる!」
アイソニアの騎士は旌旗堂堂と声音を上げた。だが、オーマルは意義を唱える。
「いけませ ....
「なりませぬ。エランドル様とは、対話すべきなのです」と、オーマル。
「話し合いだと? 俺には馴染みのない方法だな。剣以外に、
 何をもって勝敗を決する手段があると言うのだ。俺は力づくでもって、
 ....
おぼろん(879)
タイトル カテゴリ Point 日付
アイソニアの騎士とエランドル(十五)[group]自由詩1*22/10/27 19:52
アイソニアの騎士とエランドル(十四)[group]自由詩2*22/10/26 19:49
アイソニアの騎士とエランドル(十三)[group]自由詩2*22/10/26 19:48
アイソニアの騎士とエランドル(十二)[group]自由詩1*22/10/26 19:47
アイソニアの騎士とエランドル(十一)[group]自由詩1*22/10/25 19:23
アイソニアの騎士とエランドル(十)[group]自由詩1*22/10/25 19:22
アイソニアの騎士とエランドル(九)[group]自由詩1*22/10/25 19:22
アイソニアの騎士とエランドル(八)[group]自由詩1*22/10/24 17:46
アイソニアの騎士とエランドル(七)[group]自由詩1*22/10/24 17:45
アイソニアの騎士とエランドル(六)[group]自由詩1*22/10/24 17:44
アイソニアの騎士とエランドル(五)[group]自由詩1*22/10/23 17:23
アイソニアの騎士とエランドル(四)[group]自由詩1*22/10/23 17:22
アイソニアの騎士とエランドル(三)[group]自由詩1*22/10/23 17:22
アイソニアの騎士とエランドル(二)[group]自由詩1*22/10/22 15:45
アイソニアの騎士とエランドル(一)[group]自由詩1*22/10/22 15:44
クーゲンドルにて(十六)[group]自由詩022/10/22 15:43
クーゲンドルにて(十五)[group]自由詩2*22/10/20 22:52
クーゲンドルにて(十四)[group]自由詩1*22/10/20 22:51
クーゲンドルにて(十三)[group]自由詩1*22/10/20 22:50
クーゲンドルにて(十二)[group]自由詩1*22/10/18 17:43
クーゲンドルにて(十一)[group]自由詩1*22/10/18 17:43
クーゲンドルにて(十)[group]自由詩1*22/10/18 17:42
クーゲンドルにて(九)[group]自由詩1*22/10/17 16:55
クーゲンドルにて(八)[group]自由詩1*22/10/17 16:54
クーゲンドルにて(七)[group]自由詩1*22/10/17 16:53
クーゲンドルにて(六)[group]自由詩2*22/10/16 16:22
クーゲンドルにて(五)[group]自由詩1*22/10/16 16:21
クーゲンドルにて(四)[group]自由詩1*22/10/16 16:20
クーゲンドルにて(三)[group]自由詩1*22/10/15 16:14
クーゲンドルにて(二)[group]自由詩1*22/10/15 16:13

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