ヨランが魔法弾を投じる。空が割れて、幾条かの雷が閃いた。
そして、グルレッケ数頭に向かって放たれる。
「ギャッ」という声を上げて、それらグルレッケたちは倒れた。
エイミノアは唖然とする。

 ....
ヨランの落ち着き払った様子に、エイミノアは苛立った。
自分にしろ、数々の戦いを経験してきている。
それなのに、このヨランの冷静さと来たらどうだ。
まるで、怖い物を目にしても物怖じしない赤子のよう ....
「奴の自負などどうでも良い」と、エイミノアは思っていた。
「奴は、ただ逃げようとしているだけではないか?」と、
ヨランからは離れたところに寝所をしつらえながら、エイミノアは思う。
「盗賊の考えな ....
ヨランは苦笑した。彼にはエイミノアには見えていないものが、
見えていたのである。それは盗賊としての本能のようなものだった。
「わたしがどこを目指しているのか、お分かりですか?」
と、ヨランはエイ ....
季節は夏から秋へと移り変わろうとしていた。
盗賊ヨランは今、旅の途上にある。
目指しているのは、ヒスフェル聖国だった。
そして、ヨランの伴としてエイミノア・ラザンが同道している。

「もう少 ....
「なんだと? お前は虹の魔法石を盗めるというのか?」
リグナロスは気色ばんだ。それに対して、ヨランは即答する。
「可能でしょう。わたしが虹色の魔法石を盗み出しても良いのですが……」
何か訳ありの ....
「そして、次々にその位相を変えていく」リグナロスは言葉を継ぐ。
「それが虹の結界だ。どんな魔導士でも、この結界は破れない」
リグナロスはため息をついた。ヨランは意外だ、という表情をする。
「それ ....
「時間変化する結界」と聞いただけでは、ヨランには何のことか
分からなかった。ヨランは再び、リグナロスに問いかける。
「つまりは、何が問題だと言うのでしょう?」
「お前はこの監獄に入ってきた時、何 ....
「仕方がない。お前を信用しよう」リグナロスはため息をついた。
彼とて、祭祀クーラスの謀略は知っている。
エインスベルには、もう時間的な猶予がないのだった。
「しかし、これは我の命にも関わることだ ....
「あなたがエインスベル様を助けるというのは、どうですか?
 リーリンディア監獄の秘密をお教えくださいませ」
落ち着き払った瞳をして、ヨラン・フィデリコが言う。
「秘密とは何か? 何をもって秘密と ....
「祭祀クーラスの現状をご存じでしょうか?」盗賊ヨランが言葉を継ぐ。
「知っている。戦争の咎のすべてをエインスベル様に押し付けて、
 国家の敵として、告発するつもりでいる……」
「そうです。わたし ....
「こんにちは。わたしはヨラン・フィデリコ。
 エインスベル様の側近でございます。今日は、
 あなたにとって重大な用事で参っております」
盗賊ヨランは、おもむろに口を開いた。

その時に眼前に ....
さて、どうしてエインスベルを救出しようかと、盗賊ヨランは考えていた。
常套手段からすれば、監獄の監守を篭絡することが得策だろう。
しかし、それだけで上手くいくのだろうか?
エインスベルが拘禁され ....
しかし、エインスベルは、祭祀クーラスが考えるほど、
弱くはなかった。叔母ミーガンテに対する復讐を終えて以降、
彼女は達観していたのである、すなわち、
「わたしはクールラントの国とともにある」と。 ....
盗賊ヨランは、エインスベルの救出に、
妖精ファロンの力を借りることにした。
ちょうど祭祀クーラスとは逆の手を使おうと考えたのである。
これで、監獄の衛兵たちの心を意のままに操る。

盗賊ヨラ ....
そのころ、盗賊ヨランは久しぶりにクールラントへと戻っていた。
そして、カラスガラの酒場で、美酒に酔いしれていた。
「やっと見つけたぞ、ヨラン・フィデリコ。
 大方、次の盗品の目星でもつけていたの ....
    囚われのエインスベル(二)


「祭祀クーラスは、貴女の命を奪う心づもりでいます。
 すべての国家の実権を、彼に、と考えているのです」
「それはまずいな。ああ見えて、祭祀クーラスはタ ....
そんなエインスベルにも、一人の心強い味方がいた。
それはオークの傭兵団の団長、エイミノア・ラザンである。
エインスベルは身の回りの警護のために、数名のオークを雇っていた。
エイミノアは国内の内実 ....
新しい噂話に、クールラントの国民は逡巡した。
その噂に熱狂する者もあった。エインスベルの味方をする者もあった。
ほぼ二年近い時間、エインスベルは監獄に幽閉されていた。
次第に、エインスベルは悪な ....
その一方、エインスベルはどうか。戦争から三年近い時間が経ち、
エインスベルはクールラントの監獄に監禁されていた。
この戦いの端緒が、エインスベルにあるのだとして訴追されたのである。
エインスベル ....
戦いというものは、すべてが当事者の納得のうちに終わるわけではない。
アースランテの国では、軍国ラゴス、クールラント、ファシブル、
そしてアースランテによる四者会談が開かれた。
勝者である三国の意 ....
その後の戦いの詳細を省くことを、許していただきたい。
これはあくまでも、クールラントの物語なのである。
読者諸氏もすでにお分かりのように、第一次ライランテ戦争は、
アースランテの敗北によって終わ ....
クールラントの軍団長、ラジーク・ユーゲルに異論はなかった。
ここで巻き返しておかなければ、アースランテの再攻が始まる。
そして、ファシブルの動向が気がかりだった。
ファシブルはさらに北進するので ....
「わたしはマリアノスを見くびっていた」オスファハンは呟く。
彼女は彼女なりに、一国の王なのだ。
国の命運を左右する事態が起こったとすれば、
それに対処する必要がある。今回のヒスフェル聖国の参戦の ....
「それは、非がファシブルにあるということか?」
ラゴスの軍団長である、カイザー・ネルが尋ねる。
ヒスフェル聖国の正魔導士、オスファハンは息を飲んだ。
「非、というのは何を持ってしておっしゃられる ....
時間はまた遡る。マリアノス・アリア・ガルデは、
王宮の玉座にあって、沈黙を貫いていた。
元老院の代表である、シェリル・アーネストが厳粛な口調で報告する。
「元老院での決定によって、わが軍はアース ....
「なんと? なぜファシブルが参戦する?」驚いたのは、
カイザー・ネルばかりではない。ヒスフェル聖国のオスファハンも。
オスファハンは再び自分の無力を嘆いた。
「わたしが徹底していれば、こんなこと ....
連合軍の兵士たちは、小隊ごとに軍団を再編成して、
ナハテ・ガルの砦へと戻っていった。
「これ以上アースランテを追撃してはなりますまい」
そう進言したのは、カイザー・ネルの側近ヤッホ・レスラントだ ....
誰もが予想外の事態が起こった。それをまだ、
アースランテの兵たちや、連合軍の兵たちは知らない。
アースランテの南隣の国、ファシブルが裏切ったのである。
その報は戦場には届いてはいない。

「 ....
「うむ、今は本国の指示を仰いでいる場合ではないな。
 現場の判断が最優先だ」ゴゴイス・リーゲは厳粛な口調で言う。
「それに、ラゴスには民兵どももいるのだ。その数がいかほどか。
 おそらく、三万人 ....
朧月夜(879)
タイトル カテゴリ Point 日付
盗賊ヨランの旅(五)[group]自由詩1*22/6/28 19:03
盗賊ヨランの旅(四)[group]自由詩1*22/6/28 19:02
盗賊ヨランの旅(三)[group]自由詩1*22/6/27 18:56
盗賊ヨランの旅(二)[group]自由詩1*22/6/27 18:55
盗賊ヨランの旅(一)[group]自由詩1*22/6/25 17:26
囚われのエインスベル(十四)[group]自由詩1*22/6/25 17:25
囚われのエインスベル(十三)[group]自由詩1*22/6/16 13:14
囚われのエインスベル(十二)[group]自由詩1*22/6/16 13:13
囚われのエインスベル(十一)[group]自由詩2*22/6/7 22:05
囚われのエインスベル(十)[group]自由詩1*22/6/7 22:05
囚われのエインスベル(九)[group]自由詩1*22/6/2 21:47
囚われのエインスベル(八)[group]自由詩1*22/6/2 21:46
囚われのエインスベル(七)[group]自由詩2*22/5/30 17:23
囚われのエインスベル(六)[group]自由詩1*22/5/30 17:22
囚われのエインスベル(五)[group]自由詩1*22/5/29 17:03
囚われのエインスベル(四)[group]自由詩1*22/5/29 17:02
囚われのエインスベル(二)(三)[group]自由詩2*22/5/26 15:01
囚われのエインスベル(一)[group]自由詩1*22/5/26 15:00
新たな時代の胎動(三)[group]自由詩1*22/5/17 15:32
新たな時代の胎動(二)[group]自由詩1*22/5/17 15:31
新たな時代の胎動(一)[group]自由詩1*22/5/16 15:01
ライランテ戦争終結[group]自由詩1*22/5/16 14:55
ファシブルの裏切り(七)[group]自由詩1*22/5/16 4:52
ファシブルの裏切り(六)[group]自由詩1*22/5/15 13:57
ファシブルの裏切り(五)[group]自由詩1*22/5/15 13:55
ファシブルの裏切り(四)[group]自由詩1*22/5/12 22:58
ファシブルの裏切り(三)[group]自由詩1*22/5/12 22:54
ファシブルの裏切り(二)[group]自由詩1*22/5/12 22:53
ファシブルの裏切り(一)[group]自由詩1*22/5/11 22:46
アースランテの潰走(四)[group]自由詩1*22/5/11 22:44

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