おとこが夜中にやってくる
そのおとこは生まれたことがないのである
いっしょにゆこう
どこへ
とおくへ
くちびるでかすかに笑っている
いそいそと身を起こして
服を着て出ていこうとすると
 ....
デュカットは静かだ
それからエレミア、彼女の犬
犬は饒舌だ、名前はクーパー
クーパーは今日一日元気だった
川辺で古い骨を拾った
それは太古の地層から掘り出されたダイナソーの尾
というわけで ....
今どき人面犬でもないと思って
ジャージを着て走りに行って
駅からバラ公園に曲がった先の坂に
実際いたのだ それは

柴犬かと思って
首輪もつけていないのはめずらしい
この近所の犬かなと覗 ....
トラムは悪い病気を持っている。唇に薄紅色の肉の塊が垂れ下がり、ちょっと見には馬鹿みたいな花を口にくわえているようだ。だから大首女や酒飲みのガンに笑われるし、うだつが上がらなくていつまでも一人前に見られ .... 病院だった。身体中に青いペンキを塗った人々が、病室のベッドで睦み合っている。一階から五階までおおむね全ての部屋がそうなのだ。不思議と廊下や待合室はしいんと静まり返っている。外は薄曇りでところどころ陥没 .... 廃屋だと思ったのに誰かが住んでいる
破れた障子が引かれて
その奥の暗がりがあらわになると
豪勢な雛飾りが設えられている
古い古い人形たち
とてもきれいに手入れされて
唇に薄紅さえ塗られてい ....
巨人になって
谷を飛び越すことがある
足裏に地上の凸凹を感じながら
足首に絡む電線や
田んぼのぬかるみを楽しんだり
街を念入りに踏み潰す
そんな時、人は
わずかな寒気を感じて振り返り
 ....
水面に顔を寄せていくと
無数の鯉が浮かび上がってくる
餌をくれると勘違いしているのか
ぱくぱくと開け閉めする口が異様である
指でも突っ込んでやろうか
でも吸い付かれたら気持ち悪いな
上空の ....
鶏の手羽みたいな女が
高いところにずっとぶら下がっている
肌は青いペンキを塗ったように真っ青で
裸足の爪まで青紫をしている
表情は暗くて見えない
垂れた乳房の横に穴が空いていて
そこから音 ....
見えるでしょうか
あの屋根の下、切妻という
人間で言えば額のあたり
大きな手形がついているのがわかりますか

男の手が両手揃って
雨の日などはくっきりと浮かび上がるのですが
今日もよく見 ....
ふぐをもらった
皮がとても硬いので扱いかねていたが
家庭用の鋏で簡単に捌けるらしい
表面の針をぼきぼき折って
力を込めて刃を入れると
驚くほどオレンジ色の肝がこぼれ落ちた

身もガラも肝 ....
闇に飲まれる海を
歩いてくる人々がいる
靴を履かずに
埋立地から町へ
明かりへ







事故の影響で
ダイヤは一斉に狂った
側溝に流れ込む雨は
こんなはずではなか ....
藪にピアノが捨ててある
埋もれているがそれは確かで
おぼろげに形がわかる
鳴ったりはしない
棺のようで気味が悪い







腹の裂けた猫が
中身をこぼしながら歩いていく ....
バスには人形が乗っていた
窓の外を眺めるのも
母に抱かれる子供も
ハンドルを握る運転手でさえ
皆、焼け焦げたマネキンなのだ







エレベーターの隅に
風船が浮いてい ....
カーブミラーに映されている神社は
かつても
これからも
一度も存在しない







残された靴を
一室に全て保管してあるという
棚には老若男女の区別なく
薄墨色をした ....
風はプールを波立たせた
濁った水底には幾人もの女が沈み
ゆったりと回遊している
着物の裾を触れ合わせながら
言葉も交わさずに







青いゴムホースで縛られた家
血管 ....
オリーブ


明滅


ギャラリーにて


同居人


夜毎の腕


声たち


鬼火を辿って


地底湖


川辺を行く


夢から夢へ

 ....
親知らずが生えてきているらしい。レントゲン写真には横向きに生えた奥歯が白く輝いていて、このまま処置をせずに伸びれば隣の歯に突き当たってしまうのが容易に想像できる。今のうちに抜いておいたほうがいいだろう .... 刹那
ここを起点としてカンザスシティに熱い風が吹く。
推敲はしない。わけがない。
渦巻くウシュアイアのバルコン。
汗だくで田植えを終えたら
トゥクトゥクに乗ってどこまでも行こう。
封筒豆腐 ....
春の夜、ひとつの管玉がアパートの玄関に埋まっていて、きっとこの世の終わりまで気づかれることはない。それはもう定められたことで覆しようがないのだ。誰がそんなことをしたのか、小さな水仙の花が掲示板に画鋲で .... 待合室でテレビを見ている。様々に体を病んだ人々。肩。頭の中の狂い。テレビではスポーツ選手の病のニュースがとめどなく流れている。ペットボトルを傾けて濁ったカフェラテを飲む。喉の奥に甘い液体が流れていく。 ....  窓辺に石を置いて。

 太陽の銀の腕が頭の上をかすめて、ぼくは聴いている。耳
のないきみもまた、同じように。高速道路を走る軌道トラッ
クが光を遮って闇を目指していた。オーガンジーの彩に……。 ....
夜中に断水するというのでポットにティーバッグを放り込んでおいた。水出しのお茶を枕元に置いて寝れば水道が使えなくても一安心というわけ。そのまま布団で本を読みながら寝落ちすると、案の定夜中に目が覚めてしま .... 死ぬ時は死ぬ時の
風が吹くのではないですか
内側の草むらが騒ぎ
いくつかの虫が飛び上がるのでしょうか
あれは何? 毛布?
黒い毛布を吊るしてカーテンにしてください
瞼の上から光が眩しすぎる ....
見たところ肝臓のようだ。中学校の階段の踊り場の高窓から差し込む夕日に照らされて、赤黒い肉塊が落ちている。まるで今しがた体内から摘出したばかりとでもいうようにてらてらと艶めかしい輝きを放って、よく見れば .... 足が寒くて目が覚めた。寝ているうちに片足が布団から出てしまったらしい。なにか不安な夢から抜け切れないで枕元の明かりで足を見てみると、透き通った白魚が腿のあたりまでびっしりと食いついている。食いついたき .... 雀ほどの大きさの塊が手の中にある。線路に沿って歩くと片側がコンクリートで補強した斜面になり、さらに行くと竹藪の奥に家屋や井戸が打ち捨てられている。その先には登山道に続く道端に白い花の群生。あそこまで行 .... 幽霊に触ったことがある、と話してその日は家に帰った。心の隅にざわざわと騒ぐものが現れて遅くまで眠れない。布団から起き出してコップに牛乳を注ぎ、壁の前で飲み干す。一人で暮らしている私の肩に触れる無数の干 .... 玄関まで水が迫っているのでどうしようかなと考えていたところに、甲斐さんがボートで来た。そこら中で孤立しているので拾ってまわっているそうだ。ここもあと一時間もすれば完全に水没するというので、慌てて最低限 .... 茄子にソースをかけたものを食べて外に出た。人が叫んでいる。何事かと思うがこの目ではよく見えないので構わず歩いていく。車と車の間には程よい間隔があってところどころにきれいな売店も出ている。ジュースを買っ ....
春日線香(316)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
猫目記文書グループ14/4/6
十夜録文書グループ14/4/6
投稿作品
自由詩11*21/3/4 23:12
デュカットは静かだ自由詩2*20/12/26 22:56
人面犬自由詩420/12/8 17:28
トラムの話自由詩320/11/1 8:53
柳蔭日記 2020.7自由詩320/8/9 7:11
古雛自由詩120/7/7 20:13
巨人自由詩620/7/6 19:29
自由詩520/7/5 21:03
自由詩120/7/5 20:17
手形自由詩520/6/15 20:20
ふぐ自由詩819/11/29 0:21
通り魔たち 5自由詩4*19/11/16 21:20
通り魔たち 4自由詩419/11/4 17:25
通り魔たち 3自由詩119/10/29 18:07
通り魔たち 2自由詩319/10/24 17:29
通り魔たち自由詩319/10/19 23:33
地底湖自由詩119/10/11 22:20
抜歯の周辺自由詩219/8/26 18:36
婚活詩篇自由詩3*19/3/26 11:34
副葬のためのノート自由詩519/3/21 12:13
ポンペイにて自由詩519/2/17 6:32
朝の窓辺のスケッチ自由詩3*18/11/4 6:56
ルナ・オービター自由詩218/10/27 8:16
Ktの死自由詩518/10/20 1:54
偽文集自由詩318/10/17 5:29
白魚自由詩418/10/16 15:29
南の信仰自由詩10*18/10/13 6:47
幽霊の感触―即興詩の試み自由詩118/10/9 23:45
洪水自由詩218/10/9 1:51
低い土地 2018・10自由詩318/10/7 4:37

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