古雛
春日線香

廃屋だと思ったのに誰かが住んでいる
破れた障子が引かれて
その奥の暗がりがあらわになると
豪勢な雛飾りが設えられている
古い古い人形たち
とてもきれいに手入れされて
唇に薄紅さえ塗られている
つんと澄まし顔の古雛たち
廃屋だと思ったのに誰かが住んで
ここで人形に仕えている
磨りガラスに頬を押し当てて
痩せた顔が助けを求めているような
そんな気もする


自由詩 古雛 Copyright 春日線香 2020-07-07 20:13:11縦
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