庭でだいこんが生えそろっている
白くみずみずしいだいこんが土に刺さっている
知っているか だいこんの葉っぱには青虫が
ものすごくよくつく ほんとうにきりがないほど
だから割り箸でそいつの青首を ....
美しい骸骨を持つ人に会った
美しい詩を書きなさいという彼女は
まだ陸地を夢見ている

昨夜から降りはじめた雨は
静かに庭を濡らしている
窓ガラスに群がるおびただしい水滴
しずくの一粒一粒 ....
迎えにきた おまえを
切っ先を腹に埋めこんでいるさむらいを
かつて桃太郎と呼ばれたおまえ
殿様の不興を買ったおまえ
梨の木の下で死を待つおまえ

おお おれは鬼の屍
といっても はじめか ....
放り投げたものが渡っていく
橋が暗闇にかかっており
おまえはそこんとこを疾走する
車の中の横顔を見たようだが
先ほどから雨脚は強くなり
強くなりしていく雨脚にまぎれて
見えない
遠く見え ....
夜道を歩いているとひんやりした腹が出る
ひんやりした腹 ぷるんと豆腐のよう
またぎ越していけばいいのにそれができなくて
地団駄踏んでるわたしの胸の奥に
おたまじゃくしがわらわら湧いてくる
こ ....
ここに眠る

笹舟

水のように

再会

斎のあとで

奥座敷

五月闇

なんこつ忌

探幽記

賽の原



りゅうぐうのつかい

料理
 ....
離れの掘りごたつの中に母がいる
離れの掘りごたつの中にいる母は少女の姿で
絣の着物を着た古い時代の母である
古い時代の少女の姿の母は掘りごたつの中にいる
猫のように離れの掘りごたつの中にいる
 ....
かつて肉屋の男を愛したことがあった
男は肉屋だけあって包丁を使うのがとても上手で
朝から晩まで肉を切り続けているのだからそれは当然で
肉を包む新聞紙からじくじくと漏れている
冷たくべとついた血 ....
あしだかというひょろ長いおんながうちにきて
しばらくここに置いてくださいという
これといってなにもお返しはできませんけれど
お掃除くらいはさせていただきます
そういって冷蔵庫の裏に陣取って
 ....
蟹が泳いでいた
それを追ってわたしがきて
叔父がわたしを追いかけてきて
叔父を追いかけて姉もきていた
だから家が火事になっても問題なかった
みんなで食べた鍋は
罪の味がした
不発弾を掘り出したというので見にきたが
大きな穴が埋められもせず空いているだけだった
校庭には名残の雪が汚れた骨のようで
からっ風が髪を乱して吹き去っていく
花壇にはパンジー どれも顔みたいに ....
{引用=
 coda 3  かいぞく

死で命どころじゃなかった
命で死どころじゃなかった
妖精の幼生 があらゆる
名前のない薄暗がりで生まれていた
雨、と叫んでいた
それはもう、もの ....
刑場通りの夜は暗い
かまどうまになったわたしたちは列をなし
水を求めてこの通りを進んでいった
途中 家々の窓はかたく閉ざされ
明かりもつけずにこちらを探る気配が窺える
あの人たちも結局は同じ ....
庭から上がってきたのはサトゥルヌスである
雪の日に来るとは思っていなかったから
ろくに用意もしておらず
急いで台所からあんぱんを出してくる
ぎらついた目が あんぱんか と言っている
毛むくじ ....
会合にも出た
それから句会にも出た
あとにはひと気のない座敷に一人きりで
茶を飲んで余韻を冷ましている
憂いはあらかた片付けてしまって
人に用立ててもらうものも特にない
おもいきり火を使っ ....
遠くから冷たい風が吹いてきて
ぺろりと剥げた顔が排水口に吸いこまれた
あわてて手を突っこんでももう遅い
その日から鏡もガラスもすっかり曇ってしまい
自分の顔というものがわからなくなった
写真 ....
むかし 納屋の整理をした折
古箪笥の引き出しを開けると
中が炊きたての赤飯でいっぱいだったことがある
春の川でとれた蟹の甲羅を剥ぐと
どの蟹にも赤飯がぎっしり詰まっていたこともある
それから ....
曇り空から縄が垂れている
どこに続いているのか先は見えない
午後になると近所のものが集まってきて
突如現れたこの縄について協議しはじめた
一人がおれが片付けてやると言って前に出る
触らないほ ....
それについては因縁がある
なにせ前世の仇だから

うららかな冬の日
わたしはそいつを探して山にきた
皮をなめして枕にしてやろうと思ったのだ
鉄砲をかかえ 神社の脇を通った時
昼寝している ....
寝ているうちに夕方になった
夜になる前に起きなければならない
けれどどうしても布団から出られなくて
カーテンの陰にいる母に
起こして と言ってみる
母は不思議そうな顔をしている
見ているだ ....
眠りが足りなければ不思議なことが起きる
その言葉を証明するかのように
何日も眠れずに机に向かっていると
足裏の感触がどことなくおかしい
じゅうたんのあちこちからもやしが発芽して
生えに生えて ....
母が買い物から帰ってくる
わたしは床で死んでいる
そんなところで死んだらだめと母が言う
なんだか気恥ずかしくなって起き上がり
葬式はいつになるの などと話している
そうこうしているうちに親戚 ....
米びつから米をすくいあげていて
底になにか引っかかるものがあると思ったら
しなびた腕がいっぽん
計量カップのふちに指を引っかけていた
取り出してごろりと畳に投げ出した それ
黒ずんだ腕はいつ ....
さっき来た人からおばけやしきの話を聞く
夜になるとあやしい光や音がよく目撃されるとのことで
なかなか借り手がつかなかったのだが
ある日 怪異は近所の子供の仕業だったと判明して
ひとまずは一件落 ....
赤信号で立ち止まったとき
うしろから歩いてきた人がすうっと追い越していって
そのままむこうへ渡ってしまった
その自然な様子に呆然とする
自分もその人と同じようにして渡ってしまいたいのに
いつ ....
夜中に窓枠がぴしりと鳴る
夢のなかから呼び戻されて
枕元をさぐった手に触れるものがあり
それは感触で人の耳だとわかる
よく見えないがそれはたしかに二切れの耳で
ゴムのおもちゃのようにも思える ....
鏡を覗くと知らない人が映っている
引きつった頬はまるで人さらいのようだ
人さらいの口から人さらいの牙がにゅうっと伸びてきて
葡萄の彫りのある鏡を突き破りそうになる
あわてて毛布をかぶせて
奥 ....
部品がいっぽん足りなくなって
このままじゃあ埒が明かないから
町まで買いに行かせてくださいと頼んだのに
ひょいひょいとあばら骨を抜かれて
蛸みたいに伸びている
ユーモアのセンスがないねあなたには ぺちゃんこ猫に怒られる朝

崩れ落ちるビルの中のあの人と目が合ったけど何も見なかった

歩いても歩いても花 電柱をそっと祝福するかのように
枕の下に包丁を入れて眠るとよい
もしも悪夢を見たのなら
その時はすかりすかりと捌いてしまって
うすい刺し身のようにするとよい
油まみれの水たまりのように光るそれを
やってきた男は食べるだろう ....
春日線香(330)
タイトル カテゴリ Point 日付
不動の穴自由詩314/5/4 18:30
水族自由詩314/5/1 16:57
桃太郎自由詩214/4/18 0:14
水切り自由詩314/4/12 4:41
夜道にて自由詩814/4/4 23:45
詩集『十夜録』全篇[group]自由詩614/3/22 19:06
離れの母[group]自由詩014/2/23 23:27
肉屋自由詩114/2/21 23:09
あしだか自由詩314/2/20 1:07
闇鍋自由詩414/2/19 1:12
残されたもの自由詩114/2/19 0:06
fragileなものの叫び—かいぞく「coda 3」散文(批評 ...014/2/15 4:28
<刑場通り>にて自由詩314/2/12 3:54
サトゥルヌス自由詩214/2/8 18:36
自由自由詩214/2/4 14:59
自由詩1+14/2/3 19:33
赤飯三題自由詩514/1/29 3:55
自由詩314/1/28 16:34
むじな自由詩314/1/27 13:17
起こして自由詩314/1/26 21:12
もやしヶ原自由詩7+14/1/25 0:15
葬式自由詩3*14/1/24 15:37
うで[group]自由詩11+14/1/23 19:39
おばけやしき[group]自由詩214/1/22 21:08
赤信号自由詩4*14/1/20 12:54
お供え[group]自由詩714/1/19 4:31
人さらい自由詩214/1/18 16:57
部品自由詩314/1/18 5:55
ぺちゃんこ猫短歌014/1/15 20:17
自由詩213/12/28 21:11

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