オリーブ


明滅


ギャラリーにて


同居人


夜毎の腕


声たち


鬼火を辿って


地底湖


川辺を行く


夢から夢へ

 ....
親知らずが生えてきているらしい。レントゲン写真には横向きに生えた奥歯が白く輝いていて、このまま処置をせずに伸びれば隣の歯に突き当たってしまうのが容易に想像できる。今のうちに抜いておいたほうがいいだろう .... 刹那
ここを起点としてカンザスシティに熱い風が吹く。
推敲はしない。わけがない。
渦巻くウシュアイアのバルコン。
汗だくで田植えを終えたら
トゥクトゥクに乗ってどこまでも行こう。
封筒豆腐 ....
春の夜、ひとつの管玉がアパートの玄関に埋まっていて、きっとこの世の終わりまで気づかれることはない。それはもう定められたことで覆しようがないのだ。誰がそんなことをしたのか、小さな水仙の花が掲示板に画鋲で .... 待合室でテレビを見ている。様々に体を病んだ人々。肩。頭の中の狂い。テレビではスポーツ選手の病のニュースがとめどなく流れている。ペットボトルを傾けて濁ったカフェラテを飲む。喉の奥に甘い液体が流れていく。 ....  窓辺に石を置いて。

 太陽の銀の腕が頭の上をかすめて、ぼくは聴いている。耳
のないきみもまた、同じように。高速道路を走る軌道トラッ
クが光を遮って闇を目指していた。オーガンジーの彩に……。 ....
夜中に断水するというのでポットにティーバッグを放り込んでおいた。水出しのお茶を枕元に置いて寝れば水道が使えなくても一安心というわけ。そのまま布団で本を読みながら寝落ちすると、案の定夜中に目が覚めてしま .... 死ぬ時は死ぬ時の
風が吹くのではないですか
内側の草むらが騒ぎ
いくつかの虫が飛び上がるのでしょうか
あれは何? 毛布?
黒い毛布を吊るしてカーテンにしてください
瞼の上から光が眩しすぎる ....
見たところ肝臓のようだ。中学校の階段の踊り場の高窓から差し込む夕日に照らされて、赤黒い肉塊が落ちている。まるで今しがた体内から摘出したばかりとでもいうようにてらてらと艶めかしい輝きを放って、よく見れば .... 足が寒くて目が覚めた。寝ているうちに片足が布団から出てしまったらしい。なにか不安な夢から抜け切れないで枕元の明かりで足を見てみると、透き通った白魚が腿のあたりまでびっしりと食いついている。食いついたき .... 雀ほどの大きさの塊が手の中にある。線路に沿って歩くと片側がコンクリートで補強した斜面になり、さらに行くと竹藪の奥に家屋や井戸が打ち捨てられている。その先には登山道に続く道端に白い花の群生。あそこまで行 .... 幽霊に触ったことがある、と話してその日は家に帰った。心の隅にざわざわと騒ぐものが現れて遅くまで眠れない。布団から起き出してコップに牛乳を注ぎ、壁の前で飲み干す。一人で暮らしている私の肩に触れる無数の干 .... 玄関まで水が迫っているのでどうしようかなと考えていたところに、甲斐さんがボートで来た。そこら中で孤立しているので拾ってまわっているそうだ。ここもあと一時間もすれば完全に水没するというので、慌てて最低限 .... 茄子にソースをかけたものを食べて外に出た。人が叫んでいる。何事かと思うがこの目ではよく見えないので構わず歩いていく。車と車の間には程よい間隔があってところどころにきれいな売店も出ている。ジュースを買っ .... 突き飛ばされて線路に落ちたそうだ。痕が残っていたとのことで恐ろしくなる。数人で肩を寄せて話しているのがガラス越しにぼんやりと浮かび、途切れ目から足元だけがくっきりと見える。いろんな靴を履いていて、男と .... 茄子にソースをかけたものを食べて外に出た。人が叫んでいる。何事かと思うがこの目ではよく見えないので構わず歩いていく。車と車の間には程よい間隔があってところどころにきれいな売店も出ている。ジュースを買っ .... 電気ケトルと時計の間に住む老婆が教えてくれた。「お前が眠っている間に雲から女の腕が伸びてきて、窓をすり抜けてお前の顔に透明な手形をつけていったよ。その手形は洗っても落ちないだろう。もう逃げられないよ」 .... 夜の街に赤い糸が絡みついている。ガソリンスタンドから交番へ、団地へ、駅へ、ことさら明るい信号の数々へ。死も生も絡め取るこの無尽の描線を爪弾いて、絶叫するものがある。絶叫するものがある。絶叫するものがあ .... 針女について語らなければならないだろうか。そんなことができるわけがない。私が言えるのは彼女の舌、真っ青なその上に無数の針が針山のように刺さっていることだけであって、他の何一つも許されてはいない。自分で .... 校庭のどこかに棺が埋めてあるという。まん丸な桃を齧りながら校長が教えてくれたが、僕たちは知っている。棺の中には誰も入っていないのだと。海にさらわれて上がってこない校長を偲んで、教師連が生徒に秘密で棺を .... 川縁の遊水地に子供が十人ほど輪になって佇んでいる。どの子も下着を着ただけの細い身体で、じっと正面に目を向けてわずかに呼吸しているのが肩の微細な動きでわかる。その輪の中に光の反射が導かれて、光に掠められ .... 雨風が強いので窓を開けられないでいる。上がっていこうとする室温を扇風機の羽でかき混ぜて、今この時に頭上で輪を描く低気圧の巨大さを想像する。風が窓を揺らし、壁は思い出したようにぴしぴしと鳴る。冷蔵庫のド .... 電気ケトルと時計の間に住む老婆が教えてくれた。「お前が眠っている間に夜中の雲から女の腕が伸びてきて、窓をすり抜けてお前の顔に透明な手形をつけていったよ。その手形は洗っても落ちないだろう。もう逃げられな .... 棚の整理をすると黒い泥が詰まったビニール袋が出てきた。たぶん玉ねぎか何かを仕舞い忘れたきりで、腐り落ちて液状化したものなのだと思う。袋が破れていれば大惨事になっていただろう。二重三重に包んでゴミに出し .... 山間の小道はいつしか畳敷となり、やがて布団の上を行くことになった。枕やシーツに足を取られながら進むのはもはや森ではなく暗い屋内に取って変わり、果てのない広がりを手探り足探りで行くのは大層恐ろしく心細か .... 闇の中で燃える火よ。泣き疲れた女、マラルメよ。軌道の果てに行き着くことはないと正しく異なるステップで奏でた草花。夢から夢へと遍歴する、酩酊ののちの酩酊、燃え尽きたページをめくる骨の手の群れ。ぼくらは死 .... もう一年になる。トラックが子供をはねて今もそこに白い花が供えてある。途切れずに誰かが、たぶん遺族だと思うが替えていて、そこだけいつも瑞々しい気配が漂っている。夜暗くても甘い香りがして花が供えられている .... 明るい昼間に歩く僕の内臓は重い
死と夢がいっぱいに詰まった袋を持たされて
パトカーの脇を過ぎていく
残像を曳いて
どこまでも行けると信じている
誰が無理と言おうとも
自分でさえ思いもよらぬ ....
葉が雨音を弾いている。灰皿には吸い差しの煙草と、机に珪化木、散らばったディスク。この全てが夢だったらと思う時もある。投げ出した小説を開き、栞がわりに挟んでいた絵葉書を眺めている。雨に閉じ込められて静か .... 絵の教室で聞いた話。とある農家から出た木の仏像があって、手に入れた絵描きがアトリエで作業の合間に眺めて過ごしていた。ある日、いつものように画布と格闘していると、いきなり真っ二つに仏像が割れた。頭の先か ....
春日線香(330)
タイトル カテゴリ Point 日付
地底湖自由詩119/10/11 22:20
抜歯の周辺自由詩219/8/26 18:36
婚活詩篇自由詩3*19/3/26 11:34
副葬のためのノート自由詩519/3/21 12:13
ポンペイにて自由詩519/2/17 6:32
朝の窓辺のスケッチ自由詩3*18/11/4 6:56
ルナ・オービター自由詩218/10/27 8:16
Ktの死自由詩518/10/20 1:54
偽文集自由詩318/10/17 5:29
白魚自由詩418/10/16 15:29
南の信仰自由詩10*18/10/13 6:47
幽霊の感触―即興詩の試み自由詩118/10/9 23:45
洪水自由詩118/10/9 1:51
低い土地 2018・10自由詩318/10/7 4:37
自由詩218/10/6 14:51
人が自由詩118/10/6 12:49
針女その他の物語 2018・9-10自由詩218/10/4 17:50
自由詩018/10/4 0:56
針女自由詩218/10/4 0:50
学校の怪談自由詩018/10/2 3:49
消滅自由詩118/10/1 17:26
台風の夜に自由詩218/9/30 23:36
手形自由詩118/9/28 13:14
自由詩018/9/28 6:02
牛鬼自由詩018/9/27 13:38
月―Mallarmé自由詩318/9/25 1:14
Storytelling, Again 2018・9自由詩3*18/9/20 17:59
歩きながら書いた詩自由詩218/9/20 0:25
部屋で自由詩018/9/18 22:57
仏像自由詩118/9/16 20:10

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