長靴についた雪をとり
鉢植えの土に撒いたら
左目の下を葉で切られた
しばらく無言で
見つめあった
わたしは誰も見ない
そんな声を
聞いた気がした
....
赤い鉄橋が
鳥居のように立ちつくす
影の硝子の奥の午後
さわれぬ光をさわらず昇り
灯は街から剥がされて
夜は緑へ緑へ向かう
昇りゆく灯のさらなる上を
虎は ....
夜の森を照らす川
影が放る光 光
光の轍を曳かれゆく
指の宙
黒い溝
風の下の風
洞を描く
迷いの羽
背中の寒さ
惑いの数だけ
灯はつづきゆく
....
冬神の喰らい忘れた緑かな
弦も否も震えも知らず冬を抱く
半面を冬に刺されて化生かな
抗いて落とされてこそ冬ありき
諌めても壊 ....
雨がやみ
雪になり
枝から径へ
つづく足跡
縄をちぎり
空は帰る
縄は燃える
蒼く 燃える
雪のむこうに
海があり
さまざまな色の火が
流れゆく
....
灯から生まれる水が
夜の路を照らす
壊れるほどまぶしく
消し去るほどまぶしく
同じ速さで遠去かり
同じ間隔に並ぶ柱に
隠れては隠れては現われる
互いを互いに映し出 ....
街でいたくない街が
街を街に押しつける
ばらばらと 窓から落ちる人々
道の上には 楽しい音楽
楽しければいい人たちのための
粉々の音楽
....
光の獣に
つまずき転ぶ
今日は左目の翳りの日
遠のく灰を
見つめていた
舌に降る雪の
水紋を聴いた
呼ぶ声はひとつ
呼ぶ声は六つ
冬かこむ冬
崩れか ....
水に映る 白いまだら
狼の家族を 追い立てる光
撒かれる水鳥の骨より白く
昼の月に背を向ける
昼の月に 背を向ける
あきらかなひとりを
あきらかなひとりにひもといて
明るすぎる街
誰もいない街
雨の爪
左目から背
骨から骨
痛みの無い痛みの外の
奮え 奮え
脊髄の海 ....
ねじれた柱が
気層を持ち上げる
白と黒と昼
互いを
知らぬ光
穏やかな日には
忘れられた言葉が近づく
思い出されないまま
たたずみ 微笑んでいる
左右 ....
籠から目を離したすきに
泡は部屋を水底にした
河口の伽藍
忘れられた灯に
落ちてくる星
水を孕み 裂き
横たわる
崖に丘に吼え
冷える溶岩
冬の裾野に ....
夕べの光に
目を見ひらいて
手をのばし
口をとがらせて
あなたは今
急がなくていい
あなたは今
想うだけでいい
新しい子
新しい子
....
窓に触れない雨があり
夜を背負い 立ちつくす
月が動く音
動く色
痛みは歌い
浮かび出る
既に内に居るかのように
外に外に居つづける
どこまで離 ....
街より低く
花はこぼれ
音になり
蛇になる
ひとつの手首
四つの手
ひとつの花を
廻している
火をくすぐると
飛ぶ子たち
どこで誰に
会いにい ....
水の寒さ
河口の唇
置き去りの光
さざ波と迫害
水紋を噛み
沈む硬度
渦をなぞり
冬はとどまり
空に巻きついて
熱は過ぎ
角は羽
反射 ....
膝小僧の原にうたいながら
幾度も幾度もくちづけながら
鉄を見捨てぬ鉄の味の背
赤錆の行方を見つめていた
ふたりの終わり
既知につながり
ひとりには帰らず
果実のよ ....
木の内側に棲む蝶を
一羽の鳥がのぞきこむ
撫でられるたび
変わる冬
割れた石の階段の間を
雨が流れてゆく
破裂する水色
映る鳥
雪が雨を昇り
曇は曇を ....
針くだく魚の血潮の銀河かな
手の甲で遠去ける度みどり湧き
さわりゆく棘のままただ融ける雪
夜を剥ぎ夜を接ぎ足す光かな
振り仮名が ....
木の前に立つ影
何処を向いているのか
わからない影
月の鎌
ふりかざされ
ふりおろされることなく
切られる夜
鏡のなかの道は笑い
打ち上げられたかた ....
雷雲の底
海に接する光
雷鳴 水紋
耳の底の湖
階段で
手のひらをあわせ
窓の外の音を見る
青を描く金を見る
水のなかの糸
ふかみどりに混じり
たぐ ....
三つの影の
ひとつには羽
見えぬものの傍ら
口笛を吹く
道は森となり
曇の花 泡の花
原めぐる川
降りつづく雨
はじまりの雨
風をくぐり
風をくぐり ....
流れる弦は海に着かず
草を結び 澱みを巡る
去勢された犬は人家へ帰り
牙を抜かれた犬は土に還る
見えない凧を追い
海辺を馳せる
見えないものは 光り光らず
浪と岩 ....
ひとつの文字が
道のかたちに並び
燃えている
坂はゆるやかに
岩へのぼる
路地と声
石と石をつなぐ黒
火と空を映し
水は水の上を
歩みはじめる
....
いつまでも飛び去らぬ鳥の背に
近づくとそれは雪だった
冬は訪れた方角へ
来るものをただ押し返していた
天に飽き天かきむしる鱗雲
おまえには冬しか居らぬしるし刺す
鉄を裂き鉄かつぎあげ冬を打つ
とどめからとどめに至る永さかな
仮 ....
ひとつの指をひたし はじまる
どこまでか語らぬ夜の布
音の氷 青の氷
散らばる
片目の月 鉛の月
色のない筆に暴かれる
空は骨
空は骨
青のどこかに金があり ....
谷底にこがねの雨がわだかまり見るものは泣き見るものは去る
ゆうるりと暮れあおぎみてまわる虹うた連れてゆくひと連れてゆく
冬の木が冬の木を呼ぶあいだにも白 ....
悲しい顔をした岩が
森をのせてつづきゆく
触れると消える
左まわりの虹
指を握り返しそこねた朝に
ふたたび夜を見そめ 見そめる
崖の王国
響きはけして 返ることな ....
黒い森の自画像
照らせない色を重ね
声を描いた
ひとつ上から落ちる真昼に
金と緑の暗がり
雨のなか とりあう手
星のありか 点と点を
十四までつないで
....
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